なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TRIPTYKON『Melana Chasmata』

TRIPTYKON『Melana Chasmata』


80年代前半からHELLHAMMER~CELTIC FROSTのフロント・マンとして活躍した
エクストリーム・メタルの“戦士”トム・ガブリエル・ウォリアー(vo、g)が率いる、
スイスのバンドのTRIPTYKON(トリプティコン)による約4年ぶりのセカンド・フル・アルバム。


トム・ガブリエル・ウォリアーといえばすべてのエクストリーム・メタルの祖になった人で、
それはすなわち80年代以降のロックの歴史を変えた一人ということも意味する。
たとえば当時のメンバーが認めているようにNAPALM DEATHの最初の2枚のアルバムは、
CELTIC FROSTのリフを引用しなければ生まれえなかった。

というわけで本作も、
スラッシュ・メタルとデス・メタルとドゥーム・メタルとブラック・メタルの
すべてのエッセンスが鉛色の血のアマルガムとなってマグマの如く流れている。
“本家”の凄味にひれ伏すしかない威風堂々のアルバムなのだ。
メタル云々以前にロック黙示録として、
DOORSやJOY DIVISIONとの意識の接点をも見出せる。

2010年の目下唯一の来日公演で観たときも全身で感じたが、
このアルバムも格が違う。
根本的にセンスが違う。
楽器のひとつひとつの音色が違う。
やはりタダモノじゃない。
貫禄という言葉だけでは済まされない。
特にエキセントリックなことをやっているわけではない。
こういう系統の音楽としてはある意味ベーシックとも言えるが、
そのすべてを収斂しているからこそのオリジナリティが鈍く永遠に輝く。
こういう作品に向き合うと子供だましのトリッキーな手口の音楽は底が見えてますます聴けなくなる。
表現に向かう必然性に突き動かされたもののリアリティにたじろぐ。
一音一声に霊魂を込めている響きに視界が明るくなっていく

トムのカリスマ性が際立つバンドだが、
必ずしもワンマン・バンドではない。
レコーディング面でのリーダーと思しきV.サンチューラ(g、vo)をはじめとして、
ほとんどの曲の作曲のクレジットにはファーストから不変の4人のメンバー全員の名が記されている。
大半のパートがミディアム~スロー・テンポで
じっくりとじっくりと責め抜き攻め抜く。
決して単調にならず、
言うまでもなく商業性とは無縁の音楽にもかかわらずフック十分の曲ばかりだ。
オリジネイターがエクストリーム・メタルの鉱脈をさらに掘り起こして輝かせている。
まったく退屈させない残酷なリフと慈しみのフレーズと鼓動のリズム、
そして戦慄の叙情性。
ベーシストのものと思しき女声のバッキング・ヴォーカルも効果的なラスト・ナンバーでは、
たおやかな表情もたたえている。
骨身に響く音と共振した骨身に染みる歌心にはとろけるしかない。

全体的にはドゥーム・メタルに近いテンポのアルバムながら、
ドゥームを完全に凌駕し超越し突き抜けている。
ゴス(ゴシック・メタル)と呼ばれかねないムードも漂うが、
ヴェーカルをはじめとして似て非なるものだ。
一切芝居がかかってない。
すべてがナマだ。

ヴォーカルも“生”そのものである。
デス・ヴォイスも米国産メタル・コア以降のシャウトも無にする。
単細胞のヴォーカルも幼稚なヴォーカルもすべて無にする。
リー・ドリアンがCATHEDRAL時代に披露したヴォーカリゼイションがトムのパンク解釈ということも、
このアルバムでよくわかる。

歌詞は英語で現実世界を見据えた暗喩に富む内容だが、
啓示的ですらある。
BURRN!誌の最新6月号のインタヴューでトムが言及していたウクライナとロシアの間の現況みたいに、
世界は反体制だの反権力だのの問題では事が済まない。
ゆえに人間そのものを深々と掘り下げて向き合ったこのアルバムの凄味に圧倒される。

むろん精神的に瀕死の残虐性をはらんでもいるが、
だからこそ死に至るほどデリケイトになることもできる。
グルーミーなパワーが横溢しているからこそ全身で浴びていると自分が開かれて解き放たれていく至福の響き。

これぞまさにグレイト。


★TRIPTYKON『Melana Chasmata』(CENTURY MEDIA 9120-2)CD
約68分9曲入り。
曲ごとのセルフ・ライナーと歌詞が載った32ページのブックレット封入で、
ジャケット画はむろんCELTIC FROSTの『To Mega Therion,』(85年)も手掛けた同じくスイスのH.R.ギーガーだ。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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