なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

つしまみれ『つしまみれ』

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99年に千葉大学で結成されて東京拠点に活動している
女性トリオ・バンドのつしまみれが自分たちのレーベルから約1年ぶりに出したニュー・アルバム。
結成14年目にしてセルフ・タイトルを付けただけに、
アートワークのピンク色のポップ感に包まれながらも力いっぱいのアルバムだ。

以前も書いたように、
女性のみの編成でメンバー・チェンジなくコンスタントに続けているバンドは世界的にもレアである。
だからこそ何度も海外でライヴをやってきた彼女たちは世界のどのバンドにも似てない。
お互いのエゴに寛容になれるほど自分が持ってない他のメンバーの個性を認め合っている関係性に見える。
そして何よりずっと向上心を持って活動している。
いわゆるインディ・ロック・スタイルによくある“こんなもんでいっか・・・”みたいな姿勢じゃないのだ。
壮大な目標を設定していてまだ達成し切れていないからこそ、
そこに向かう意志はこのアルバムにもたんまりである。


中村宗一郎(元WHITE HEAVEN)が録音とミックスとマスタリングを一手に引き受けて、
やわらかい頭で硬いビートを打ち鳴らすドラムとベース、
メルヘンとフラストレイションが背中合わせのギター、
まろやかに潤うヴォーカル
の音像が広がりと奥行きのある仕上がりになっている。

女性オンリーのバンドならではの発想がますます跳んでいる。
PERFUMEの曲をドラマチックなポップ・パンク・アレンジにしたような曲から始まり、
いきなりLUNACHICKSによるBOSTONのカヴァーみたいな宇宙への飛びようだ。
もちろんRAMONESGREEN DAYがそうであるように芝居臭さがない。
キラキラしたトランス・ロックの曲あり、
ソフト・ロックのパンク・ロック風味の曲あり、
シューゲイザーちっくに耽美な曲あり、
人力四つ打ちビートの曲あり、
ボ・ディドリーのリズムの曲あり、
シアトリカルな曲ありで、
12とおりの表情でひとつのリアルなドラマを見せるアルバムだ。

英語圏のオルタナをお勉強して作った“優等生バンド”みたいに“不自由なサウンド”は出さず、
天然でいつのまにか結果的にオリジナルのオルタナティヴ・ロックができてしまった。
男性にはなかなかできない強引なポップ展開が痛快だ。
音はけっこうゴツゴツしたロック・サウンドだが、
ポップをはらんでいる。
たとえばの話、
大瀧詠一がこのアルバムをプロデュースしていたらストレンジなポップスにもなりそうなほどである。

まっすぐなヴォーカルもポップだ。
キュートに甘えずしっかり歌っている70年代後半から80年代前半のアイドル歌謡も思わせる発声で、
大人の自立を感じるのびやかな歌唱である。
60年代のポップスみたいに作為がない。
ボーカロイドと組んだ突然段ボールの新作『突然段ボロイド』を聴いて、
ぼくはつしまみれも引き合いに出してレヴューした。
本人はまったく意識してないだろうがロボット~アニメの“二次元声”に聞こえる瞬間もあるが、
もっともっともっともっとやっぱり生々しい。

いい意味でアクが強いヴォーカルにふさわしく歌っていることはけっこうヘヴィだ。
2004年の実質的なファースト・アルバムのタイトルが『創造妊娠』だったしで
トリッキーかつエキセントリックなイメージもあったが、
ポップな視点で鋭い観察力の言葉を発してきているバンドである。
そして今回ますます自分を見つめている。
もちろん外見だけでなく内面をもっとずっと見つめている。
“「みんなちがっていい。」はずが みんな同じじゃなきゃ落ち着かない”と歌い、
さりげなく意志が息づき真理を突く。

中盤の曲「はじまりのうた」の歌詞も素晴らしい。
“勘違いでも進みたいのよ”。
コレ死ぬまで人生の基本である。
そもそも進まなきゃ死んでしまうのだから。
アルバム終盤に向うにつれて音もハードになっていくのは言葉もハードだから当然だ。
ラスト・ナンバー「NO PUNK」の最後の言葉が
“やり直したいことなど無いわ”。
彼女たちはダテに14年つしまみれに人生を注ぎ込んではいない。
つしまみれは覚悟を決めている。

そんな重みがポップな音に溶け込んで聴き応えまんまんのアルバムだ。


★つしまみれ『つしまみれ』(MOJOR DQC-1071)CD
音楽と同じく淡くシンプルにカラフルなデザインの16ページのブックレット封入の約47分12曲入り。


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コメント

ありがとうございます!

行川さーん!ボーカルギターまりです!!最高のレビューありがとうございます!
励みにして頑張ります!
くじけそうな時に読みます!
またお会い出来るのを楽しみにしています( ´ ▽ ` )ノ❤

まりさん、直々の書き込みありがとうございます。
そう言っていただけるとこちらもうれしいです。
また会いましょう。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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