なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Stephen Malkmus & The JICKS『Wig Out At Jagbags』

Stephen Malkmus The JICKS


米国を代表するオルタナティヴ・ロック・バンドのPAVEMENTのフロントマンだった
スティーヴ・マルクマス(vo、g、kbd)率いるStephen Malkmus & The JICKS
『Mirror Traffic』以来2年半ぶりの実質6作目。

プロデュースはスティーヴンではなくRemko Schouten。
BETTIE SERVEERTをよく手がけている人だが、
PAVEMENTのライヴ・エンジニアを務めていたこともあるようだ。
彼とともにミキサーとしてクレジットされているジョアンナはJICKのベーシストの人だろうか。
録音がベルギーのスタジオでのライヴ・レコーディング、
ヴォーカル録りはドイツの東ベルリン、
ミックスはオランダの東アムステルダム。
というわけでヨーロッパ制作のアルバムだ。


曲によってゲストがフルートやチェロ、ホーンが加えて多少彩りは豊かだが、
淡い。
変わってないし変わりようがない。
天然で勝負できるヤツは作為なんかいらない。

悠々自適だがヘタレのようでちゃんとしている。
ジャンルとしてのインディ・ロック勢とはやっぱり格が違って何気に大きい音楽。
もちろんゆるい。
縛られたくないし解放されたいじゃないか。
スキのない石頭のリズムは長い時間聴いていると退屈にもなるし縛られている気持ちの時は息が詰まる。
多少すきまがないと息苦しいし風通しも欲しい。
だがこのアルバムはギリギリのところでリズムがビシッ!としていて根本で引き締めている。
さりげなく重い。


レコード会社のサイトによればスティーヴンは、
「マーク・フォン・シュリーゲル(アメリカのSF 作家)、ローズマリー・トロッケル(ドイツの現代美術家)、
CAN、VON SPAR(現行クラウトロック・バンド)、ガス(ドイツの電子音楽家ヴォルフガング• フォークト)、
ヤン・ランキシュ(ドイツのエレクトリック・ミュージック・レーベルのTOMLABの人)に、
新作『Wig Out At Jagbags』はインパイアされている」という。
さらにスティーヴンは、
「WEEZER、RED HOT CHILI PEPPERS、80 年代末のヴァージニア大学、The New York Review of Books、
シャルロッテンブルグの香り、無為、ジャムること、メンフィスの音を出そうとトライしているインディ連中、
ピート・タウンゼンド、PAVEMENT、FLIPPER(80年代前半メインに活動したサンフランシスコのパンク・バンド)、
JOGGERS(JICKSのドラマーのジェイク・モリスが在籍したポートランドのバンド)、NBA、2010年代の家庭生活
を思い浮かべる」という。
言い得て妙である。


腹がよじれたシティ・ポップスみたいなのやモータウンっぽいのもやっているが、
頭がよれていたり途中で崩したりもする。
だが足腰がしっかりしているからブレない。
メンバーの演奏も味があり、
意外と太くて艶やかな音のギター・ソロもクールだ。

ソロになってからも含むルー・リードの多彩なソングライティングもイメージする。
VELVET UNDERGROUND~TELEVISION~SONIC YOUTHの系列とは別の“ギター・ロック”であり、
やっぱりパンク以降のサイケデリックでもある。
以前MELLOW CANDLEをカヴァーしていたことを思い出したが、
シスコ・サウンドやBYRDSあたりの感覚、
つまりルーツ・ミュージックの土の香りがするアメリカン・サイケデリックの空気感だ。

スティーヴンはJICKSのメンバーとは別の面々と2012年に、
CANの『Ege Bamyasi』をカヴァーするライヴも敢行している(レコード化された)。
カヴァーといえばスティーヴンは、
同じ年にLAメタルとNWOBHMの“末梢バンド”のLA GUNSの「Wheels Of Fire」もやっている。
そんな具合にメタルやパンクの中でも見下されがちな類のバンドも“いいもんはいい!”と言う
意外に少ない奇特なミュージシャンだ。
自分が差別主義者だってことに気づいてない間抜けなリベラルとは違う。

というわけで前述のスティーヴンの言葉の中にCANとともに挙げていたFLIPPER。
観客を帰らせることに情熱を注いでいた“変態パンク・バンド”だが、
昔ぼくがインタヴューしたとき目の前で歌ってくれたFLIPPERの“脱力”代表曲「Ha Ha Ha」の
イントロそのままの曲「Shibboleth」も面白い。
そんなスティーヴンだけに「Rumble At The Rainbow」でのパンク/ハードコア批評みたいな歌が痛烈だ。
特に米国シーンを指しているようでアメリカン・スピリットと引っかけて歌っている。
他の歌詞もシニカルであり示唆に富み、
言葉を音と一緒に耳に流し込むと味わい五割増しである。


昨日upしたDEICIDEの新作とはまた違ったベクトルで元気になるアルバムだ。
今年最初の愛聴盤。
深い。


★スティーヴン・マルクマス&ザ・ジックス『ウィグ・アウト・アット・ジャグバッグズ』(Pヴァイン PCD-93784)CD
凝ったデザインのデジパックにインナーシートを封入し、
日本盤は1曲追加した約45分13曲入りで、
本編の歌詞とその和訳(+注釈の丁寧なGJ!)が読みやすく載った16ページのブックレットも付いている。
1月8日(水)発売。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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