なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』

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『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84年)、『ダウン・バイ・ロー』(86年)、『ミステリー・トレイン』(89)、『デッドマン』(95年)など、
作る映画がことごとく話題になる米国ジム・ジャームッシュ監督・脚本の4年ぶりの新作。
ヴァンパイア・ムーヴィーだが、
吸血鬼といっても何世紀も愛し合って生き続けている洒落たカップルがメイン・キャストになり、
グラム・ロック・テイストも香る浮世離れしたラヴ・ストーリー仕立てで“ジャームッシュ節”健在である。

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男性の主人公のアダムは『アヴェンジャーズ』(2012年)でもお馴染みのトム・ヒドルストン。
女性の主人公のイヴはジャームッシュの前々作『ブロークン・フラワーズ』(2005年)や
前作『リミッツ・オブ・コントロール』(2009年)にも出演していたティルダ・スウィントン。
イヴの妹のエヴァは『アリス・イン・ザ・ワンダーランド』(2010年)の主役のミア・ワシコウスカ、
さらに『デッドマン』『リミッツ・オブ・コントロール』にも出ていたジョン・ハートも登場する。

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姿を現さない知る人ぞ知る“地下活動ミュージシャン”のアダムと恋人のイヴのストーリー。
何世紀も生きる二人だけにエピソードが時空を横切るとはいえ、
シンプルな展開だから話の筋を書くのも野暮ってもんである。

そもそも “アダム”と“イヴ”という主人公たちの名前だけでもう人を喰っている。
荒唐無稽奇想天外。
あきれていいのか笑っていいのかわからないナンセンスな“罠”が
ジャームッシュ特有のゆるい時間感覚を“裏打ち”するオフビートのリズムで悠々と走る物語の中に
ちりばめられている。

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アダムは近年の人間の愚行ぶりを嘆いているようだが、
世を憂いて冷めているからとはいえそもそもこの映画のカップルの方がずっと享楽的である。
汚い血は吸いたくない二人。
冷蔵庫の中から血のアイス・キャンデーを取り出しては舐め、
外ではウイスキーのポケット・ボトルよろしくの状態で血の入ったボトルを取り出しては飲む。
あくまでも無邪気。
なにより優雅である。

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教養や雑学の重箱の隅をほじくるネタが次々と小気味よくハジき出される。
バイロンをはじめとする18世紀後半~19世紀前半の英国ロマン派詩人が話題になり、
16世紀の英国の劇作家クリストファー・マーロウをジョン・ハートが演じ、
イギリス文学好きの心をくすぐる。

ジャームッシュの映画だから当然音楽の話題もたんまりだ。
年代物のギターやアンプのマニアの懐をくすぐる機材ネタが念入りで、
本人は登場しないがジャック・ホワイト(WHITE STRIPES他)やソウル・ミュージックの話など、
音楽関係も“ディテール”にたいへん気を遣っている。

けどもちろんそういう固有名詞を知らなくても十分に楽しめる。
ギターを手に曲を作るシーンをはじめとして、
“骨董部屋”のアダムのムーディな室内の空気も鼻を突く。
たびたびドーナツ盤のレコードをかけつつYouTubeで音楽を見るといったライフスタイルも実に心憎い。
こういう何気ないシーンの連続もまさに映画ならではの楽しみなのだ。

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言わずもがな音楽自体もノンストップ・ミックス紙一重なぐらいたっぷりと使われている。
ジャームッシュとコラボレーション・アルバムも出しているオランダの現代音楽家、
ジョゼフ・ヴァン・ヴィセムが基本的な映画音楽を担当してリュートを弾いている。
他にBLACK REBEL MOTORCYCLE CLUBの曲なども流されるが、
本作は劇中で実際に“リアル・タイム”でミュージシャンがプレイしたりレコードをかけたりした音楽も多く、
この映画の静かなるライヴ感覚に一役買っている。
ニューヨークのバンドのWHITE HILLSやレバノンの歌手ヤスミン(Yasmine Hamdan)の
ライヴ・パフォーマンスも見どころのひとつだ。

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二カ所で撮影されている。
一つがMC5やSTOOGESをはじめする熱いロックやモータウンを生み出した地でありながら
自動車産業の没落と治安の悪化と人口の流出と今年7月の破産宣言で悪循環が止まらない米国デトロイト。
もう一つが、
ブライアン・ジョーンズ(ROLLING STONES)が『The Pipes Of Pan At Joujouka』のネタを仕入れ、
ウィリアム・バロウズらビート・ジェネレーション勢も愛好したモロッコのタンジール(タンジェ)。
というわけである意味“いかにも”すぎる組み合わせのロケ地なのだが、
それをあえてやってしまうのもジャームッシュのナイーヴな魅力ってもんである。


明るい闇と暗い光に司られた粋な映像力がやはりたまらない。
たとえ何十年後にストーリーの細かいところを忘れたとしても、
グレイトな映画は映像の色と匂いを忘れさせることはないのだ。


★映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
2013年/アメリカ・イギリス・ドイツ/123分/原題:Only Lovers Left Alive
12月20日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、ほか全国ロードショー。
(C)2013 Wrongway Inc., Recorded Picture Company Ltd., Pandora Film, Le Pacte &Faliro House Productions Ltd. All Rights Reserved.


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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