なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DREAM THEATER『Dream Theater』

DreamTheater Cover-LR


米国の“メタル・プログレッシヴ・ロック・バンド”の現メンバーでの2作目で通算12作目。
ビッグ・ネームにしては短い約2年のインターバルでのリリースということにも表れた、
バンド内の勢いでぐいぐい進める快作である。


前作『A Dramatic Turn Of Events』に引き続きジョン・ペトルーシ(g)が一人でプロデュース。
DREAM THEATER加入前のジェイムズ・ラブリエ(vo)とWINTER ROSEというバンドをやっていた
リチャード・チッキが録音とミックスを手がけている。
もちろん作りは緻密だが、
それを感じさせない風通しのいい音像だ。
抑制されたプレイとは対極のリラックスした開放的な空気の流れで解放される。

大半の曲がメンバー全員で作られていることも大きく、
バンドらしい制作体制のポジティヴなムードということを示す事実である。
というわけで加入したばかりで前作は単なるドラム叩きだったマイク・マンジーニ(ds)も今回は曲作りに参加。
むろん“専制”ではないといってもいわゆる“民主主義”みたいに多数決だの慣れ合いだのの関係とも違う。
流麗かつシャープなソロも弾き出すギター、
プログレ魂炸裂のキーボード、
陰と陽をあやつるベース、
シンプルなリズムの中に変拍子を忍ばせて微妙に手数が多いドラムが、
音を戦わせながらブレンドされた曲になっているから心地よい緊張感が加速する。
まろやかな歌ものもダイナミックなヴォーカルがそこに溶け込んでいく。

本編最後の曲は22分を越え、
全体的に当然70年代のYESのようなパートも聴かせるが、
RUSHを思わせるコンパクトな作曲が光る。
ヘヴィ・メタリックなリフも目立つ一方で、
ポピュラリティたっぷりのメロディ・ラインも輝く。
それでも売れ線狙いみたいな嫌味をまったく感じないのは時流に媚びを売ってないからだ。
かといって、おごりもない。
親しみやすいにもかかわらず高潔ですらあるサウンドで
せせこましく狭っくるしい空間を突き抜ける。

なにしろでかい。
人間までちっこくなるスマホみたいなちっこい画面で見る音楽じゃなく、
巨大なスクリーンで見るロックだ。
日常の不平不満の類を超えて現実を昇華しながら異次元に持っていく映画そのものである。

敵と生贄を作って安心する二項対立にも思わせぶりな知的にも陥らず、
どの立場の人間でも問われるような示唆に富みつつダイレクトな歌詞も映画的だ。
インスト・ナンバーを入れていることが象徴するように
言うまでもなく歌詞の意味性に頼ったアルバムではない。
映画が映像そのものですべてを語り得るように
本作はサウンドそのものでもすべてを語る。
1曲目と最後の曲で招かれたストリングス・セクションも効果的で、
その演奏だけのパートも麗しい場面転換に一役買っている。

バンド名どおりにまさに“ドリーム・シアター”な趣。
なぜここに来てセルフ・タイトルを付けたのか。
覚悟と自信があってのことだが
何よりアルバム自体が“夢のシアター”なのである。

だからこそ“精神安定剤”としてヘヴィ・ローテーション。
拘束された意識を飛翔させる。
お見事。


なお“~スペシャルエディション~”版の方は、
アルバム・カヴァーにエンボス加工が施された三面デジパック仕様で、
通常盤と同じ内容のブックレットが内側に貼り付けられている。
さらに通常盤と同じ内容のCDに加え、
アルバム本編の全9曲の5.1chオーディオ・ミックスを収録したDVDオーディオ付だ。
映像コンテンツは入ってないDVDではある。
でも“DVD AUDIO”のロゴの付いたプレイヤーでは
PPCM(96kHz/24bit)/5.1cサラウンドとPPCM(96kHz/24bit)/ステレオでハイレゾ音声を楽しめ、
“DVD VIDEO”のロゴの付いたプレイヤーでは
ドルビー・デジタル/5.1cサラウンドとドルビー・デジタル/ステレオで奥行きと広がりが楽しめる。
ドラムをはじめとしてCDとはかなり違う鳴りで本作の映画のようなダイナミズムが一層感じられ、
デジタルならではの特性が活かされたまさに“夢のシアター”のビッグな音響だ。


★ドリーム・シアター『ドリーム・シアター』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-15194)CD
★ドリーム・シアター『ドリーム・シアター~スペシャルエディション~』(ワーナーミュージック・ジャパン WPZR-30479/80)CD + DVDオーディオ
28ページブックレット封入。
日本盤は歌詞の和訳付で「The Enemy Inside」のインスト・ヴァージョン追加の約75分10曲入り。
音源管理が厳重なバンドだから日本盤にボーナス・トラックが入るのは11年ぶりとのことだ。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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