なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Lou Reed『Thinking Of Another Place』

Lou Reed『Thinking Of Another Place』


またまた出たルー・リードのセミ・オフィシャル・リリースの“灰色盤”。
当時リリースしたばかりの『Rock And Roll Heart』ツアーの序盤と思しき
76年10月23日の米国オハイオ州におけるライヴを収めた2枚組CDで、
ディスク1は約72分12曲入り、
ディスク2は約64分11曲入りである。


『Rock And Roll Heart』収録曲の半数を披露しつつヴァラエティに富む。
ただしこの時期のルーのステージはVELVET UNDERGROUND時代に発表した曲は控えめで、
この日も「Sweet Jane」「I’m Waiting For The Man」「Heroin」のみだ。
『Metal Machine Music』(75年)を別にすればソロで発表した曲はバランスよくやっている。
『Coney Island Baby』(75年)の曲も4曲で多く、
『Lou Reed 』(72年)~『Transformer 』(72年)~『Berlin』(73年)~『Sally Can't Dance』(74年)という
ソロ最初の4作の曲を1~3曲ずつ披露している。

メンバーのクレジットは無しだが、
マイケル・フォンファラ(kbd)中心の80年頃までルーを支えるメンバーでの演奏と思われる。
というわけでジャケット写真のイメージとは裏腹にギターの比重は低く、
『Live In Italy』ではメタリック・ヘヴィ・ロック・ヴァージョンで圧倒する「Kill Your Son」も、
キーボード主導のこのライヴ・パフォーマンスではゆったりしている。

サックスとベースがリードするジャム・セッション風のオープニング・チューンは、
ラップみたいな声が遠くから聞こえてくるとはいえ10分近くほぼインストで幕を開ける。
「I’m Waiting For The Man」はSLY & The FAMILY STONEみたいだし、
「Oh, Jim」も『Berlin』のヴァージョンとはまったく違うR&B体温高めのプレイだが、
全体的にはジャズ/ファンク・アレンジ一色ではない。
ブラック・ミュージック的な演奏のふくらませ方のパフォーマンスながら、
まったりした歌もののポップ・テイストも目立つ。
ルーの歌声は必ずしも熱くはない。

デリケイトゆえに周りの人間の影響を受けて作品やパフォーマンスに影響するルー。
“ボーイフレンド”のレイチェルとの蜜月が微妙な時期ゆえか、
90年代以降の“剛腕”のルーではない。
あまりエレクトリック・ギターと共振せず感電してないためヴォーカルもたいへん温和である。
でもだからこそラストの「Heroin」は終盤まで加速しないトロトロのヴァージョンで
現物をヤったことないから妄想だがヘロインでとろけていくみたいなルーの歌声が怖いほど蠱惑的。
その時その時の精神状態をナマでスケッチするルーのライヴの真骨頂だ。

ルーの歴史の中であまり言及されない時期だし、
ルー自身も80年代以降はこの時代のアルバムの曲をほぼ封印するし、
ここでやった曲のほとんども80年代後半のルーのセットリストから外れる。
どんどんどんどん曲が増えていくのだから当然だが、
ルーのギターでリードする曲が少ないからというのもある。
うなりを上げるエレクトリック・ギターでぐいぐい押すルーが好きなぼくもずっと苦手な時期だった。
けど今だからこそ、
おのれのエレキより鍵盤楽器とハーモニーを取るルーの“ソウル・ロックンロール・ミュージック”を味わいたい。

適度な歓声の挿入で臨場感も良し、
音質極上だ。


★Lou Reed『Thinking Of Another Place』(EASY ACTION EARS021)2CD
8ページのブックレット封入。
二つ折り紙ジャケット仕様で、
CDはそこに直接ぶっこみでなく厚手の紙のインナーバッグに各々収納されている。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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