なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ジャームス 狂気の秘密』

ジャームス狂気の秘密-B5チラシ表ラフ(09.08.27)


70年代のLAパンクと80年代のハードコアの間をおのれの終末に向かって突き進んだ、
GERMSとそのヴォーカルのダービー・クラッシュの切なくカオティックな生涯を描く2007年の米国映画。

構想から15年、制作期間も10年。
諸々のトラブルで制作は何度も中断したが、
LAパンク/ハードコアの伝説的な映画『ザ・デクライン』を監督したペネロープ・スフィーリスや、
曲を提供したデイヴィッド・ボウイ(サントラ盤にも収録)などの多数のベテランが協力。
初めて買ったパンクのレコードがGERMSという監督/脚本のロジャー・グロスマンの執念と、
ダービー・クラッシュ役のシェーン・ウェストの尽力によって力作に仕上がった。

初期

濃密な5年間を92分間に凝縮したため多少の脚色と演出は行なわれているが、
GERMSのメンバーのパット・スミア(g)、ロナ・ドゥーム(b)、ドン・ボールズ(ds)のアドバイスの下、
史実に基づいたストーリーで綴られる。
物語として提示するのは難しいGERMSのコンセプトやダービー・クラッシュのバックグラウンドも、
過去を振り返るドキュメンタリー映画さながらにメンバーや関係者の役の俳優による談話形式で挿入した。

マニアックなポイントも押さえつつ、
GERMSの予備知識があまりない方でも入っていける作りと言えよう。
伝説を作るために結成したかの如き特異なパンク・バンドのドラマという点でも面白いからだ。
“SEX PISTOLS以上にパンクで史上サイテーのバンド”を目指すべく極端なアティテュードに走り、
メンバーのヒーローであるデイヴィッド・ボウイが70年代に試みていたロックの演劇性を実践しつつ、
誕生から自死までを“映画”のように展開した活動を映像化している。

ダービーの生い立ちの説明からGERMS結成前夜へ。
ロンドン・パンク・バンドの初の米国ツアー中だったDAMNEDとのニアミス、
彼らを前にした偶発的かつムチャなデビュー・ライヴの模様。
真剣に取り組んだレコーディングと混沌のライヴ。
たび重なるクラブ(ライヴ・ハウス)とのトラブルや“ボーイフレンド”との確執、
それとも絶やさぬドラッグの影響なのか判断力が崩壊していったGERMS末期のダービーの迷走。

サークル

SCREAMERSやBAGS、ブラック・ランディ、GO-GO’S、BLACK FLAGといった、
いわゆるニューヨーク・パンクやロンドン・パンクとは一味違うクセのあるバンド/アーティストの姿も、
スパイスを効かせている。
他の地域と違って当時のLAパンク・シーンが、
GERMSのメンバーをはじめとして女性のウエイトも大きかったことや、
ダービーをはじめとしてジェンダーに対してある意味解放的だったことも見えてくる。

やはり狂騒のシーンは多いのだが、
クールな筆致だからこそヒリヒリした感覚があぶり出されている。
まさにGERMSのサウンドそのもののフィーリングだ。
ゆっくりとダービーの空漠感と焦燥感が見えてくるかのような空気に覆われていき、
ゆっくりと最期に向かっていることがわかる。

二人

GERMS役の俳優がみな実際のメンバーの雰囲気をよく出しているのもうれしい。
実のところダービー・クラッシュ役のシェーン・ウェストと、
ロナ・ドゥーム役のビジョウ・フィリップス(Bijou Phillips)は、
音楽の経験も積んでいる役者だ。
シェーンはもともとJONNY WASというバンドをやっており、
フロントマンとして慣らしてきた経験も活かされている。
映画におけるシェーンのパフォーマンスをナマで見て、
パット・スミアらは彼をヴォーカルにしたGERMSでのツアーやレコーディングをやってみたくなったほどだ。
ビジョウの方は、
「California Dreamin’(邦題:夢のカリフォルニア)」の大ヒットで知られる、
MAMAS & The PAPASのジョン・フィリップスの娘。
99年には元MODERN LOVERS~TALKING HEADSのジェリー・ハリソンのプロデュースで、
自らヴォーカルやギターや曲作りをしたソロ・アルバム『I'd Rather Eat Glass』を99年に発表している。

メイン


友情や反目を経た上でステージに立ったラスト・ライヴとその前後の4人の顔が実にいい。
それから4日後のダービー・クラッシュの自殺が、
イカレたファンにジョン・レノンが射殺された前日というロック・ヒストリーの中での象徴的な事実が、
リアリティをもって映し出される。
GERMSのコンセプトの核がボウイであることに加えてレノンとボウイの親密な関係を知ると、
デイヴィッド・ボウイの曲が流れる終盤は万感胸に迫ることだろう。
むろん序盤や途中がダメというわけではないが、
映画は終わり良ければすべて良し!と言いたくなるほど秀逸なラスト・シーンである。


●映画『ジャームス 狂気の秘密』
http://www.us-punkhardcore.jp/germs/
12月5日(土)よりシアターN渋谷にてレイトショー。
12月末より大阪シネ・ヌーヴォXにてイヴニング&レイトショー。

なお、2010年1月20日には日本盤でDVDも発売される。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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