WOLD『Postsocial』
2014-06-25

カナダの“ブラック・メタル・ノイズ・ユニット”のWOLDによる約2年半ぶりの6作目。
今回も期待を裏切らぬ強烈作だ。
妥協を許さず突き詰めている。
“post~”という言葉につきまとう薄めた“オシャレ系”は一つ残らず殲滅する。
アルバム・タイトルがハッタリじゃない。
歌詞の“口先”だけで済まさず、
サウンドそのものがますます社会性から逸脱している。
ウソのない音楽の宿命だ。
全世界を敵にまわすかの如きアジテーション・スタイルのヴォーカルはブラック・メタル直系。
この響きに体裁ポーズ一切無しである。
放射状の音の広がりはJOJO広重率いる非常階段のようでもあるが、
殺意で磨き抜いた金属質のギターの音色もブラック・メタルの危険な肝に磨きをかけ、
熱線の如く何もかもじりじりと焼き尽くす。
ブラック・メタルといってもシューゲイザーをヤりすぎて骨まで溶けたやつじゃない。
ノイズといってもサブカルに媚び売ったやつじゃない。
カオティックでありながらあくまでも剛直だ。
84年までのCHAOS U.K.のノイズ感覚と初期SPKのパンク感覚が
引きずり回されているみたいな音の流れで続く中、
ぬくもりのメロディも漏れてくる。
溶鉱炉の中で無数の人間がゴロゴロ転がっているようなビート感のゴツい音も聞こえてきて、
不失者のようにフリー・ジャズを崩したリズム感覚とたゆたうニュアンスも感じられる。
もちろんインプロヴァイズもされた音ながら、
いわゆる即興とは一線を画す。
初期の音源はラジオの混信みたいな雑音もチャーミングだったが、
そういう音に頼らずよりおのれを純化している。
ミニマルなテクスチャーの中に浸ってじっくりと耳を傾けると
11分近くの曲も14分強の曲も楽曲としてしっかり構成されていることがわかる。
歌詞は “star”という言葉がキーワードになっている。
憎悪が軋み上げながら手裏剣(throwing star)となって降り注ぐ。
らせん状の星が転回して発光してきらめき輝く。
ゆっくりと渦巻く誠実な殺意を突き抜けてこの世を生き抜くための極楽浄土のサウンドトラックだ。
緻密な画をはじめとして、
光沢のある紙質を活かしたCDのパッケージのアートワークも言うこと無しである。
これぞまさにグレイト。
★WOLD『Postsocial』(PROFOUND LORE PFL132)CD
4面デジパック仕様の約46分6曲入り。
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コメント
LIFEさん、書き込みありがとうございます。
まさに永久初期衝動です。ヴォーカルにも“ポーズ”がないですし、どこもかしこもギリギリなのに、構成も行き届いていて作品としてしっかり仕上げられていますね。毎度アートワークも謎めいています。
まさに永久初期衝動です。ヴォーカルにも“ポーズ”がないですし、どこもかしこもギリギリなのに、構成も行き届いていて作品としてしっかり仕上げられていますね。毎度アートワークも謎めいています。
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雑音系では、今は、このWOLDしか期待出来ません。
本当に、嘘のない音で、ヴォーカルの気合いもハードコア顔負けですよね。
ぼくも最初から聴いていますが、永遠に初期衝動が続くような気がする恐ろしいユニットです。
情報も少なく、謎な所も、惹きつけます。