なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『リアリティのダンス』

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SLEEPが『Sleep’s Holy Mountain』を作る際に触発された映画『ホーリー・マウンテン』(73年)が代表作の、
奇才アレハンドロ・ホドロフスキー監督・脚本による23年ぶりの新作。

エクストリームなサービス精神旺盛のトゥー・マッチな健在ぶりを示す自伝的な怪作であり、
例によってカオティックながら予期せぬ感動作である。
いわゆるイケイケの元気いっぱいの映画とは違うのだが、
まさに映画そのものが“ダンス”している躍動感いっぱいで、
映画自体がさりげなく踊っているし躍っている
つにも増して書き切れないほどのネタの宝庫の映画だが、
トリッキーな仕掛けに頼っているわけではない。
にもかかわらず次に何が起こるかわからない。
だからホント目が離せない。

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同名の自伝本の映画化である。
南米チリ時代の自身の幼少期代が素材になり、
監督自らも子供の頃の自分を見守る“隠者”みたいな役で登場して示唆に富むナレーションを行なっている。

だが自伝映画とは言い切れない。
まず物語はホドロフスキーの小学生ぐらいの時期のみだ。
何よりどこまで事実なのかはホドロフスキー以外に知るよしもない。
試写会でいただいた本作のプレス用の資料に載っている本人のインタヴューで、
「物語に関しては、
わたしの母がオペラ歌手になりたがっていたこと、
父が共産主義者だったことは本当だ」
と言っているから多少の脚色とデフォルメはありそうだ。
小説の映画化の際の肉付けやデコレートみたいなものは想像できるし、
それもまた映画ってもんである。

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ホドロフスキー一家は目下混沌の真っただ中のウクライナから移住してきたがゆえに、
チリでは“ガイジン(≒よそ者)”と見なされることも多かったようだが、
両親はそれを強みに頑張ったようである。
だがホドロフスキー自身は女性的な性格とルックスも手伝って学校の内外でイジメに遭い、
それを察したのか父親は“オカマな姿勢”を正すべく男らしく!ということを叩き込む。
くすぐり、ビンタ、麻酔無しの歯科治療などでの、
馬鹿馬鹿しく過激なやり方で手を変え品を変えて父親は小学生の頃と思しき息子ホドロフスキーを仕込む。
以上が序盤である。

自伝映画というよりは両親をキーワードに家族をテーマにした映画と言える。
ホドロスキーの父親役と
ホドロフスキー少年に瞑想を教える行者役と
ホドロフスキーの父親の政治活動にまとわりつくアナーキスト役(+音楽も担当)を
ホドロフスキーの息子たちが演じ、
ホドロフスキーの奥さんが衣装デザインを担当したのも象徴的だ。

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さらにプレス用の資料の中で
「わたしは映画のなかで、両親のファンタズムを叶えてあげたんだよ」と言っているように、
ホドロフスキーのフィルターを通して両親に焦点を当てた映画である。
元ソプラノ歌手の母親はソプラノ・ヴォイスのオペラ調でいちいち会話し、
最初は笑っていられるが、しつこくてこっちが笑い疲れるほどクレイジーに歌いしゃべり、
彼女が話すシーンは突如ミュージカルに変身する。
さらに父親にはもっと高くウェイトが置かれた脚本になっており、
そもそも中盤以降はホドロフスキーより父親がクローズアップされていて主人公だ。
ホドロフスキーにとって父親がいかに重要な存在だったかも伝わってくる。

父親はホドロフスキー少年に対して厳しい態度を取っていたが、
映画『アンダーグラウンド』から迷い込んできたかのような愛すべき“ズッコケ・キャラ”である。
だが「貧しい人を救わねば!」という強固な共産主義者で無神論者。
ソ連のスターリンなどの肖像画も効果的なアイテムになっている映画だが、
大統領の暗殺を試みるなど色々とシリアス&シビアに描きつつ大統領と仲良くなったりする父親の行動は、
当時のチリの独裁体制や政府を風刺しているように映る。

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ホドロフスキー特有の露悪趣味やお下劣テイストも健在である。
政治的なニュアンスの中で必然的な流れとして不具者やフリークスも執拗に登場。
“大きい方”こそ無しだが小便ネタは何度か出てきて“百薬の長の聖水”扱いにもされる。
セックス・シーンも純粋な欲望場面ゆえにそこいらのAV以上に露骨である。
だがそれほどトリッキーなシーンはないにもかかわらずシュールに見えるのが“ホドロフスキー節”。
どんなにエグイ映像でもポップに見えるヴィヴィッドな色彩感覚の映像力も相まって、
全編躁状態に見えるほど熱病を患っているかのように“体温”の高い映画であり、
映像の熱気で出てくる人間が全員繁殖能力が高い絶倫に見える。
やはり“辺境の映画”なのだ。

度がすぎる間抜けな悪ふざけと政治は二律背反であり一心同体に描く。
前半は馬鹿馬鹿しく毒々しく笑えるシーンも多いが、
生死を懸けた父親の奮闘劇がメインになる中盤あたりから悪ノリが減ってくる。
ただしむろん重苦しくならないのがホドロフスキー。
父親譲りのセンスで息子が担当した優雅で洒落たロマンチックな音楽も一役買っている。

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どんなに好きな監督や映画でもDVDを買うことはあまりないが、
ぼくにとってホドロフスキーはDVDボックスを買うほどの人である。
でもここ数年の間ホドロフスキーの過去の名作群がわざとらしく子供っぽく見えてしまっていた。
“デザインしすぎの映画”も思えていた。

でも『リアリティのダンス』はまっすぐだ。
例によって趣向を凝らしまくってはいるが、
露悪趣味やお下劣テイストはホドロフスキーの照れ隠しにも見える。
過剰でお馬鹿な“演出”はシャイゆえに感動から目をそらさせようとするためではないか。
それを幼稚とは言いたくない。

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噴飯ものの味わいの中で愛の物語がアナーキーに描かれる。
「誰かを愛することはその人に幸福になってもらいたいと願うことである」という、
中世イタリアの神学者トマス・アクィナスの言葉を思い出す家族のドラマ。
命懸けで愛されているホドロフスキーにジェラシーすら覚えた。

ラストは過去との送別、決別なのか。

アレハンドロ・ホドロフスキー、ここにあり。


★映画『リアリティのダンス』
2013年/チリ、フランス/130分/スペイン語
7月12日(土)より全国ロードショー。
(C) “LE SOLEIL FILMS” CHILE・“CAMERA ONE” FRANCE 2013
http://www.uplink.co.jp/dance/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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