なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『パッション』

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『キャリー』(76年)や『リダクテッド 真実の価値』(2007年)などの多数の作品で知られる、
40年米国生まれのブライアン・デ・パルマ監督・脚本の新作。
上司と部下の仕事をめぐる軋轢が周りの人間も巻き込んで熱を帯び、
愛と誤解が入り混じりながら加速していくサスペンス・スリラーの佳作だ。

アラン・コルノー監督の『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』(2010年)で、
レイチェル・マクアダムス[『シャーロック・ホームズ』(2009年)、『トゥ・ザ・ワンダー』(2012年)ほか]と、
ノオミ・ラパス[『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009年)、『プロメテウス』(2012年)ほか]
という女優二人が実質的な主演である。

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クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)は若くして世界的な広告代理店の重役にまでのぼりつめ、
“仕事ができる女性”のイメージを演出することに長けた華やかなヴィジュアルのやり手の美女。
部下のイザベル(ノオミ・ラパス)とスマートフォンの新作の広告を手掛けることになり、
イザベルはアシスタントの女性のダニ(カロリーネ・ヘルフルト)とプロモーション・ヴィデオを制作。
それはクライアントへのプレゼンテーションで好評を博したが、
まもなく上司クリスティーンが成り上がりのステップアップの踏み台にする。
以降も同情を買うエピソードを交えて“愛”を告げながら、
クリスティーンは部下のイザベルを操り人形として利用する。

慕っていた上司の“裏切り”の連続で堪忍袋の緒が切れたイザベルは逆襲に出て仕事の勝利を勝ち取るも、
上司クリスティーンの陰湿なイジメがエスカレートして精神的にこわれていき、
“薬物”が手放せなくなる。
その前後にクリスティーンとイザベルとの間の“オトコ”だったダーク(ポール・アンダーソン)の横領が発覚。
まもなく“一人の人間”が死ぬ。

終盤に向かうにつれて謎が謎を呼ぶ展開で映画の性質上ネタバレ厳禁の作品だから
以上のストーリーは思い切り断片的に書かせてもらった。

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広告業界すべてがこうとは限らないだろうが、
華やかに見えつつ実はドロドロシテイルという、
ある意味ベタな見せ方でわかりやすいからこそ物語後半の二転三転が映えてくる。

ギョーカイに限らずビジネス全般どころか家族も軍隊も含む人間関係すべてに当てはめられる話だ。
いわゆるサラリーマン社会のみならず、
音楽業界、それこそバンド間でもバンド内でも近いようなことはいくらでもある。
“Fuck off and Die”な上下関係が“個”を抹殺する。
スマートな外ヅラが
成り上がるためのエゴを隠蔽すべくこしらえたものでしかないケースは古今東西いくらでもある。
でもそういった意地汚く映る人間の感情の裏の裏の裏筋も見せていく映画であり、
うわっつらで善悪を決めつけたがる世の中を凍った血で覚醒させていく終盤が鮮やかだ。
だが殺すしかない感情の震えもたたえる。
だが殺すしかない感情の震えはひとつじゃない。
だが殺すしかない感情の震えのハーモニーは破綻する。

性別問わずの物語とはいえ、
どんな俳優が演じようがこの映画の主人公たちが男性だったらサマにならなかったと思うのは、
ぼくだけではないだろう。
“R15+”の上映指定をしているだけに相応のセックス・シーンも盛り込まれているが、
むろん大して必要ないのに交尾を売りにした映画ではなく必然的なアクセント程度の挿入。
普段の仕事ぶりとのギャップを狙ったのか
安っぽい“エロ”と紙一重の俗っぽさをはらむエロティシズムが肌を刺し、
ほのかな官能と艶やかな香りが映画全編を覆っている。

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やはり自然体で皮膚から匂いを吐くすべての女優陣の魅力によるところが大きい。
スーツ姿もジーンズ姿もクールなファッションも目を引き、
みんなビシッ!とキメているからこそ内面の暗部が際立ちキャラの違いも鮮明だ。
自意識の強さが表われた目立つ色合いの服装で派手に立ち回る上司クリスティーン。
黒系中心の地味めの服装でキメて着実に仕事を進める部下イザベル。

クリスティーンは上昇志向やサディスティックな性格と背中合わせで、
“仮面をかぶった自分”の表われの目隠しやデスマスク装備のやや変態めいたセックスを好む。
一方のイザベルもセックス中の撮影をいとわない、
そんな二人、
いやイザベルのアシスタントのダニも交え、
おんながおんなにやるパワー/セクシャル・ハラスメントの連鎖も見どころ。
男性をめぐる三角関係とレズビアンの三角関係がさりげなく交わり、
話が進むたびに次々とヒビ割れた感情のヒダが層を成していく作りに舌を巻くばかりだ。

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“四角関係”を織り成す出演者たちの突き放したような熱演あってこその映画だし、
練り上げられた脚本もグレイトなのは言うまでもないが、
華麗な映像が送り込む冷気が鼻と毛穴から入ってきてゆっくりとドラッギーな気分になる。
やはり映像力も大切なのである。
エキセントリックな手法は使われてないが、
活気と軋轢で熱く光る社内での鮮烈な色の映像と、
ダーク・ゾーンを描くシーンでの陰影に富む映像のコントラストにも魅せられる。
人物ひとりひとりの愛と邪念の等身大の動きがスクリーンだと目の前の出来事だと思わされる迫力だ。

鼓動と同じ適度なスピード感のテンポのいいリズムの進行も特筆したい。
ピノ・ドナッジが担当した静かなる冷気をはらむ音楽も映画におくゆかしく寄り添っている。

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すべての人間は犯罪者である。
だからすべての人間に情状酌量の余地あり。
だが許されないことは許されない。
だから免罪符の絆はすべて断ち切られた。
だから絞殺する刺殺する。

息の根が止まるときの生の息吹が一瞬に凝縮された結末もお見事。
これぞサスペンス!である。


★映画『パッション』
2012年/フランス、ドイツ/英語、ドイツ語/原題:PASSION/101分/カラー/R15+/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
10月4日(金)よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー。
(c) 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA
http://www.passion-movie.jp/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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