なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MOTORHEAD『Aftershock』

AFTERSHOCK.jpg


昨年の10月にリリースした21作目のオリジナル・アルバム。


紙媒体などで既に書いた作品はスペースを割いていただいた礼儀と仁義でブログでは書かないことにしているが、
レヴューが載ったベース・マガジンの号が発売されてから数か月経ったからもういいだろう。
昨日upした湯川潮音のアルバムをはじめとしてこのブログで取り上げる大半の作品と同じく、
グレイト!にもかかわらずあまり話題になってないようで激怒を通り越してあまりに悲しいし、
年間ベスト・セレクションのブログで本作に対するコメントもいただいたから書く。


MOTORHEADのオリジナル・アルバム史上最も曲数が多い14曲入りで、
トータル約47分半だから最も尺の長いアルバムではないだろうか。
しかもほぼ3年以内でリリースするインターヴァルが今回もキープされている。
38年を越える活動でいまだそのペースを続けている制作気力に驚嘆すると同時に、
その精力的な姿勢だけでぼくは大いにインスパイアされる。

内容が満点なのは言うまでもない。

プロデューサーは『Inferno』)(2004年)以来5作続けてキャメロン・ウェッブ。
笑いと金言が満載のDVD『クラシック・アルバムズ:エース・オブ・スペーズ』でも語っているように、
客観的に見ることができる第三者が必要ということで常にプロデューサーを求める
レミー・キルミスター(vo、b)の信頼の厚さが伝わってくる人選だ。

“MOTORHEAD節”のツー・ビート・ナンバーを要所にブチ込んで脳ミソとボディに蹴りを入れつつ、
緩急織り交ぜた14曲が脳ミソをドツキまわしボディをとろけさせる。
レミーがローディをやっていたジミ・ヘンドリックスを思い出す曲あり、
YARDBIRDSをイメージする曲あり。
あからさまなブルースのフォーマットの曲をいくつかやっているのも特徴で、
久々にバラード調のスロー・ナンバーも聴かせてくれる。

だがむろん加速し続けている。
レイドバックなんてクソ喰らえ!の胆力がムンムンなのである。
昨年のクリスマス・イヴに68歳になったレミーだが、
老いてなお盛んというよか年輪を音に刻むごとにビシッ!と強靭になるベースにまたまた驚嘆するし、
酸いも甘いも焼け焦げて硝煙の香り漂う色気のフレーズもたまらない。
さらにフィル・キャンベル(g)とミッキー・ディー(ds)が弾き出し叩き出す鋼鉄ブルースが、
『Ace Of Spades』(80年)でオツムが止まったまんまのMOTORHEADファンを片っ端からファックする。


歌詞も強力極まりない。
今回もロックンロール賛歌ありラヴソングありで、
『1916』(91年)の収録曲「Going To Brazil」の続編みたいな「Going To Mexico」も興味深いネタである。
ただしダークなトーンが目立ちシリアスかつヘヴィな心根が繰り出される。
これまでのアルバム以上に言っておきたいことをすべて書き連ねたかのようだし、
だからこそ14曲も叩き込んだのである。

レミーのヴォキャブラリーは昔からほとんど変わってない。
このアルバムの中でも同じ言い回しがけっこう頻発している。
まるで言いたいことは“ひとつ”であるかのようだ。
底の見える知性自慢みたいな小難しい言葉を使わずに限られた語彙の中で表現をするという点で、
音楽と同じくまさにロックンロールである。
歌詞においてもレミーがルー・リードと並び称すべき“作家”だと再認識もさせられるのだ。

歌心たんまりの喉を震わせる“レミー画伯”の絵心が炸裂した画がさりげなくブックレットを彩っているところも
要注目である。
DISORDERの7”EP『Mental Disorder EP』(83年)のジャケットも思い出す作風に
レミーのパンクの肝が表われている。
そのブックレットでレミーがこのアルバムを
ロニー・ジェイムズ・ディオ(RAINBOW、BLACK SABBATH、DIO他)や
ジェフ・ハンネマン(SLAYER)らに捧げたクレジットも見逃したくない。
つるまず慣れ合わずの人だが歴戦の戦士と同志に対しての敬意が深く情に厚い。
音以外もすべてがMOTORHEADの表現なのである。


昨秋予定していたMOTORHEADのヨーロッパ・ツアーはレミーの体調不良のためにキャンセルされた。
レミーは愛飲してきた“コーラのジャック・ダニエル割り”を止めて1年ほど前から禁煙しているとのことだが、
糖尿病の薬の副作用が足などに表われたらしく、
ぼくも父親がそういう感じになっていて肉体の変化をモロ見てきたから心配ではある。
だがレミーは長年のタバコと糖質過多のアルコールを止めて臨み、
さらなるストロングなネクスト・レベルの声と響きで進み続けている。
勝ち取るために。

聴けば聴くほど涙と精力が湧く。
“ロハスな音楽と言葉”はあっちいけ!とばかりの作風にさらなる磨きをかけたアルバムである。
まさにウルトラ・グレイト。


★MOTORHEAD『Aftershock』(UDR UDR 0175 CD)CD
24ページのブックレット封入。
ぼくが買ったCDはエンボス加工の三面デジパック仕様だった。


スポンサーサイト

コメント

書いていただきありがとうございます

愛聴しているもののクレジットはよく見ていなかったので、行川さんの文章でいろいろと知るところがありました。ありがとうございます。
日本盤は出ないのでしょうか?今の時代、国内盤フィジカル・パッケージがどれくらい重要か...という話もあるのかもしれませんが、それでもやっぱり、レコード会社の方にはこういう作品を出して推してもらって若いロック・ファンを耕していくことが必要と思いますが。

最高のアルバムでした。モーターヘッドのディスコグラフィの中でも屈指の内容だと思います。
モーターヘッドに限らず、以前からベテランのバンドはメディアから常に過小評価されてるような気がして残念ですね。
Pitchforkの2013年のベストアルバム・メタル部門を見てもポッと出のニューカマーやヒップスターだけを持ち上げて、若い世代のファンに媚びてるような印象を受けました。

書き込みありがとうございます。
>Fripperさん
Fripperさんの以前のコメントにも背中を押されて書いてみたくなりました。クレジットには色々と隠し味があったりしますし、バンドの意識もさりげなく表れていたりします。時間があるときに眺めながら聴くと発見あります。大幅に遅れてから日本盤を出すとしたらオマケが付かないとキツイでしょうね。ぼくもこれ買ってからライヴDVD付の発売を知りました。早々と買った前作も後でDVD付が出ましたし。
>korokuさん
4人編成時代はバランス感が微妙にも思えたのですが、再び3人になってからのアルバムに駄作はない中でも屈指の一枚ですね。Pitchforkのを今見てみました。ぼくが選んだものもいくつかありますしCARCASSも入っていて幅広いセレクションですが、エクストリーム・メタル以降の音がメインで、60~70年代の流れをくむベーシックなスタイルのバンドが外されている気がします。RISE ABOVEものが一つも入ってないのもその表れかと思います。単なるロートルをありがたがるのもどうかと思いますが、これだけグレイトなアルバムを出しても言及されないのは悲しいです。もっと自分もがんばらないと!とあらためて思いました。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1196-7105e416

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (294)
映画 (262)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (420)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (99)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (123)
FEMALE SINGER (43)
POPULAR MUSIC (27)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん