なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DARK TRANQUILLITY『Construct』

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スウェーデンの“メロディック・エクストリーム・メタル・バンド”がアルバム・デビュー20年目の年に放った
約3年ぶりの10作目。


メロディック・デス・メタルの先駆者の一つとして認知されているバンドだが、
実際のところ典型的なそれっぽいアルバムはあまりない。
ブレがあるというより、
同じようなアルバムを続けることを潔しとしないバンドなのだ。
逆に言えばファンを困惑させるような作品もクリエイトするバンドで、
前作『We Are The Void』とは打って変わって今回はそれに類するアルバムかもしれない。

といっても何でもかんでも取り込む無責任なサンプリング手法みたいなのじゃなく、
99年の4作目『Projector』で波紋を投げかけた要素をふくらませて応用している形だ。
変わっただの変わらないだのという次元ではなく、
その道を切り開いたバンドは何をやってもそのバンド自体がジャンルになる。
もはやDARK TRANQUILLITYも“DARK TRANQUILLITY”がジャンルなのである。
彼らとしては異色のトーンである1曲目の「For Broken Words」をシングルで発表したことに関して、
奥野高久執筆のライナーの中でミカエル・スタンネ(vo)がこう言っている。

「(前略)自分達が最も安全でいられる領域を歩むつもりはないということを明確に表明したかった」

インスパイアされる言葉だ。
25年近く続けてきてこんな発言をするとは筋金入りである。
意識が守りに入ってないから命が吹き込まれてサウンドが生き生きと響く。

キーボードではなく“エレクトロニクス”とクレジットされた鍵盤楽器や電子楽器類も活躍しているが、
むろんエレポップやテクノみたいなダンス・ビートとは違う。
エレクトロニクスの使い方やポップ感やメロディ・ラインが80年代前半までの英国ニューウェイヴ、
特にULTRAVOX(not ULTRAVOX!)やそのリーダーだったジョン・フォックスのソロも思い出す。
ぼくのようにそのへんにもドップリでいまだによく聴いてメタルも好きな人間はたまらない。
OPETHなどの欧州のメロディアスなエクストリーム・メタル・バンドを多く手がける、
イェンス・ボグレンがミックスとマスタリングを行なったことで、
DARK TRANQUILLITYならではのロマンが浮き彫りになった音にも仕上がっている。

ベーシストが脱退したために
本作のレコーディングではギタリストの一人であるマーティン・ヘンリクソンがベースも弾いているが、
大きな問題無し。
ギターのエッジが尖ったスラッシュ・チューンを随所にはさみつつ
全体的にはまったりしたテンポが中心だが、
レイドバックすることなく心地よい緊張感の鋭い刃物が最後の曲まで突き刺さっている。
ノーマル・ヴォイスも曲として歌の感情を表すのに必然性のある場面でポイントを押さえて使い、
まろやかな味わいで悲しみをたたえる。
単に巧いだけではないこの声がまた実にいい。

デス・ヴォイスはネガティヴな感情を吐き出す際に歪んだかのように生々しく呪い祈り、
苦渋の歌心が滲み出ている。
歌詞はリアリスティックかつ哲学的だ。
プライヴェイトなことがモチーフだとしても
身のまわりだけを歌う内向き思考とは違う普遍的な内容に昇華した平易な英語で綴っている。
音楽ならではの想像力の拡大を伴う示唆に富むグレイトな内容だ。

それにしても
音楽に対して
表現に対して誠実である。
ジャンル問わずやっぱり人間なんでもそれが一番大切なのだ。

愛聴している。


★ダーク・トランキュリティ『コンストラクト』(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10038)CD
日本盤は本編全曲とボーナス・トラックのうちの1曲の歌詞和訳付で、
本作の米国盤に追加されている2曲、
2012年のEP『Zero Distance』の3曲、
「Zero Distance」のラジオ・エディット・ヴァージョンを追加した約66分16曲入り。
読みやすく本編の歌詞が載った16ページのオリジナル・ブックレットも封入である。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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