なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『駅馬車』(ジョン・フォード監督生誕120年!『駅馬車』『静かなる男』デジタル・リマスター版上映)

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あまりも有名な1939年の西部劇『駅馬車』が、
このたびアイルランド移民の両親を持つアメリカ生まれの監督ジョン・フォード生誕120年記念の一環として、
1952年の『静かなる男』(後日紹介予定)とともにデジタル・リマスター版で上映される。

この作品がきっかけで映画スターに駆け上がった主演のジョン・ウェインや
女性二人を含む種々雑多な10人前後が駅馬車で移動する間の物語で、
むろん珍道中で終わらずにロマンスや死闘と決闘も盛り込まれ、
豪快かつ繊細な喜怒哀楽を99分に濃縮。
奇抜なストーリーに頼らず、
アバウトに見えて緻密な脚本に命を吹き込むチャーミングな登場人物全員の人間の力と
淡い詩情が滲み出る映像の力で持っていく。
今回のリマスタリング版は、
適度に粒子が粗くて陰影が味わい深く
やわらかいタッチで映像が躍動する仕上がりだ。

駅馬車2

心がはずむ馴染みのテーマソングをはじめとして郷愁と哀愁の二重奏の軽快な音楽でも心情が描き出される、
問答無用の娯楽大作である。
ただアメリカの本格的な参線は若干後とはいえ第二次世界大戦開戦の年で、
太平洋戦争開戦(昭和16年)の2年前公開されたことを頭に入れながら見ると、
“そんな時代なこれほど映画が・・・”などなど色々な別の思いが湧いてくる。

アメリカ臭むんむんの映画である。
さんざんストーリーが語られ尽くされている映画とはいえ極力ここでのネタバレは避けたいからぼかすが、
南北戦争や“対インディアン”も絡めている。

駅馬車メイン

ジョン・ウェインと言えば僕は映画よりも、
80年代初頭から活動していてCRASSのレーベルからもデビュー7"EPを出した
米国の政治的なハードコア・パンク・バンドMDCの極初期の曲「John Wayne Was A Nazi」を思う。
ジョン・ウェインが亡くなった頃にバンドが始まったタイミングも手伝い、
彼のタフな右派的アティテュードをネタにしたMDCらしい強硬な歌詞だが、
MDCが嫌悪する“アメリカ的なるもの”の象徴としてジョン・ウェインを歌にしたような内容だ。

『シド&ナンシー』の監督で知られるアレックス・コックスも目下の最新映画『サーチャーズ 2.0』(2007年)で、
『駅馬車』撮影場所のメイン一つになった米国西南部のモニュメント・バレーを素材に取り込み、
ジョン・フォードやジョン・ウェインに対する批評も行なっている。


考え方が違うからといって全面否定するのはつまらないことだ。
そもそも絶対悪が存在するのかどうかもわからない。
何にしても“一理”ある。
この映画の人物たちの大半も正邪混在で描き出されている。
だからこそ人間味たんまりで、
アメリカ臭いというよりあまりにも正直な人間臭い映画なのである。

ジョン・ウェイン個人の政治的なアティテュードは別として、
一人で延々と保守派のトークを繰り広げるとある人物の扱いに
“社会主義的自由主義者”ジョン・フォード監督のスタンスが表われている。
いわばポリティカルなベクトルが逆方向の“二人のジョンのハーモニー”こそが『駅馬車』の肝であり、
あえて“良くも悪くも”という言葉を付け加えさせていただくと
アメリカの不変のはらわたではないか。

駅馬車1

あくまでも“殺らねば殺られる現実”を盛り込みながら当時のアメリカ西部の人間模様を
リアルに描いていく映画だ。
デカい。
スクリーン目いっぱいに広がるダイナミックな映像も何もかもとにかくデカい。
そいつを包容力と言ってもいいだろうし、
なんだかんだ言ってもその包容力こそがアメリカだと感じられる。
DVDなどでの自宅鑑賞では抑え込まれていた魅力が解放されるデカいスクリーンに映える映画だ。

ふるまいも声もカッコよすぎるジョン・ウェインのタイトなファッションをはじめとして、
人物たちの服装も見どころ。
女性たちのエレガントな佇まいもあらためて目に焼きつけたい。


★映画『駅馬車』(ジョン・フォード監督生誕120年!『駅馬車』『静かなる男』デジタル・リマスター版上映)
1939年/モノクロ/99分/デジタル/配給:マーメイドフィルム
9月27日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋にてロードショー、
以降、順次全国でロードショー。
©MCMXXXIX BY WALTER WANGER PRODUCTIONS, INCORPORATED. ALL RIGHTS RESERVED.
http://mermaidfilms.co.jp/johnford/


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コメント

MDC最高!一番好きなバンドです!

こちらの作品や映画監督は全く知らないのですが(>_<)僕もMDCを思い出しました。
Target videoのMDCのliveにジョン・ウェインの映画をコラージュ?した作品。
現在はVHSが無くともyoutubeで永久的にそれが再生され続ける。良いことですねぇ(^^)v

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
ターゲット社のVHSはぼくも借りて見たことありますが、そういうコラージュがあったことは忘れていました。
MDCの音楽には田舎臭いアメリカン・ルーツ・ミュージックも染み込んでいますよね、特に初期は。それでいてジョン・ウェインをターゲットにしているところが、正直で面白いです。おおざっぱに言えばジョン・ウェインはMDC的なUSパンク/ハードコアとは違う、SOCIAL DISTORTIONといわゆるニューヨーク・ハードコアの間の源流にも映ります。
そんなこんなで、この映画は現代にもつながるアメリカのロマンティシズムとリアリズムを凝縮した、正直でグレイトな作品だと思います。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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