なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

OATH『The Oath』

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女性メンバー二人が中心でドイツを拠点にするダークなヘヴィ・メタル・バンド、
The OATHのファースト・アルバム。

これがまたとんでもない傑作である。
場の空気を一瞬にして塗り変えるほどの中毒性の蜜が溢れ出る絶品なのだ。
本作に再録されている昨年のデビュー・シングル「Night Child」「Black Rainbow」を聴いたときの興奮が
何倍もアップする実にグレイトな仕上がりになっている。

CHARLES BRONSONの元ヴォーカルでYOUTH ATTACK Recordsを主宰する
マーク・マッコイ在籍のバンドのDAS OATHも初期はThe OATHと名乗っていたから、
間違えないように注意したい。
それはともかく英国ではリー・ドリアン(元NAPALM DEATHCATHEDRALSEPTIC TANK)主宰の
RISE ABOVE Recordsからのリリース。
さすがリー、手が早い。


ベーシストは本作録音後に脱退しているが、
ドラマーは現在ANGEL WITCHのメンバーでもあるアンドリュー・プレスティッジ。
奥野高久執筆のライナーによればOATHのデビュー・シングルを聴いて気に入り、
彼女たちがドラマーを探しているという話を聞きつけてコンタクトを取ってきたという。
ANGEL WITCHの表現はOATHの肝ど真ん中だから必然の結びつきである。

そのANGEL WITCHをはじめとして、
80年代初頭のNEW WAVE OF BRITISH HEAVY METAL(通称NWOBHM)の中でも
ダークなバンドからの洗礼を特に受けていると思しきサウンドだ。
一回り以上の後追い体験の彼女たちならではのコンパクトに凝縮した方向性も潔いし、
さらにやはり女性ならではのやわらかく麗しくも蠍の毒を秘めたサウンドに身震いを禁じ得ない。
淡く濡れた魔性のサウンドはサイケデリックとすら言える。
フック十分のソングライティングも言うこと無し。
アルペジオのギター・インスト・ナンバーも含めて、
凍りつくほど冷たく彫りの深い叙情性に溜め息が出るばかりだ。

ギタリストのリネア・オルソンはスウェーデンのSONIC RITUALで活動してきたミュージシャンである。
SONIC RITUAL といえばEL ZINE誌のVol.2の表紙&巻頭インタヴューを飾ったバンドで、
ヘヴィ・メタル系のサウンドながら
DS-13やIMPERIAL LEATHERのベーシストも在籍ということで地下パンク・シーンとのつながりも深く、
その筋のファンからも支持されている。
そういう関係性も押さえておくと音楽的な世界観も広がるってものだし、
メタルもパンクも結局はロック!ってことで話はまとまるのである。
クールとしか言いようがないリフを奏でるギターはパンクの粗さとメタルの妖しさを放射し、
妖艶かつ優美ですらある金属質の響きが喉元の裏筋に電撃音を突きつけて致死寸前まで痺れさせる。
生々しいレコーディングの仕上がりも奏功し、
ドゥーミー&グルーミーな光が陰鬱な喜びをたたえて目が覚めるばかりだ。
SONIC RITUAL時代の同朋のヘンリク・パルムも3曲でギター・ソロを弾いている。

ドイツ生まれのヨハナ・サドニスのクールなヴォーカルにもとろけるしかない。
のびやかな歌唱だが、
むろんカラオケで巧いだけみたいなヴォーカルとはまったく次元が異なる。
巧いというより旨いのだ。
とろけそうな味わいの喉は
ヘヴィ・メタル云々以前に一人のシンガーとしてどんな層の音楽ファンの心をも打つほど素晴らしい。
それでいて突き刺すように突き放す。

歌詞は英語で、
シンガーのヨハナが友人関係にあるというジンクス・ドーソンが歌うバンドのCOVENにも通じる
リアルなオカルティズムを感じさせる。
心臓一突きのタイトルである一曲目の「All Must Die」から始まり、
曲と音と共振してどの歌詞も意味深長である。

ていねいにていねいに紡ぎ上げた曲と音であるにもかかわらず、
彼女たちのヴァイブレイションが静かに震え続けている。
それは音楽に対する誠意といっても過言ではない。
むろん身内だけにウケればいいみたいな卑屈なインディ根性ともまったく違う、
世界宇宙に広くあまねく永遠に開かれた音楽なのだ。

早くも今年のベスト・アルバムの一枚確定であり、
今年のブライテスト・ホープ当確である。
ファーストが出たばかりで言うのも心配性すきるし彼女たちに対して失礼かもしれないが、
活動を続けてほしいとこれほど心から願うバンドもそうそうない。
ライヴも観たくなる全力大スイセン盤。


★ジ・オース『ジ・オース』(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10051)CD
日本盤はCATHEDRALのベーシストだったレオ・スミーが参加したDEMONのカヴァー追加の約48分10曲入り
(本編最後の曲から10秒ほどのインターバルでボーナス・トラックが始まる配慮もうれしい)。
DEMONと言えばDISCHARGEとレーベル・メイトだった英国の純正ヘヴィ・メタル・バンドであり、
ここでカヴァーされた曲は81年のファースト『Night Of The Demon』のタイトル曲だが、
そのアルバムの頃のメンバーだったレス・ハントは
DISCHARGEの迷走期のシングル「Ignorance」(85年)にゲストとしてギターを弾いていたという、
これまたメタルとパンクの面白いつながりが見えてくる一曲だ。
CDのオリジナル・ジャケットはシンプルな二つ折りの紙のみだが、
日本盤の六つ折インナーシートには本編の歌詞と和訳付でたいへんありがたい。
3月19日(水)発売。


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コメント

これは勿論、ゲットしましたっ!

ただのヴィンテージ・サウンドとはまた何かが違いますね。

今年一番の渋い作品かと思います!

同じ日に発売のブラジル女性トリオ、ネルヴォサにもビックリした1日でした(^o^)

666さん、書き込みありがとうございます。
オベンキョーして作ったサウンドじゃないってことです。パンクでもハードコアでもそういうのは張り子の虎ですからね。NERVOSA、チェックしてみます。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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