なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

OVERHANG PARTY『Complete Studio Recordings』

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現在は魔術の庭を率いる福岡林嗣(g、vo、他)が中心になって91年の1月に東京で結成し、
2008年の1月にラスト・ライヴを行なった“サイケデリック・バンド”の
スタジオ・レコーディング音源を4枚のCDにまとめた作品。
米国マサチューセッツ州のレーベルから今年1月にリリースされたものだ。
既発表音源が大半のディスク1~3は2008年に福岡らがリマスタリングを行ない、
CDの特性を活かしたデリケイトで鮮烈な響きに仕上がっている。


ディスク1は93年に自主制作LPで200枚リリースしたデビュー盤『Overhang Party』に
1曲追加した約60分6曲入り。
全曲初CD化である。
ときおりヴァイオリンも弾く福岡がドラマーと二人で録った曲も含み
静謐な佇まいのインプロヴィゼイションがほとんどで、
ヴォーカルが入る曲も歌唱というよりはヴォイス・パフォーマンス的な趣からつぶやき風まで多彩。
たゆたう音はドラムもふくめて優美ながら悲しみの感情をたたえており、
エネルギッシュな“サイケデリック・ロック・バンド”として知られるOVERHANG PARTYの
別の一面を伝える貴重なレコーディングだ。
99年にサンフランシスコのKFJCで行なった14分を越えるラジオ・ライヴが1曲追加されている。

ディスク2は94年に自主レーベルのPATAPHYSIQUE Recordsからリリースした
セカンド・アルバム『Overhang Party 2』に1曲加えた約56分8曲入り。
前期VELVET UNDERGROUNDや裸のラリーズが血管の中を流れつつフォロワーとは完全に一線を画し
90年代以降の日本のリアル・サイケデリック・ロックだ。
ポピュラリティが高い福岡のソングライティングに裏打ちされ、
ドラマチックなメロディに彩られた“歌もの”とも言える名曲オンリー。
だがむろんヴォーカルと演奏が拮抗しており、
本編では福岡+山崎巌(ds他)+西野公二(b他)というトリオ編成ならではの
“三角形の緊張感とバランス感”により曲がギリギリで成立している。
轟音もたたえながらソロ演奏も臆せず感情の機微を伝える繊細なギターとジューシーなグルーヴ感も、
華奢なところを強みとして言葉をひとつひとつしっかり発声する歌唱も、
他にない個性だ。
イギリスのRIDEからシューゲイザーっ気を抜いたような骨太の甘美な味わいもたまらない。
西脇順三郎の「旅人かへらず」の詩を引用した曲も含む。
ボーナス・トラックは本編の曲の99年のライヴat高円寺20000Vで、
BORISのサポート・ギタリストとして知られる栗原ミチオ(元WHITE HEAVEN)も参加している。

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ディスク3は98年にPATAPHYSIQUE Recordsからリリースした4作目の『Overhang Party 4』に
1曲追加した約68分8曲入り。
ちなみにサードはライヴ盤の『Live 1994.8.22 At Showboat』である。
福岡(vo、g他)と山崎(ds他)というオリジナル・メンバーと山之内亮(g~現ゆらぎ)という、
ツイン・ギターでベースレスというトリオ編成が基本のレコーディングだ。
これまた福岡が大半を書いたポピュラリティの高いソングライティングに裏打ちされているが、
肯定性が増した輝きに覚醒される。
VELVET UNDERGROUNDの「All Tomorrow’s Parties」を思い出す福岡と山崎のキーボードも活かし、
トニー・コンラッドあたりのミニマル・ミュージックをポップにヴォーカルものへ活かした曲が印象的だ。
サイケデリック・ロックロール・ナンバーも含めて
死ぬほどやさしいたおやかな表情の歌と音にとろける。
長嶌寛幸(DOWSER)らが作曲した「Mirror」にPHEWが作詞で参加しているのもポイントで、
後に『Other Side Of』(2000年)などでキーボードを弾く森田祥子も歌い、
OVRTHANG PARTYのサウンドに溶け合っている。
日本語の語感と響きとリズムを活かしたヴォーカルの曲もさることながら、
本編最後に披露した福岡のストリングスも光るインプロヴィゼイション風の曲も光る。
歌心あふれる研ぎ澄まされたサウンドがスケール大きく飛翔して啓示にすら聞こえる。
ボーナス・トラックは「自由の幻想」というタイトルで知られる「Le Fantôme De La Liberté」で、
魔術の庭のライヴでもやっている加速するハード・チューンの名曲だ。

そして『Last Recordings』と題されたディスク4は前半が2003年で後半が2005年の録音の未発表音源。
現在ソロ活動も行なっているSachiko(b他)が加わった4人編成でのレコーディングだ。
他にも政治的なニュアンスも滲む曲をやっているが、
日本語を使わずほぼすべて英語で歌われる1曲目の「Prayer Of A Fool」は、
いわゆる“9.11”以降をイメージする。
とはいえその曲もふくめて叙情性が高く穏やかな佇まい。
ボーナス・トラック扱いでギターとドラムのインプロヴィゼイションの1曲も収められている。


2005年7月までの音源集の本作にはレコーディングされた曲が含まれてないが、
アキヤマ・キミヤス(元SWINDLE BITC~コケシドール、現FORWARD)がドラマーだった
末期の2006年のライヴCDやDVDもリリースされていることも付け加えておく。
本作に収められてない名曲も聴ける。

CD4枚組にもかかわらず売値が抑えられているようだからチャレンジしてみていただきたい。
誠実な音源集である。


★OVERHANG PARTY『Complete Studio Recordings』(IMPORTANT IMPREC347)4CD
詳細なレコーディング・データと歌詞の英訳が載った12ページのブックレット封入の
5つ折り紙ジャケット仕様。


PS
ディスク3に関して、PHEWは作詞のみでの参加で歌ってはいません。
お詫びして訂正させていただきます(2013年9月2日21時9分)。




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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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