なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『バチカンで逢いましょう』

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『バグダッド・カフェ』(1987年)での名演で知られる女優マリアンネ・ゼーゲブレヒトが熱演し、
イタリアのローマとバチカンを舞台に繰り広げられる2012年のドイツ映画。
これまた家族が題材でもあるから見る前は個人的に気が重かったが、
押しつけがましい愛と感動を完全に突き抜けているから気持ちのいい。
マリアンネをはじめとする俳優陣のパワフルかつ微妙に繊細な演技力と
トラブルが連鎖しながらオーガニックなパワーで万事万万歳!に持っていくエンタテインメント作品だ。
監督は『飛ぶ教室』(2003年)で知られるトミー・ヴィガントである。

サブ1

結婚してドイツからカナダに移り住んだ“おばあちゃん”のマルガレーテは
夫を亡くして独り身となったにもかかわらず仲良し娘夫婦二人との同居も老人ホームへの入居も断り、
カトリック信者として人生屈指の“懺悔”を行なうべくローマ法王に会うためにバチカン市国に“強行”。
近場であるイタリアのローマに住む孫娘のマルティナの部屋に転がり込むも、
ロックスターを気取る男と同棲していて淫らな画が描かれている壁を
マルガレーテは“カトリック仕様”にオチャメな“検閲リフォーム”をしてしまう。

それぐらい敬虔な信者のマルガレーテだが、
ローマ法王との大切な集団謁見の場で大失態を演じるも
盲人を装って横入りして法王と早く会おうと試みた男に救われる。
その“詐欺師”の男の甥はローマでバイエルン料理店を運営していたが閑古鳥の状態で、
たまたま店を訪れたマルガレーテは料理のあまりのマズサに逆噴射して厨房に入って自分で料理を作ってしまい、
絶品ゆえにそのままシェフとなって店を救うことになった。

そうはいっても公衆の場でローマ法王に働いてしまったマルガレーテの失礼な行為は
相手が相手だけに世界的なニュースになり、
快活とはいえ年老いているだけに母親を心配した彼女の娘のマリーもローマに急行。
そんな中で孫娘のマルティナはロックスター気取りの恋人の浮気現場に出くわして失意のどん底に落ち、
マルガレーテは娘マリーにカトリック信者としても懺悔すべきショッキングな出生の秘密を明かし、
家族内はカオスのピークに達する。

サブ2

マルガレーテはモーレツおばあちゃんである。
トラブルをすべてエネルギーに転化していくバイタリティで、
考えるより前に即行動の愉快なおばあちゃんである。

マルガレーテはまっすぐな性格なのだが、
実は過去の“罪のつぐない”の裏返しだったりする。
敬虔なカトリック信者である一方で根がイケイケの行動的な“驀進派”ゆえに、
一般道徳以上にカトリックとしては絶対に許されない“過ち”を若い頃に犯す。
若気の至りだからだけでなく厳格なカトリックゆえにゴムも“abortion”も眼中になかったのかもしれないが、
虚栄のための言い分けもエゴに裏打ちされた自己保身もなく正直に生きてきたからこそ、
バチカン教会から“人生最大の御褒美”も届く。

そのスピリットは受け継がれている。
周りでうろちょろして彼女たちを引き立てる男性陣がイイ味を出していることも忘れちゃいけないが、
いくつになっても色恋を含む人間的なラヴ・ロマンスに突き動かされている
母~娘~孫娘の“女三代”の天然パワーがこの映画の動脈なのだ。
計算がなく見返りも求めないシンプルかつストレートな慈しみが三人の間に通った関係だからこそ
育まれたものである。
家族といえば核家族で完結した閉鎖的な“家”を作って親をネグレクトする人間も多いことを思うと、
まぶしい女三代!なのである。

サブ3

軽快な音楽もうるさすぎない挿入でセンス良く、
映画全体のテンポの速さも心地良い。
エッチなスパイスも程よく効いている脚本の妙味と俳優たちが醸し出す旨味もさることながら、
映画の主な舞台となるローマとバチカン市国などの色とりどりの街の景色が目を潤す。
ドイツ~カナダ~イタリア~バチカン市国と渡り歩くマルガレーテおばあちゃんの行動が象徴するように、
“箱庭”の中で甘えている映画や音楽では物足りない人間の“more”の気持ちを満たしてくれる。
ボリュームとスケールが十分なのだ。
といってもビッグ・マックみたいにデカいだけみたいなアメリカ産に多い大味で味気ない作品とは違って、
美味しく風雅な街の光景なのである。
ほとんどが明るい色合いと光源の映像というのも特筆したい。

マルガレーテおばあちゃんが作る料理などの豊かな彩りも見どころ。
彼女の故郷であるドイツのバイエルン料理やドイツの庶民的デザートというカイザーシューマレンなど、
見ているだけでも食ひとつでしあわせになるとあらためて思う。
“匂い”というより“香り”が漂ってくる映画である。

サブ6


ふとんみたいに安心感たっぷりのふっくらな肉体感も武器に、
ドイツ語で“おばあちゃん”を意味する“オマ”という言葉で親しみを込めて呼ばれるマルガレーテ。
愛だの恋だのを抜きにして“詐欺師”の男性と戯れてベスパの後ろに乗って楽しむシーンも微笑ましい。
そう、これは、人生を楽しむ映画なのだ。
たとえどんな境遇になろうとも楽しむ・・・、
そんな素朴なことをヒガミ者にも思い起こせてくれる。

“バチカンで会いましょう”ではなく『バチカンで逢いましょう』という邦題もビッタリ。
“逢う”は恋愛を含めて親しい人と巡り合うことを意味する。
まさにゴールデンウィークにピッタリ、
もちろんそれ以降も永遠にオススメの映画だ。


★映画『バチカンで逢いましょう』
2012年ドイツ映画/カラー/シネマスコープ/ドルビー・デジタル/105分
4月26日(土)より新宿武蔵野館にてGWロードショー。
以降、5/3~名古屋、5/17~大阪、5/24~京都にて他、全国にて順次公開。
© 2012 Sperl Productions GmbH, Arden Film GmbH, SevenPictures Film GmbH.
http://www.cinematravellers.com/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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