なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ポリス/ザ・サヴァイヴィング・ザ・ポリス』

police_main.jpg


77年に英国で結成して80年代に一世を風靡したロック・トリオのPOLICEの映画。
スチュワート・コープランド(ds他)が撮り溜めた映像が基の『ポリス/インサイド・アウト』は公開済だが、
この映画はアンディ・サマーズ(g他)自身が製作総指導を行ない、
自伝『アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書』をベースに作られたドキュメンタリーである。
というわけで“アンディ・サマーズの紆余曲折の人生とPOLICE”といった趣だ。

SUB1_201310241004576a3.jpg

“police”に手を差し伸べられて有名人になるも、
ツアーで“police”に拘束されたような状態になってまもなく“police”が自壊し、
“police”が離合を繰り返す中でのアンディ・サマーズ・・・という人間ドラマになっている。

既成のパンクに対するシニカルな挑戦みたいなバンド名自体が素朴にパンクだ。
この映画でもPOLICE結成時の話のところで「パンク・バンドを始めた」と言い切っており、
ヴィジュアルも含めて当時のパンク・ムーヴメントを意識した方向性をとっていた。
実際当時ぼくも初期のPOLICEをパンク・バンドとして聴いていた。
キャリアを積んだ別畑の人間たちがパンク・イメージを利用したクチだが、
パンク特有の言い訳や能書きの浅はかさに気づけば結局は音楽そのものの魅力がすべてである。
シーン的にはパンクからニューウェイヴの言葉が派生し、
その波に乗ってPOLICEはステップアップして80年代に入るとビッグ・ネームになった。

SUB4_20131024100533cbb.jpg

あくまでもPOLICEを背骨にした構成である。
既出の話題も少なくないだろうが、
POLICEの魅力とメンバー間の軋轢が描かれていく。
初期の代表曲「Roxanne」の誕生秘話、
3人とも自分のパートの音をでかくしたがるからエンジニアが苦労した話、
“パーフェクト・セシパレーション”という完全別居で録った目下の最終作『Synchronicity』(83年)の話、
アメリカでのブレイクでますます大変になった話など。
スティング(vo、b)がソロでやる腹をくくっていた話も飛び出す。

キャリアのある人間同士が和合した“職人組合”に見えて、
POLICEの肝は当時の東西陣営の冷戦の如く3人の個性がクールに火花を散らす緊張感の中に宿っていた。
テレビ番組出演時の3人のやり取りもユーモラスだったが微妙に危うい。
それぞれ別なシーンの人間同士が集ったトリオ編成ならではのギリギリの刺激たんまりの綱渡りであり、
だからこそPOLICEはエキサイティングだった。

SUB5_2013102410061430a.jpg

70~80年代だけでなく再編後のものも含めて
POLICEのオン・ステージとオフ・ステージの映像などを盛り込みながら、
あくまでもアンディの人生を追う流れでもある。
昔のインタヴュー・シーンを別にすればスチュワートやスティングの発言は無し。
アンディ・サマーズも本作のために取られた新規インタヴューは無し。
でもほぼ時系列で話を進める映画の流れに沿ってアンディが語っていく作りで、
そのナレーションがとつとつと淡泊だからこそ逆に生々しい。

アンディの誕生から音楽を始めるまでの話から、
バンド内の最年長でPOLICEのレコード・デビュー時は35歳だったアンディが覚悟を決めてブレイクし、
家庭とツアー生活の両立といったビッグ・ネームのミュージシャンにつきものの話を経て、
後半では一アーティストとしてあまり例がない人生が明かされる。
POLICE時代から地獄のツアーの骨休めとして行く先々でモノクロ写真の撮影を行ない、
それが結果的に当時の記録になっていて展覧会を開くまでになっている。
アンディはまさに短なるミュージシャンに留まらないアーティストなのだ。
アンディの人生は“やり直しの連続”だが、
プライベート・ライフも含めてそれがあながち失敗ではなかったことも示している。

クリーンなイメージで気取らないじゃないところもひっくるめて人間臭い。
「ロックンロール・アスホール」「なんでもかんでもファックする」などと自嘲するシーンも、
正直でよろしい。
POLICE再編ツアー時の2008年2月に日本で収録した映像も本作のポイントになっており、
東京の飲み屋街を歩いている最中にフラリと入店して“飛び入り”したハプニング・シーンからは
特にアンディの人柄が伝わってくるし、
いかにPOLICEが日本の一般の音楽ファンの間で親しまれているかがストレートに表れた名場面である。

SUB8_20131024100652676.jpg

実のところPOLICEは個人的にとても大切なバンドだ。
80年代以降はビッグ・ネームとして認識されているが、
ぼくがハード・ロック/パンク・ロック問わずストレートなロックとは違うものを聴くようになったのは、
POLICEが始まりだ。
当時影響がでかかった渋谷陽一がビデオ・ジョッキーをやっていたテレビ番組
(確かA&M Recordsのアーティストを紹介する番組だった気が・・・
初めてライヴを観た外国のバンドがTUBES(with YMO)だったのもこの番組の影響)
で知った。
プロモーション・ビデオを見られること自体が貴重な時代で、
レゲエを取り込んだシャープな音以前にシンプルすぎる佇まいが鮮烈だった。
当時POLICEを知らなかったらThe POP GROUPをリアル・タイムでは聴かなかっただろうし、
人生も違ったものになっていた。

そんなノスタルジックな気持ちを抱きつつ
バンド内の最年長でありながら“第三の男”だったアンディの生き様を見ていたら、
映画の原題でありPOLICEの初期の名曲のタイトルでもある
“あなた(たち)を失うのは耐えられない”というフレーズが頭に浮かんで感慨深くなった。

KeyArt.jpg

★映画『ポリス/ザ・サヴァイヴィング・ザ・ポリス』
2012年/アメリカ/原題:Can’t Stand Losing You/Surviving The Police/カラー&モノクロ/83分
11月23日(土)より、TOHOシネマズ渋谷ほかにて、
12月7日(土)より新宿シネマカリテにて、
全国順次公開
Copyright 2012 OTL Distribution LLC
http://www.survivingthepolice.com/
facebook: www.facebook.com/thepolicemovie
twitter: @thepolice_movie


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1149-7204af40

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (95)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん