なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ELECTRIC WIZARD『Time To Die』

ELECTRIC WIZARD time To Die20141009100405


英国の“真性”ドゥーム・メタル・バンドによる約4年ぶりの8作目。
これは起死回生の一枚!と言い切りたい。

95年のデビュー作以来ずっとアルバムを出してきた
リー・ドリアン(元CATHEDRAL)主宰のRISE ABOVE Recordsから遂に離れ、
新レーベルからのリリースである。
わりと最近RISE ABOVEに対するELECTRIC WIZARDの皮肉っぽい発言も目にしたが、
ともあれ心機一転だったのであろう。
ドゥーム・メタルの重鎮にふさわしい聴き応えであり、
真打ちならではのプライドが炸裂して久々にイカレている。
ベースはサポート・メンバーでドラマーも前作『Black Masses』とは違うが問題ない。
現在唯一のオリジナル・メンバーであり今回一人でプロデュースしたジャス・オボーン(vo、g)の世界観が
適宜SEも絡めた混沌の音と言葉に容赦なく刻まれている。


1曲目から10分半を越える長尺ナンバーで裸のラリーズを思わせるミニマルな曲だ。
さすがに殺傷力に関しては水谷孝のギターに及ばないが、
邪悪なヘヴィネスは十分に上まわっているし、
素晴らしく音が汚くて酩酊感をギター・アンプの如くamplifier(増幅)させるのだ。
吹っ切れたかのように混沌の音がぐるぐるぐるぐるまわり続ける渦に覆われている。
WOLDみたいなのとも違うし初期のアルバムよりもしっかりしたソングライティングとはいえ、
2曲目以降の曲もドラマチックな仕掛けでメタル・ファンに媚びを売るなんてしやしない。
最長11分半で全9曲中6曲が7分以上という
偏執狂なほど中低音域に固めて重度の病に侵されて歪んだ悠々泰然のウルトラ・ヘヴィ・チューンが、
正義を掲げて欺瞞で肥えた人間の膿の津波と洪水の如く押し寄せて全身を飲み込み、
呆然自失に昇天させる。
4作目『Let Us Prey』(2002年)まで在籍したオリジナル・ドラマーが一時復帰して叩いたのも大きい。

ドゥーム“メタル”を標榜する多くのバンドも少なからず施すメタル特有の整然とした音作りとは対極で、
やたらと規則にうるさい潔癖症のメロディック“メタル”のファンが殺意を抱くこと必至のサウンドだ。
そんな連中を屁とも思わぬ不敵不遜な輝きの喉を震わせる冷めて醒めたヴォーカルは、
歌い方は違えどオジー・オズボーンとジョニー・ロットン(SEX PISTOLS~PiL)がまぐわったかの如し。
奇妙な躁状態をキープしたシニカル・テイストが音の中でウィルスとなって肥大化し、
“エボラとデング”のしあわせなファックのように熱を帯びてゆっくりと襲いかかってとろけさす。

オギョーギのいい音の“不良気取りの善人パンク”よりよっぽどパンクってことは
不穏極まり無きこの音像のすべてが物語る。
能書き後回しでまずは音ですべてを語れ。
音は正直である。
五体満足から程遠くてずーっとかったるそうな遅ぉーいサウンドながらずーっと覚醒させる。
だがやる気はばっちりである。
妖気を帯びた命のグルーヴとコズミックな律動に貫かれている。
ドゥーム街道をひたすら落ちていくバンドだが、
ELECTRIC WIZARDは暗黒でもない。
底無し沼の天国の中で溺れずに嘲け笑い飛ばしながら生き延びる。
親の愛も知らず子の顔も見られない精子のような音も電気クラゲみたいにそこいら中を浮き泳いでいる。
実にたくましい。

アートワークも歌詞も露悪趣味ギリギリである。
「Incense for the Damned」「Time to Die」「I am Nothing」「Destroy Those Who Love God」「Funeral of Your Mind」
「We Love the Dead」「SadioWitch」「Lucifer's Slaves」「Saturn Dethroned」
といった具合に曲名も虚無なネガティヴ・メンタル・アティテュード全開でたのもしい。
免罪符の腐臭漂う世の善意が流れ落ちる泥沼地獄の音に
“ファック・ユー!”の歌心がこだまする歌詞もフィット。
前半と後半の最後に配置した2曲のインスト・ナンバーをはじめとして、
死にたくなるたそがれの調べだからこそ逆に生きられる。
重篤の希望の業火が命の淵を綱渡る。

朦朧としながら気が滅入って棺桶に首を突っ込むか、
止むことのないエクスタシーの快楽地獄に堕ちるか、
すべては自己責任。

まさにグレイト。


★ELECTRIC WIZARD『Time To Die』(SPINEFARM SPINE788079)CD
小さな文字ながら歌詞が載った8ページのブックレット封入。
約66分9曲入り。


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コメント

初めまして。いつも色々参考にさせてもらっています。
ドゥームって苦手意識があったから敬遠していたんですけど、今回の文章を読んで気になったからチェックしてみたら、ドゥームっていうよりはHawkwind辺りのサイケに通じるものを感じて思ったよりすんなり聴けました。その辺りのリスナーにもアピールし得る可能性を感じますね。

EGさん、書き込みありがとうございます。
HAWKWINDは思い浮かばなかったですが、確かに! ミニマルでサイケでパンクでハード・ロックなところで通じますね。ブリティッシュのアウトローなサウンドのロックですし、ドゥームとはいえ意外と妙に躁状態という点でもHAWKWIND周辺に近い香りがします。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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