なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ジェラシー』

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1948年パリ生まれで、
60年代末から10年ほど公私にわたってニコのパートナーだったことでも知られる映画作家、
フィリップ・ガレル監督の新作。

女優ブリジット・シイとの間に1983年に生まれた自分の息子のルイ・ガレルが主演で
自分の父親の実話を元にガレル自身も脚本に噛み、
子供も巻き込んだ絶妙の“ロマンス”を繰り広げ、
スクリーンから鼻にゆっくりと入ってくるフランス臭に催淫されていく佳作である。
念のため同名の邦題の映画が他にもいくつか存在するから間違いないように。

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舞台俳優のルイ(ルイ・ガレル)は家庭を持っているが、
妻(レベッカ・コンヴェナン)と小学校低学年ぐらいの娘(オルガ・ミシュタン)との家を離れ、
“同業者”のクローディア(アナ・ムクラリス)と生活を共にするようになる。
だがルイは妻や娘と関係を断っているわけでもなく、
そのことをわかっている恋人のクローディアは“ジェラシー”を抱く。
クローディアは生業として俳優の仕事が上手くいかずに生活の不安も抱く中、
「貧乏でも貧相なのは嫌!」と新しい扉を開く仕事をもらった建築家と親しくなり、
今度はルイが“ジェラシー”を抱く。
そんな流れの中で自己嫌悪に陥ったかのようにルイは突発的な“ある行動”に出る。

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現大統領のオランドや前大統領のサルコジをはじめとして、
国家のトップが先頭を切って半ば堂々と不倫をするお国柄のフランスならではの作品だ。
不倫しようが誰も不幸になってないどころか、
みんなしあわせ。
人間関係の妙味を楽しめる映画でもある。

もちろん自然な感情として“ジェラシー”の炎が燃え上がるが、
その燃え上り方はみんなあくまでもクールである。
いや燃え上がるというより、
試写会の時にいただいた紙資料に書かれていた“嫉妬の炎がともり始める”という表現がぴったりだ。
それをフランス的と言うのは安易だが、
家族も含めて“集団”に頼らずに“個の大人”としての責任を持って行動している。
ネタバレを避けるべく詳しくは書かないが、
ルイの奥さんの包容力も大きい。

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さながら“ジェラシー合戦”だが、
父親を思うあまりにその恋人と自分の母親への“ジェラシー”がかわいく燃え上がっているルイの娘がイイ。
ほのぼのスパイスを一面に効かせている。
まさに“子はかすがい”そのままの“ロール・モデル”を演じ、
助演女優賞ものではないか。
洒落た音楽が寄り添う優雅なこの映画にふさわしくない表現をあえて使わせていただくと、
無邪気ながら“マセガキ”と言いたくなるこの子の発言の数々にいちいち笑いを抑えるのは難儀であり、
ルイの娘は“裏主人公”とすら言える。
そりゃそうだ。
自分の父親が主役のモデルということで
この映画の中の娘さんはガレルの分身なのだから。

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30才頃の自分の父親がモデルの映画らしいが、
父親の素行や感情のすべてを幼少時代のガレルが把握しているわけはないのだから
多少なりとも脚色があるはずだ。
事故死を受けて作ったオマージュ映画『ギターはもう聞こえない』(1991年)だけでなく、
他の映画もニコとの生活から多少なりとも触発されたものが染みこんでいると思われるが、
『ジェラシー』の人間関係や行動様式や心理描写にもガレルがニコとの日々を投影していると僕は深読みもした。
「俺と同じく、親父もこうだったかも」とガレルがダブらせさようにも映るのだ。
血は争えずってやつである。

ガレルはこの映画で“ファミリー”を織り込んでいる。
主演のルイだけでなく、
ルイの妹役に自分の娘を配し、
現在の自分の奥さんを脚本家の一人にしている。
その“ファミリー”の中にニコも“透かし絵”みたいに刷り込まれているようにも見えるのだ。

ジェラシー1

奥さんを含む4人の脚本をミックスした作りも90年代以降のガレルならでは。
ひとつひとつのシーンが断続的に見えてしっかりと映画の命がつながっている。
ニートな雰囲気の映画が内外問わず多いが、
この映画はそう見えて苦い。
甘ったれた“ゆとり”で終わらずに奥が苦い。
陰影に富むマイルドない味わいのモノクロ映像そのものがbitter & sweetである。
一人一人の人物を押しと引きが見事なカメラが静かにじっと見守っている。
一人一人のカジュアルなファッションもさりげなくお洒落だ。

エンドロールのテロップで流れる
元Téléphoneのジャン=ルイ・オベールの歌(その部分も日本語字幕付)がメッセージとも解釈できるが、
そこ以外はエスプリの効いた会話を含めて大きなお世話の“余計な説明”は無し。
そういうところも“わたしはわたし、あなたはあなた”のイメージのフランスらしい。

初秋にふさわしく心地よい風がそよぐ映画である。
“秋風”が吹くことであったかくなることもほのめかしてくれる。
ゴリ押しなだけではダメなのだ。
と同時に
「全力で生きるには待ってちゃダメ」。
自戒の言葉にしたい。


★映画『ジェラシー』
2013年/フランス/77分/B&W/配給:boid、ビターズエンド
9月27日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラム他、全国順次ロードショー。
© 2013 Guy Ferrandis / SBS Productions
http://www.jalousie2014.com/


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コメント

こんにちは.

家族を扱っても個人主義がきっちり出てしまう.
フランス映画のある側面がよくわかりました.

自分はフィリップ・ガレルやフランソワ・オゾン,
ギャスパー・ノエなんかが大の苦手です.
反面,エリック・ゾンカ,ブリュノ・デュモン,
ギヨーム・ブラックがとても好きなのです.

すっぱりと好悪わけるような,鮮烈な印象を
ガレルの映画には感じました.全部は観てないですけど…

それでは!

ss2gさん、書き込みありがとうございます。
大げさに言えばこの映画からも個人の尊重みたいなものが感じられます。それが子供に表れているかなと。
音楽でも何でもそうですが好き嫌いがはっきり分かれるものに面白いものが多い気がします。本文で書きましたがフランスの匂いが充満していますからその類かもしれませんが、ストーリーはわかりやすく、深刻過ぎず楽しくもあります。そう、映画でも音楽でも匂いがする作品が濃くて好きですし、匂いは大切とも思っています。
ss2gさんのコメントを参考に僕ももっと色々な映画を観ていきたいてす。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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