なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

WHITE WIZZARD『The Devils Cut』

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LA拠点のピュア・ヘヴィ・メタル・バンドが『Flying Tigers』以来約2年ぶりにリリースしたサード・アルバム。
NAPALM DEATHなどのエキサイティングなメタル/ハードコア・パンク/グラインドを世に送り出してきた
EARACHE Recordsから英国ではリリースされている。

5秒聴けばもうオッケー!と歓喜のメロイック・サインを掲げたくなる快作である。
敵意モロ出しの中指をオッ立てるんじゃない。
その左右一本ずつ飛ばした指2本をオッ立てるのだ。
真ん中に突っ込まず両脇から包み込んでいくのだ。
様式美なんてもんはどんなジャンルだっていくらでも存在するってのに真正面から向き合わずヘヴィ・メタルだけ目の敵にして趣味の良さを気取る似非紳士淑女なんか知ったこっちゃない胆力まんまんで疾走する。
ジャンル問わずまっすぐな音楽はなんだって胸がすく。
高尚じゃないからこそウソがなく尊く純情なヘヴィ・メタルがロックの“原始力”ってことも知らしめる。


曲作りの中心であるジョン・レオン(b、リズム・ギター)のソロ・プロジェクトと見なされがちで、
実際ジョヴァンニ・ダースト(ds)以外はまた今回から入れ替わっているが、
あくまでもバンドだ。
前作は本来ベース弾きのジョンがリード・ギターのパートも演奏し、
ムチャなソロ・プレイでパンク・ロック心がくすぐられて痺れて昇天したもんである。
けどのジョンも生粋の“ヘヴィ・メタリスト”だけにリード・ギターもキッチリしたいようで、
今回のアルバムでは二人のリード・ギタリストが琴線の裏筋を突くハーモニーを聴かせる。

その中心メンバーのジョンが、
演奏者としてはリード・ギタリストではなくベース/リズム・ギター担当なのもWHITE WIZZARDの魅力。
メロディを大切したソングライティングだが、
顔面直撃の平打ちビートのリズムも大切にしているからだ。
もっと言えばアタック感がこのアルバムでも肝。
どのロックもそうであるようにヘヴィ・メタルも“泣く”より“どついてナンボ”なのである。

ベーシストがリーダーのヘヴィ・メタル・バンドと言えばIRON MAIDEN
ヴォーカルがブルース・ディッキンソンになって以降でなおかつツイン・ギター時代のIRON MAIDENの楽曲に、
セカンドまでのIRON MAIDENの簡潔な勢いを静脈注射したかのようなスリルで持っていく。
後追いならではの観察力で、
ロニー・ジェイムズ・ディオがシンガー時代のBLACK SABBATHやDIOのドラマ性も有す。
基本的には曲のほとんどをジョンが書きつつ、
ピュアなヘヴィ・メタル・ファンのメンバー個々が自分のパートを“作曲”するソングライティングだけに、
ヘヴィ・メタル・ファンがどういうツボでエクスタシーに達するかもよくわかっている。
無駄に攻めずに必要なところで執拗な責めを施すのだ。
ダラダラした長いフレーズでお茶を濁すことなく、
かといって暴れてストレス発散できればオッケー!みたいな合理的な“スポーツ・メタル”ともまったく違う。
侘び寂びをLAの太陽でカラリと乾かしてギター・ソロも聴きどころだらけなんである。

様々なヘヴィ・メタルのエッセンスを凝縮した詞を歌うヴォーカルを中心に据えた作りだ。
ややアメリカン・テイストの新シンガーのジョセフ・マイケルのメタリックな声質も含めて
もちろんヘヴィ・メタル以外の何ものでもないが、
どんなに攻撃的で速い曲でもあえてスラッシュ・メタル寸前に留めた潔さも身上。
一方で適度にラフな感覚は、
ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(NWOBHM)~パンク・ロックに通じる。
いや、もっとさかのぼる。
日本盤にはLED ZEPPELINの「Immigrant Song」の完コピ試みたカヴァーが追加されているのだが、
それがWHITE WIZZARDの本質を表している。
「Immigrant Song」はLED ZEPPELINの中でもシンプルでロックの核のみを凝縮した曲だからだ。
ハード・ロックもヘヴィ・メタルもパンク・ロックも関係ない。
取ってつけた知性をファックするロックを本能で感じるべし。

素晴らしく救いようがない味だからこそ愛しく切なく邪悪なアートワークのジャケットもクールである。
喰らっとけ。


★ホワイト・ウィザード『ザ・デヴィルズ・カット』(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10042)CD
16ページのオリジナル盤のブックレット封入。
日本盤は前述のボーナス・トラックを加えた約53分10曲入りで、本編の歌詞の和訳付だ。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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