なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』

ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区/メイン1


ヨーロッパの一番西に位置するポルトガルの北西部の古都ギマランイスをテーマに、
4人の巨匠が各々の物語を描いた映画。
その4人の監督は、
北欧フィンランド出身ながら20余年もポルトガルに在住のアキ・カウリスマキ、
隣国スペインのビクトル・エリセ、
本国ポルトガルのペドロ・コスタ、
同じくポルトガル生まれで今年105歳になるマノエル・ド・オリヴェイラである。

オムニバスとも言える映画で
ギマランイスという街が最低限のキーワードとはいえ4人が打ち合わせをしてまとめたわけでもなかろうが、
言うまでもなく寄せ集めではない。
独立した短編作品を撮った4人の意思が共振し、
発案者のプロデューサーのセンスも手伝ってひとつの流れができあがっているのだ。
どの作品もわかりやすくストーリーを追ったものではないが、
物語の背景などの予備知識が必要な頭デッカチの映画とは次元が異なる。
ギマランイスという地をまったく知らなかったぼくでも感銘を受けたし、
理屈を超えて映画の無限の可能性を感じさせる素晴らしい作品だ。

ネタバレを最小限にして4話それぞれを簡潔に紹介する。

ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区/サブ4

第1話『バーテンダー』
★アキ・カウリスマキ監督・脚本

主に昼間営業する小さなバー/レストラン一人で切り盛りしていると思しき中年男性の一日の物語。
午前中にバーに出勤してランチの準備をして客を待つもなかなか来ない。
閉店後に床屋で髪を整えて花を買ってバス停で女を待つ。
そして一日が終わる。
クソ真面目でクールな佇まいだからこそ思わずクスッと笑ってしまう男のユーモアとペーソスが滲む
静かなるズッコケぶりがたまらない。

ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区/サブ5

第2話『スウィート・エクソシスト』
★ペドロ・コスタ監督・脚本

『コロッサル・ユース』(2006年)などペドロ・コスタ監督作品によく出演しているヴェントゥーラが、
アフリカ大陸の西沖合いの諸島の国でポルトガルの植民地だったカーボベルデからの移民労働者の役。
1974年のポルトガルのカーネーション革命に参加するもヴェントゥーラは森の中で意識を失い、
気がついたら精神病棟の中。
牢獄を思わせる室内には彫像に見える兵士がいて正体不明の声がどこからか聞こえてくる。
示唆に富む言葉が幻聴のように響き、
生きてきた道程をたどりながら人生の終末に想いをはせて悟りを開くかのごとく変容していく、
ヴェントゥーラの表情の演技が素晴らしい。

ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区/サブ1

第3話『割れたガラス』
★ビクトル・エリセ監督・脚本

1845年に創業されて20世紀初頭には欧州第2の規模にまで発展したにもかかわらず、
1990年に経営危機に陥り2002年に閉鎖されて現在“割れた窓ガラス工場”と呼ばれる
繊維紡績工場にまつわる物語。
といっても工員らの大勢の食事シーンを撮った大きな写真をバックに、
かつてキツイ労働をしていた面々がその工場の食堂で次々と思い出などを語っていくだけである。
だが女性も男性も人生の終りが近い人たちが大半ということもあり話は含蓄に富み、
人物の撮り方や編集のシャープなセンスで一気に見せ、
繊維紡績工場で働いてきたすべての人たちのスピリット霊が震える最後の哀感の旋律に打たれる。

ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区/サブ3

第4話『征服者、征服さる』
★マノエル・ド・オリヴェイラ監督・脚本

ギマランイス地区にやってきた観光客を描いた作品。
バス・ツアーで周る集団環境客に歴史ある街ということをガイドが説明していく。
アフォンソ1世が初代ポルトガル王を宣言したのがこの地でもあり、
征服者アフォンソ・エンリケスの銅像の周りがカメラのシャッターを切りまくる観光客に占拠される。
そこでガイドが一言。

シリアスな要素も含む『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』全体の締めにふさわしい、
頓智の効いたオチにヤられるのであった。

ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区/サブ7

いつもいつも映画を紹介するときに書くが、
脚本もさることながら、
やはり映像力だけで持っていかれる。
4作品の作風はバラバラだが、
映像のトーンが一貫しているからこそひとつの映画として楽しめるのだ。

ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区/サブ2

ポルトガルと言えば普段話題になることが少ないし、
パンク系に限らずロック全般でも昔からあまり特筆するものが出てこない。
政治的にも急変はないが、
経済をはじめとしてヨーロッパの中での斜陽のイメージが強い。

どれもいわゆるフツーの日常生活を綴った映画とは一味違うから一見そう見えないが、
みなフツーの人々を描いている。
多少政治が絡む映画も含むが、
“民衆”だの“労働者”だのといったポリティカルな匂いのする言葉は似合わず、
生活のために働く庶民が話の中心。
たそがれ感も漂うが、ノスタルジーよりも未来を見据える。
映画全体で歴史を乗り越える。
どうにかなる、と。

ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区/サブ6

味わい深い音楽も必要最小限で挿入され、
歌詞の和訳も字幕で表示されてメッセージをほのめかしてもいる。
第1話と第3話ではアコースティックな楽器の生演奏が違和感なく物語の中に収まっており、
映画における音楽の大切さもあらためて思う。

1143年にポルトガル王国が成立してから醸造されて寝かされ続けたワインやウイスキーのような
コクが深く香りが高い佳作である。


★映画『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』
2012年/ポルトガル/ポルトガル語、英語/1時間36分/アメリカン・ビスタ
原題:Centro Histórico
配給:ロングライド
9月14日より、シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開。
http://www.guimaraes-movie.jp


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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