なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

LYNYRD SKYNYRD『God & Guns』

GodGuns Cover-LR


ブルースが根っこの土臭い音と男臭い歌で豪放にグルーヴする米国サザン・ロックの大御所バンドの新作。
73年にアルバム・デビューして以来これは11枚目のオリジナル・アルバムにあたる。


ぼくがLYNYRD SKYNYRDの名前を知ったのは、
77年10月の飛行機事故でロニー・ヴァン・ザント(vo)らが亡くなった時。
少なくてもアメリカではビッグ・ネームだったから当時の音楽雑誌でも取り上げられていたが、
ラジオから流れてきても受けつけなかった。
まだロック聴き始めの中学生でストレートな刺激を求めていた頃で、
パンク・ムーヴメントの真っ盛りで新しいバンドがどんどん表に出てきていた時代だから、
古臭く聞こえた。

もともとブルースがかった音はパンクの“敵”だったし、
80年代も受け入れることはなかった。
米国の風土が生むそういう泥臭さは自分がUSハードコアに対して奥手だった主因でもあるが、
色々な意味での保守性は政治も含めてアメリカ的なるものに対する自分の居心地の悪さの根源だと直感。
LYNYRD SKYNYRDにもそういう匂いを感じ取っていた。

ぼくがLYNYRD SKYNYRDを意識するようになったのは、
90年前後にファンジンでMELVINSのデイル・クローヴァー(ds)が彼らのTシャツを着ていた姿を見てから。
MELVINSのアメリカ臭さの源泉を見た思いがした。
ドゥーム・メタルとは言わないが、
LYNYRD SKYNYRDのほこりっぽさにはストーナー風味を含むのではないだろうか。
そういえばBRUTAL TRUTHのメンバーにも彼らのファンがいて、
東京公演でLYNYRD SKYNYRDの煙臭い曲のフレーズをちょろりと弾いたこともあった気がする。
なんだかんだ言っても彼らもアメリカンなんだなぁと思ったしだい。

LYNYRD SKYNYRDは“アメリカン・ロックの権化”だと思うから、
非オシャレ系の米国のロック・バンドなら多少なりとも聴いたことがあると思われる。
たとえばパンク・バンドでいったら、
南部意識が強いANTISEENあたりは精神的にLYNYRD SKYNYRD直系だろう。
だがそもそも対象の全部を好きってことはありえない。
それじゃ宗教の信者と同じだ。
南部のパンク/ハードコア・バンドが保守的な思想に染まるとは限らないし、
むしろ反動で急進的になる傾向にある。
たとえばMDCなどの南部産USポリティカル・ハードコア・パンク・バンドは、
音も含めて自分らの中に潜む保守性との格闘でエキサイティングな表現を生み出してきているのだ。


前述の飛行機事故以降10年ほどLYNYRD SKYNYRDは解散状態だったが80年代の後半に復活。
90年代の頭からコンスタントにリリースもしているが、
現在オリジナル・メンバーは60年代の前身バンド時代から弾いているゲイリー・ロッシントン(g)のみ。
とはいえオリジナル・シンガーの弟のジョニー・ヴァン・ザントがずっと二代目ヴォーカルを務め、
バンドの顔になって70年代とは一味違うLYNYRD SKYNYRDをリードしているようだ。

『God & Guns』は“サザン・ハード・ロックンロール”というべきサウンドである。
70年代よりもグッとストロングになっている。
あまりにもベタなアルバム・タイトルが恐ろしくハマった威風堂々のパフォーマンスなのだ。
南部魂が燃え盛る労働者スピリットに満ちた歌詞も、
いわゆるOi!/ストリート・パンクやニューヨーク・ハードコア系のバンド以上に強烈だ。

アルバム・タイトル曲「God & Guns」はオバマ米国大統領のリベラルな演説に対する反発という話もある。
“神と銃のおかげで俺らは強いままであり続けられる”みたいなことを歌う。
ここでの“神”は象徴的な意味ではなく文字通り聖書の方の“神”だろう。
それはともかくかつてLYNYRD SKYNYRDは、
75年のサード・アルバム『Nuthin' Fancy』収録曲の「Saturday Night Special」で、
イージーな銃所持に対して異を唱えていた。
70年代の南部のバンドとしては勇気ある行為だったと思う。
けどその曲を書いたロニー・ヴァン・ザント(vo)もエド・キング(g)もとっくの昔に不在。
さらに「God & Guns」では、
“ドアに鍵をかけなくても一晩中寝ていられた時代もあったけどもう誰も安全なんかじゃない”とも歌う。
あの頃とは時代が違うということか。

ジュニー・ヴァン・ザントがヴォーカルになってから内向き志向が強まって保守思想が滲む歌詞が目立つ。
南北戦争以来の“しがらみ”だけでなく北と南の経済格差も頭にあるのかもしれない。
といっても“ときたま禁煙の場所でタバコに火を点けたくなる”といった素朴なノリで、
“古き良きアメリカ”の生き方に戻らせてくれ!という南部のオッサンの息吹みたいなのだ。
曲はまったりしているが芯は荒ぶっている。
本音を歌うからこそ生々しく迫ってくる。
これがアメリカ合衆国のすべてではないが、
これがアメリカ合衆国のブルーカラーの声を代表する一つなのもまた事実である。


仲良しこよしの“安全牌”ばかりで自分を囲うのもまた違った形の保守であることに変わりはない。
自分にとって違和感を覚えるものを体に入れるとまた血が活性化する。
LYNYRD SKYNYRD “クラブ系のバンド”よりもずっと肌に合うのは、
地に足の着いたロック魂が燃えたぎっているからだ。
ロックは結局それに尽きる。


●レーナード・スキナード『神と銃』(ロードランナー・ジャパン RRCY-21354)CD
日本盤は70年代の代表曲「Sweet Home Alabama」を含む3曲のライヴを追加。
76年のライヴ名盤『One More From The Road』に迫るほど気合が入っている。
日本盤は本編の歌詞の和訳付でありがたいが、
細かいニュアンスを感じるべく英語の歌詞と見比べていただきたい。
たとえば“愛国心”の意味合いの言葉でも、
彼らが使う“red white and blue”というフレーズは“patriotism”より詫び寂びが効いているから。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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