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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DVD『クラス:ゼア・イズ・ノー・オーソリティ・バット・ユアセルフ』

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今年の春から夏にかけて日本でも上映された英国のパンク・バンドのCRASSの映画のDVD。
映画のオフィシャル・サイトやこのブログに書いたCRASSのプロフィール映画の解説が裏面に載った
味のある厚手の紙の六つ折りミニ・ポスター封入で発売されている。

オリジナル日本語字幕を作成していただいた方の言葉を尊重しつつ
映画上映前に実は僕も日本語字幕に手を加える作業をさせてもらったが、
場面がすぐ次々と移り変わる映画というメディアの性格上、
パッと見てわかりやすくするために直訳でなく簡潔な“意訳”そのままにした部分も多い。
たとえば前半でジー・ヴァウチャーが
CRASSが登場する直前の70年代後半のパンク・ムーヴメントに対して述べる部分で
“刹那的”という日本語字幕が出るが、
実際は「no future」と言っている。
これはやはりSEX PISTOLSの「God Save The Queen」の歌詞に引っかけているのだろう。
もちろん部屋での鑑賞はスクリーンで観るダイナミズムには欠けるが、
そういう言葉の微妙なニュアンスがDVDだと“巻き戻し作業”などを使ってじっくり楽しめる。

今回の上映が決まって映画配給会社の方にDVD-Rでもらってからもう何度も観たが、
観るたびにいまだ触発される。
言葉もさることながら、
CRASSの拠点だったダイヤル・ハウスの“大庭園”の鮮やかな緑や室内の侘び寂びの色をはじめとして、
映像そのものの魅力も大きい。
日本の『宝島』誌やファンジン『反核通信100 club』に載ったCRASS末期のインタヴューでは、
回答者としてのメンバー個々の名前を伏せさせてどの回答も“バンドの発言”というようにさせていたほど、
CRASS存続中は
individuality(≒個性)を大切にしつつメンバー一人一人のpersonality(≒人格)を打ち出さなかったが、
メンバーの個性と人格が見えてくる作りもうれしいのであった。

本編64分でDVDには劇場予告編とPV「You’re Already Dead」の計6分の特典映像が追加されている。
劇場予告編には“CLASHへのアンサー・ソング”「White Punks On Hope」が使われ、
本編オープニングで流れてくるヴァージョンより長めで歌詞とその日本語字幕表示も同様の長さになっている。
一方「You’re Already Dead」のPVは今回の映画のシーン中心の映像等を用いた新規制作のものだが、
これまた歌詞が表示されてその日本語字幕入りである。
曲が早くて言葉数が多いし目で字幕を追える文字の量には限界があるから日本語字幕は一種の“抄訳”だが、
それでも音と一緒にリアル・タイムで意味が頭に飛びこんでくると曲のインパクトが強まってありがたい。


★DVD『クラス:ゼア・イズ・ノー・オーソリティ・バット・ユアセルフ』(キュリオスコープ PCBE-53981)
スリップ・ケース付。


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コメント

勿論、17日?に購入しました!
60分ぐらいでしたが、内容が濃く少しでもCRASSの姿勢が理解出来た気がします。
また、字幕って所が更に新しいCRASS信者を作りそうです。

極悪レミーに匹敵しそうな、ドキュメンタリー作品かと思います!

行川さんのライナーもじっくりと観賞して、背を向けてポスターを貼ってしまいました。。。(笑)

祝DVD発売記念

待ってました!映画館では曲の日本語字幕を読むのに追いつかなかった所もあるのでDVDでゆっくり観賞したいと思います。

あとは、CRASSの国内盤CDが出ると嬉しいですね。

書き込みありがとうございます。
>666さん
ドキュメンタリー映画もなかなかグレイトな作品に出合わないのですが(批判的な長文を書くのはかなりのエネルギーが必要で疲れるのでブログではほとんど扱いませんが、関係者の方から意見を求められたら率直に感想を言っています)、確かに『極悪レミー』と並べて語るのもいい作品ですね。
紙質のためか印刷の色合いも渋いので、封入ポスターは室内で映えると思います。
>余分三兄弟さん
どんな映画でも言葉が聞き取れない言語の映画は字幕に頼らざるを得ないわけですが、字幕を追っていると映像の方の大切な要素を見落としがちにもなりますから、DVDというメディアのメリットも活かしたいです。
日本プレスは無理でも“Crassical Collection”のシリーズをブックレットの和訳付の日本仕様版で出すことには期待したいですね。以前そのリリース元のサザン・レコードも前向きという話も聞きました。あと、数年前にサザン・レコードにメールしたら「ジーのアートワークに時間がかかってるがもうすぐ出る」と返事が来た、『Best Before』の新装版もそろそろお願いしたいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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