なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MUSE『Live At Rome Olympic Stadium』

MUSE『Live At Rome Olympic Stadium』


本国イギリスのみならず世界的に揺るぎない人気をキープしているロック・バンド、
MUSEの今年7月6日のイタリアにおけるライヴを収めたCDとDVDの2枚組。


今年観たライヴの中で最も衝撃的だったのが、
さいたまスーパーアリーナで行われた1月のMUSEのステージだった。
ぼくは2004年に東京ベイNKホールで観た時以来のライヴだが、
ほとんどカルチャー・ショックだった。

単にビッグ・ネームのパフォーマンスをでかい会場で観たからではない。
ダメなアーティストは当然いくらビッグでもダメなのだ。
音楽で長いこと忘れていた何か大切なものを思い出した気がした。
それは一般の音楽ファンの方ならば当たり前のものかもしれない。
原始的な要素と最新型が噛み合ったステージ・セットも含めて
しっかりと見せるビシッ!としたパフォーマンス。
そして何より音楽の基本だが、
いい曲作ってしっかり発声して歌うこと。
たとえ大層なメッセージだろうがポーズを付けた歌い方がますますウソに聞こえるようになった。

SWARRRMのギタリストが昔から絶賛はしていたが、
ジャンル問わず聴くロックな人間の先進的な感覚を斬るハードコアやメタルとは違うヘヴィネス。
比較されてきたRADIOHEAD周辺ほど
趣味がイイとされる評論家にウケしないのも納得だと思ったが、
大衆的すぎるというのもその一因かもしれない。
だが、
英国ならではの侘び寂びのリリシズムあふれる過剰なまでに感動の波と渦を生み出す楽曲をはじめとして、
ポピュリティとアート性とパワーの恐るべきバランスととろけるブレンドに打ちのめされた。

スマホとにらめっこしているみたいなコセコセしたジャンルとしてのインディ・ロックの小市民性を撃つ、
ビッグ・スケールのロックの原初的なダイナミズム。
でかい会場をものともしない。
ぼくが観たときもそうだ。
会場の隅々まで一番遠いところまでも心を届かせる。
もちろん音響システムがしっかりしていることが前提ではあるが、
やはり小手先ではない肉体と楽曲とインテリジェンスが織り成す正真正銘のパワーの為せる業だ。
ポピュラーであることは必ずしも媚びることを意味しない。
なぜならMUSEは時代に屈せぬ現在進行形のロック・バンドだから。


CDは約65分13曲入りで、
音だけで楽しむことが前提だから塊になった作りながら一つ一つの音の輪郭のはっきりした仕上がりも素晴らしい。

DVDは本編のライヴが約96分20トラック入りで
(ロンドン・オリンピック公式ソングに採用された「Survival」も含む)、
今年3月のアメリカにおける2つのライヴで
本編未収録の3曲(しかもサブライズな仕掛けのセット)を約16分ボーナス映像として加え、
さらに5分弱ほどステージ設営の様子などを早回しで足した計約2時間。
まずCD以上に臨場感がある立体的な音像が素晴らしい。
大会場のやや遠めの位置から聴いているようなバランスで適度に観客の歓声や合唱も聞こえてくる。

それでもって全曲クライマックス!なセットリストだからたまったもんじゃない。
ヘヴィな音が多くてもシャンソンのような旋律も息づいて親しみやすくメロディアスだから、
ロックや洋楽に馴染みのない方も引き込む。
特典映像の曲も含めれば“グレイテスト・ヒッツ”の選曲だからベスト盤としても楽しめる。
過剰なまでにドラマチックなソングライティングの深化と進化を再認識もできる。

たくさんのカメラを使いながらうるさい編集はせず
基本的にはストレートに演奏を見せて適度に観客を映し出すオーソドックスな作りだが、
映像等も多用した凝ったステージングを演奏と一緒に見せる工夫もDVD作品として成されている。
曲によってはモノクロも使い、
まったく飽きさせない。

ステージ上のセットは全然違うが、
まさに今年1月の日本公演の興奮が蘇る。
歌と演奏もさることながらメンバーのショーマンシップにも舌を巻く。
特にファルセットも使う熱唱ながら微妙に冷めたトーンも内包しているからこそシャープに喉を震わせる
マシュー・ベラミー(vo、g、p)はハンドマイクで歌うシーンも多く、
よく歩きまわって歌う。
一回のステージでかなりの運動量だろうし小柄であるからこそ全身を使って表現している。
ささやかな(バッキング)ヴォーカルもチャーミングなクリス・ウォルステンホルム(b)と
ドミニク・ハワード(ds)の激しい音のヴァイブレイションも、
ステージでの動きからして凡庸なUKロックを超えている。
あまり映らないがサポート・メンバーのキーボードの重要性もよくわかる作品だ。


ライヴ作品が多いバンドだが、
常に研ぎ澄ましてアップデートを続けていることが刻まれたグレイトな2枚組である。


★MUSE『Live At Rome Olympic Stadium』(WARNER 825646394210)CD+DVD
12ページのブックレット封入の二つ折りジャケット。
ぼくが買った↑のカタログ・ナンバーのDVDはジャケットの左下に“12”の文字が入っているもので、
日本製のDVDプレイヤーで見ることができた。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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