なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DARKEST HOUR『Darkest Hour』

darkest hour


米国ワシントンDC出身の“メロディック・メタル・ハードコア・バンド”の8作目

前作『The Human Romance』(2011年)リリース後にベーシストとドラマーが変わっている。
特に前ドラマーの超絶的な演奏は、
2000年のアルバム・デビュー以来DARKEST HOURの緻密なリズムの核だっただけに
影響は少なくない。

AT THE GATESをハードコアにスピードアップさせたような音楽性が基本ではあるが、
前作からのこの約3年半の間は、
現メンバーでの体制を固めるとともに、
“こういう方向性”をDARKEST HOURに馴染ませるための“習熟の時間”だったようにも思える。
何年も活動を続けてきて今あえてアルバムにセルフ・タイトルを付けたことで、
DREAM THEATERのように仕切り直しの意識も感じる。


最初に聴いて困惑して一か月ほど寝かせてまた何度も聴いてみた。
悪くはないが・・・という印象は今のところあまり変わってない。


DARKEST HOUR独自の“高速メロディック・メタル・ハードコア”路線の曲をちりばめつつ、
キャッチーとも言えるメロウなパートがかなり導入されている。
2000年代以降の米国産のいわゆるメタルコアを思い出す曲もあるし、
ここ何年かのIN FLAMESのように聞こえる曲も含まれている。
合唱できるようなサビを設けている曲も多く、
2000年代以降のメイン・ストリームのヘヴィ系ロック・バンドみたいなポピュラーなフックも目立つ。

ドラマーが変わったとはいえ従来のスタイルの曲が依然としてクールなだけにギャップが大きい。
音はシャープで気持ちいいから何度でも聴けるが、
イマイチ釈然としない思いも湧いてきてしまう。
繰り返し聴いていると“こういうのもありかも・・・”と思えなくもない。
冷静に耳を傾けるとソングライティングの広がりは特筆してもいいのかもしれない。
幅広い意味でのポピュラー・ミュージックとしては好作品とも言える。

けどそういう部分も平均的すぎないか。
曲はともかくヴォーカルの感情が振り切れてない。
もったいない、とすら思ってしまう。

DARKEST HOURのシンガーのジョン・ヘンリーは、
EARTH CRISISのカール・ブシュナーやVISION OF DISORDERのティム・ウィリアムズと共に、
僕にとってはメタル・ハードコア・ヴォーカルの御三家である。
みんな明らかに本気の声だ。

痛みを感じさせる喉を震わせるジョンのスクリームのヴォーカルは本作でも、
米国産メタルコアやスクリーモ以降のそこいらのハードコア・スタイルの単細胞ヴォーカルとはまったくの別次元で、
生々しい。
なのだがメロディアスに歌うパートが
米国産メタルコアやスクリーモによくある一般的ポピュラー・ソングのサビみたいな感じで、
えらくフツーに聞こえてしまうのだ。

歌の題材が広がったのも影響したのかラヴソングと思われるまったりした曲だと特に目立つ。
まろやかな歌声に耳を傾けると悪くないと思えなくもないし、
メロディアスに歌うパートも不自然ではない。
ゲストの女性ヴォーカル(DRÆMINGSの人)と絡むのもストリングスを挿入するのもありだが、
スクリームのパートと違って訴求力の落差が大きいのだ。
様々な音楽で明らかなようにメロディアスな歌唱でも生々しく成り得る。
問題作とされたとはいえVISION OF DISORDERの『From Bliss To Devastation』(2001年)における
ティムのヴォーカルは依然として息が荒々しかった。

たとえるならば、
DILLINGER ESCAPE PLANがメロディアスな歌パートを導入して必ずしもあまり上手くいってなく、
その部分が凡庸に聞こえてしまっているのと同じようなものを本作に感じてしまう。
いやDILLINGER ESCAPE PLANよりDARKEST HOURのスクリームはずっとナマだし、
DARKEST HOURが“得意とする”苛烈な高速パートが個性的で他のバンドより突出して強力であればあるほど、
メロディアスな歌部分が没個性に聞こえてしまう。
取って付けたとは言わないし、それなりに馴染んではいるのだが、
これまでのDARKEST HOURの流れからすると歌パートが浮いているように思える。

“慣れ”が必要なのかもしれないとも感じる。
DARKEST HOURの場でメロディアスに歌うことに慣れておらず、
しかもアルバムのレコーディングということで妙に硬くなってしまったのではとも邪推したくなる。
プロデューサーの意見も左右したのかもしれない。

一種のチャレンジとも言える。
けど高速チューンに留まっていようが必ずしも守りになるわけではない。
もっと加速して突き抜けてほしいという気持ちもある。
曲の速さ関係なく“つんのめる思い”のサウンドがDARKEST HOURの核ではないかと、
聴けば聴くほど痛感する一枚。


★DARKEST HOUR『Darkest Hour』(SUMERIAN SUM499)CD
1ページ1曲で歌詞が載った20ページのブックレット封入で、
僕が買ったCDにはジャケットとリリース・レーベルのロゴのステッカーが付いていた。
約50分13曲入り。


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コメント

少し前に購入して以来よく聴いてますが、個人的にはジョンのメロディアスな歌唱はアリじゃないかな、と思ってます。
ただその反面、「こういう曲は他のバンドでも演れるだろ」と言われればそれを否定できませんね。
溢れ出る狂気をきっちり隠して淡々とメロディを歌っているというか、不穏な空気がまろび出るのを無理矢理抑制しているような、そういう「事なかれ主義」は感じ取れますね。

Korokuさん、書き込みありがとうございます。
ポイントを押さえた上手い言い方ですね。僕もそんな感じの両方解釈です。
フツーのメロディアスな曲を崩さずに歌っても訴求力のあるシンガーは色々なジャンルでたくさんいるわけですが、このアルバムだといわゆるメロディック系メタルみたいなバンドのシンガーみたいというか、巧いんだけどあまり伝わってくるものが今のところ僕にはないのです。いわゆる日本のメジャーな歌い手にもいっぱいいますけどね。メッセージ・ソング歌ってても気持ちが入ってないという感じのも根は同じです。単に輪郭をなぞる以上の、その“伝わってくるもの”というのが、音楽でも映画でも文章でも大切というか。
タイプは違いますが、本人たちも認めているようにVODのファーストが失敗作だったのは、プロデューサーの意向もあって、まとめあげようとするために感情を抑えつけていた感じだったからです。メロディアスに歌っても上滑りにならず気持ちの震えが伝わってくるようにレコーディングするのは、難しいのかもしれないです。こういう感じで歌い続けて、ライヴだとまた違ってくることも期待したいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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