なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BURZUM『The Ways Of Yore』

BURZUM『The Ways Of Yore』


ノルウェーのブラック・メタルのカリスマであり、
ブラック・メタルの極端なイメージを決定づけた男性のヴァルグ・ヴィーケネスのソロ・ユニット、
BURZUMの約1年ぶりの新作。

殺人などの犯罪で刑に服して出所した2010年以降、
コンスタントに年に一作のアルバムのリリースを続けている。
大きく分けて2パターンの作品を出してきているが、
今回もバンド形態のいわゆるブラック・メタル・スタイルではなく、
ミニマルな曲の非メタル作品。
とはいえBURZUMお馴染みのアンビエント・アルバムとは一味違い、
終盤に13分強と11分弱のインスト・ナンバーを用意しているとはいえ
過半数の曲に声は入っている。
アコースティックな楽器の響きを大切にしているからフォーク・ミュージック、
あえて言うならチェンバー・ミュージック(ロック)にも近い。
多重録音による独演と思われる。

詠唱、声明(しょうみょう)みたいな歌、語りが静謐な音の上で最期を舞う。
ほとんどの曲名は英語だが、
発せられる言葉はあまり英語に聞こえない。
フランス語っぽい響きにも聞こえる。
ピアノや打楽器などの音も達観した声も穏やかな佇まいにもかかわらず
妖気にも似た念が静かに息をしている。

インターネット上の情報から察するに、
レイシストや民族主義者とは言わないまでも“純正主義者(purism)”的な意識を現在は突き詰めているようだ。
だが表裏がなくて潔い。
そしてあくまでもBURZUMは“個”であり“孤”である。
そしておのれに向き合う。

自分の中の恥ずかしく醜い部分から目をそらさせるべく他者の文句ばかり言っている人間も、
まずは自分の内なる鏡に思い切り頭突っ込んで出血多量で死ぬほど自分自身に向き合えばいい。
免罪符を手に入れるのに必死でリベラルを気取る人間も
自分の中で蠢くレイシズムやセクシズムや“種差別(speciesism)”に向き合ってみれば、
もっとピュアで正直になるだろう。
おのれを顧みて省みなければ先には進めない。

恐ろしいほど美しい音色にもかかわらず
初期HANATARASHIを思わせる殺伐とした香りが立ち込めている。
だがこれはある種の“浄化”の音楽。
死ぬほどこわれそうだ。

BURZUMのアルバムは
調子が悪い時の“精神安定剤”にも成り得るが、
調子が悪い時にさらなる死の淵にも誘う音楽にも成り得る。
この作品も精神衛生上取扱いに注意が必要だ。
精神状態によっては意識の息が詰まる。

たとえ音楽スタイルが“通常”のアルバムとは違っていてもBURZUMはBURZUM。
やっぱり僕にとって音楽は意識に耳を傾けるものだから。

まさに福音(“ふくおん”)。
安らかに眠れる一枚である。


★BURZUM『The Ways Of Yore』(BYELOBOG PRODUCTIONS BYE 012CD)CD
デジパック仕様の約69分13曲入り。


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コメント

ヴァーグまさしくレイシストです

"Black Metal Against Black People"を標榜するSatanic Skinhead Propagandaレーベルのコンピレーションに曲を提供していますし、反ユダヤ的な動機からイスラエルのユダヤ人ミュージシャンに爆弾入りの小包を送っています

そのような事実を知った上でヴァーグをレイシストではないとするのであれば、それはホワイトパワー的な考えの擁護ではないでしょうか

ヴァーグは全体主義と人種主義の信奉者であり、"個"または"孤"として他者や己と向き合う人間とは最もかけ離れていると言えると思います

私は行川さんの文章が好きで雑誌やブログでよく読んでいるのですが、"個"を尊重することを重要とするような内容が多い中、他方でヴァーグの思想を賞賛する態度に矛盾を感じます

YMNさん、書き込みありがとうございます。
以前爆弾入りの小包を送ったなど話は知っていますし(過去にレイシスト的な行動をしてないと思われる書き方でしたから若干言葉を加えて手直しさせていただきました)、彼の思想を賞賛するつもりはないです。今の彼も、他者を“個”として認識しているかも何とも言えないです。ただ今、彼がバンドなどの団体行動をあまりとらず“個(一人)”で“孤(独り)”で自分自身に向き合っている・・・そういうことが感じられたアルバムだと思っています。
僕は自分自身がレイシストではないとは思っていますし、文章中で日本人やアメリカ人といったように極力“●●人”といった言葉を個々の人間に対して使わないのも、特定の人種や民族に所属しているみたいに捉えたくないからです。ただ、種差別も含めて自分の中に何かしらの差別意識はあるだろうなとも思っています。
この音楽が自分の中で響くものがあるということは、僕も彼と共振している部分があるとも思っています。それは思想性ではないにしても、諦観とか虚無とかそういうものかもしれません。
そういう矛盾は自分の中でしっかりと向き合っていかないといけませんね。
あらためて、率直な書き込みに感謝します。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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