なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DRAGONFORCE『Maximum Overload』

MaximumOverload Cover-600


日本での支持も厚いロンドン出身の“メロディック・スピード・メタル・バンド”が
オリジナル・アルバムとしては約2年ぶりに放った6作目。
ここではCD+DVDの2枚組仕様の日本盤[スペシャル・エディション]中心に紹介する。

個人的にはルックスが
オリジナル・ギタリストの一人である香港出身のハーマン・リ(g)に似ていると誰かから言われて以来
(余談だがDREAM THEATERのベーシストのジョン・マイアングに似ていると言われたこともあり)、
勝手に親しみを抱くバンドではある。
このアルバムも問答無用にヤられる。
理屈なんてどーでもいい。
直観のサウンドがすべてを物語る。
インテリにもスノッブにも頭デッカチにもウンザリだ。
アルバム・タイトルは“最大限度の過負荷”みたいな意味になりそうで、
情報を“ダウンロード”しすぎて頭がパンク状態のニュアンスをジャケットからも感じる。
けどロマンあふれる勇壮な“泣き”のメロディをはじめとして過剰なまでに弾丸の如く装填し積み込み、
圧倒的な疾走感で噴出する明快なサウンドのイメージそのもののタイトルだ。


“メロスピ”という略称で呼ばれるヘヴィ・メタル・スタイルの王道を走るが、
曲によってはツー・ビートの間にブラスト・ビートも絡めている。
実際DRAGONFORCE史上最高のBPMのスピードの曲も含むらしく、
10年近くドラマーを務めたデイヴ・マッキントッシュの置き土産の猛烈なビートが鮮烈だ
(現在は新ドラマーのジー・アンザローネが加入)。
いきなりAT THE GATESを思わせるリズムが聞こえてくるし、
他の曲でも80年代のMETALLICAのスラッシーな曲に通じるパートが多い。
それでもスラッシュ・メタルと呼ばれることがないのは、
これでもか!とばかりに容赦なく左右からメロディの応酬を執拗に繰り広げながら責め、
いや攻めまくって曲をリードする2本のギターがエッジを立たせた音主導ではないからであり、
何よりヴォーカルがメロディアスに歌い上げるからだ。
前作から加入した二代目シンガーのマーク・ハドソンの歌いっぷりの良さも気持ちいい。
わざとらしいポーズなんてこれっぽっちもなく疾走する歌唱なのだ。

これまではサム・トットマン(g)がほとんどの曲を一人で作曲していたが、
今回はフレデリック・レクレルク(b)もほとんどの曲の作曲に関与し、
ほとんどの曲の作曲が二人の共作になっていることは特筆すべきだろう。
そのためかアルバム中で数曲に配置したミディアム~スロー・パートを含む曲も含めて、
パワーとメロディの尋常ならざる凝縮度にたじろぐばかりだ。
アクション系のアニメや戦隊ものの主題歌、
さらに誤解を恐れずに言えば軍歌にも似た盛り上げ方の高揚させる曲の嵐だが、
よく耳を傾ければ“ここはPRIMAL SCREAM(not PRIMAL FEAR)っぽい”とか色々発見もある。
アレンジの密度も濃いのだ。

本編のラストはメロディ・ラインがオリジナル曲とは明らかに違うから他人の曲とすぐわかるが、
50年代からコンスタントに音楽活動を続ける米国の“カントリー・ロックンロール音楽家”である
ジョニー・キャッシュの63年のヒット・シングル・ナンバー「Ring Of Fire」のカヴァー。
SOCIAL DISTORTIONも『Social Distortion』(90年)でカヴァーしていた曲だが、
DRAGONFORCE以外の何ものでもないサウンドの中に渋いメロディが光る。
どの曲もメンバー全員が参加したバッキング・ヴォーカルも冴えわたっているが、
TRIVIUMのリーダーのマシュー・キイチ・ヒーフィーも3曲にバッキング・ヴォーカルで加勢している。
そうそうプロデュースなどの作業にメンバーが関与してないこともDRAGONFORCEにとってはレアで、
プロデュースとミックスを行なったのはイェンス・ボグレン。
OPETHやSOILWORKの諸作を手がけてARCH ENEMYの最新作のミックスをするなど、
DRAGONFORCEの音楽性とは微妙に違うバンドを多く手がけてきた人に託したことも挑戦魂を感じる。
そして果たせるかな!のアルバム仕上がったのである。

曲によって異なるがヴァディム・プラツァノフも含め、
ドラマー以外のメンバー全員が作詞に参加したこともチャレンジだ。
ヘヴィ・メタルの様式美のシンボルともされる“ドラゴン”をバンド名に含めたほどだから
“ファンタジック(空想)”な歌詞が多かったことは彼らも認めているが、
ファンタジックな歌詞だからリアルじゃないなんてことはない。
当為としての“政治ソング”なんて周りに流されて免罪符が欲しいだけの“ウソ”ばかりじゃないか。
そんな流れの中でこのアルバムの歌詞は暗喩に留まらずいわゆるリアリスティックな内容が多い。
しかも自分の身の周りしか見ないエゴイストと違ってしっかりと世界を広く見ている。
音楽でも映画でも文章でも大切なのはどれだけ誠実かである。
まっすぐなこの声と音の響きにウソはない。


限定生産の[スペシャル・エディション]は日本盤はさらに1曲プラスの計6曲のボーナス・トラック入りのCDに加え、
本作のアルバム・メイキングと“ラウドパーク12”での「Cry Thunder」のライヴで構成した
計約25分のDVDも付いている
アルバム・メイキングはキーボード奏者とドラマー以外の4人が同じぐらいの割合で話すトーク中心だが、
むろん日本語字幕付だ。
言うまでもなくボーナス・トラック6曲も捨て曲無しだし、
DVDで語られるアルバム制作秘話では今まで以上にバンドらしい作りになった要因が明かされ、
前作で新シンガー加入してからのバンド内の様子も語られ、
話し方からは各メンバーのキャラも伝わってくるから、
DRAGONFORCEのことをもっと知りたいファンの方には[スペシャル・エディション]をオススメしたい。


思わずハマる痛快作である。


★ドラゴンフォース『マキシマム・オーヴァーロード~スペシャル・エディション~』(ワーナーミュージック・ジャパン WPZR-30584/5)CD+DVD
★同『マキシマム・オーヴァーロード』[通常盤](ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-15817)CD
“スペシャル・エディション”版は三面デジパックの限定盤で、
CDは日本盤のみのボーナス・トラック「Summer’s End」を含む6曲追加の計約77分16曲入り。
通常盤のCDは「Summer’s End」のみ追加の11曲入り。
共に16ページのオリジナル・ブックレットの他に、
日本盤のみ初回生産限定で3Dジャケットが付き(その収納ため通常盤のプラケースは幅が厚め)、
日本盤を購入する人の気持ちをよくわかっている平易かつポイントを押さえた伊藤政則のライナーと、
ボーナス・トラックを含むオリジナル曲すべての歌詞の和訳が付いたブックレットも封入。


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1322-fb804b9b

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (94)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん