なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ランニング・オン・エンプティ』

サブ2


うだつの上がらないバンド・マンの男を中心に、
一人の女を取り巻く三角関係、四角関係、五画関係…さらに兄弟や家族の確執も盛り込まれた“青春映画”。
ヤングジャンプやヤングマガジンあたりに掲載の日常的かつ現実離れした漫画みたいなノリだが、
コメディーに見せかけて深刻なスパイスも効いた馬鹿馬鹿しくも“ナマ苦い”映画である。

監督と共同脚本は『まだ楽園』『休暇』を手がけてきた佐向大。
いわゆる商業映画デビュー作とも言える。

ヒデジという名の主役は『リンダリンダリンダ』などの映画やテレビ・ドラマにも多数出演の小林且弥。
ヒデジの恋人のアザミ役はセクシー・アイドル/AV女優としても知られる“みひろ”。
ヒデジの兄の祐一役は『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』にも出演の大西信満。
その三人の“パシリ”になっている後輩の田辺役を『パンドラの匣』に出演の杉山彦々。
兄弟の“両親”とバンド・メンバーのキャストも微妙にユニークである。


ヒデジとアザミは家賃が安そうなアパートに同居しているが、
仕事もせずにダラダラしていて自分に借金を重ねるヒデジに愛想をつかしたアザミは、
祐一と田辺を“共犯者”として連れ込…いや誘い込んで誘拐をデッチあげる。
いわゆる狂言だ。
アジトは祐一が生活しているアパートの一室である。

サブ1

アザミは単にヒデジを振り向かせて目覚めさせたいだけだろうが、
そのことをわかっていながらも祐一と田辺が自分の誘いを断れないことをアザミは知っていて、
ヒデジへの身代金要求の脅迫電話をも掛けさせる。
絵に描いた小悪魔ぶりを発揮しまくり、
絵に描いた以上の“自己チュー”で主役級の中心となり、
アザミはまわりの男を一人残らず虜にして振りまわしまくる。

サブ3

実は祐一+ヒデジの兄弟とアザミは“事情アリ”の家庭で育ち、
3人は“義理の近親相姦関係”の緊張感でピリピリしている。

グータラなズッコケぶりで失笑を誘うヒデジは、
負うべきものがなく悠々自適の“ゆとり200%”のライフ・スタイル。
彼女が誘拐されたという電話もしばし真に受けぬ余裕の精神性は振り込め詐欺や婚活詐欺の敵であり、
天然で世渡りの術を心得ている。
それに対してヒデジの兄の祐一は松葉杖が手放せない体だからこそ、
回復を目指すべく自室で毎日の肉体トレーニングを怠らぬ余裕無きストイックなライフ・スタイルである。

映画が進行していくにつれて兄弟間の様々な“闘争”が見えてくる。
見ていて他人事とは思えなかった。
どこの世界でも様々な面で兄弟間の火花は散り得るし、
家庭環境によっては単なる“個”と“個”の確執で終わらない。
今年9月の週刊現代に掲載の、
<泣くな皇太子~「要領がいい」弟夫婦との闘い>とかいう記事にも納得されられた。

メイン

昼間のシーンは建設現場や工場、
夜は光が鮮烈なコンビナートを背景にしており、
声が聞き取りにくくなるほどの“インダストリアルな音”も効果的である。
舞台は都心近郊と思われるが
東京のパンク/ニューウェイヴ・バンドのLIZARDが70年代に描いたような、
近未来的な趣ながらも生活感が漂う下町の2000年代末のヴァージョンみたいだ。
ヒデジとアザミの二人の関係がまぶしい。

そしてドタバタした終盤は、
追う者、追われる者、みんなみんな走る走る。
映画のタイトルがこの場面でリアリティを増してくるが、
腑に落ちない展開でモヤモヤムズムズしているうちに目を覚まさせる音が響く。
ラストははっきりと映像で描写せず、
見ている人の想像にまかせる一瞬の音で“結論”を示す。
“疾走”がテーマの映画のラストにふさわしすぎる幕切れだが、
そうした過去の映画へのオマージュにも思える結末だ。

監督の出身地で自身のバンドの拠点でもあった横須賀のMISSILESが主題歌「Empty Run」をプレイ。
JET BOYSの曲が使われているのも妙に納得の情けなさも染みた映画である。


●映画「ランニング・オン・エンプティ」
http://roe-movie.com/ 
2010年2月より、池袋シネマ・ロサにてレイトショー。
(C)2009アムモ


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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