なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『25 NIJYU-GO』

25+NIJYU-GO メイン






東映Vシネマ25周年記念ということに引っかけたかのように不正に捻出された25億円を25人が奪い合う、
哀川翔主演の映画。
馬鹿馬鹿しいようで示唆に富み色々と大切なことを思い起こさせるクールな作品である。

VシネはVHSのビデオ・レンタル全盛期に産まれ、
衛星放送普及前(地上波)のテレビ・ドラマと映画の狭間で毒々しく息づいていて独自の文化を生んだ。
Vシネはヴァイオレンス+エロが際立って
一般のテレビ番組では放映がキワドいエゲツないシーンたっぷりながら、
18禁やR15指定の映画やビデオ作品の類ほど扇情的ではないからこそイマジネーションをファックする。
すぐれているかどうかなんて知ったこっちゃない。
ある意味パンクでプリミティヴなロック感のそういうVシネの真髄をビッグ・スケールで展開した映画である。


監督は『今日から俺は!』や『静かなるドン』シリーズを手掛けてきた鹿島勤。
俳優陣は不良刑事役で主演の哀川の他、
寺島進、高岡早紀、温水洋一、小沢仁志がサブ・メインを務め、
竹中直人、石橋蓮二、大杉漣が極悪に場を盛り上げ、
小沢和義、井上正大、岩佐真悠子、波岡一喜、鈴木砂羽らがスパイスの役どころを演じている。

“Vシネの帝王”とも呼ばれる哀川は言わずもがな、
寺島進、温水洋一、小沢仁志といったVシネでもお馴染みの男優陣が核になっている。
Vシネ未出演だった女優陣もフィットしており、
高岡早紀は秘められたポップな軽薄イケイケ・キャラが引き出され、
岩佐真悠子もVシネ風だった昨年の主演作『009ノ1 THE END OF THE BEGINNING』に続くハマりようだ。
チャーミングで憎めないクセ者ぞろいなわけだが、
いわゆるメジャー・フィールドでも活躍しておきなからVシネ風味も演じられるというのはグレイトではないか。
汚れも穢れも似合うということは人間臭いことを意味する。
場末感ムンムンムシムシながら派手なVシネは人間の正直かつ尊いナマを描いており、
“胡散臭いからこそ信用できる”ってことを本作は映像と物語と役者で凝縮している。

『25 NIJYU-GO』サブ1

東京都心部の中でも微妙にマイナーで怪しく危険な匂いが漂う池袋内の署に務める、
やさぐれ外道アウトロー不良刑事コンビ(哀川翔+寺島進)は
義憤と職権乱用を混ぜこぜにして悪から金を巻き上げていたが、
上司からそのことに関する指摘があって金が必要になる。
そんなおりに政治家と思しきヘタレM男(温水洋一)が横領していた事件が発覚し、
札束にして彼が隠し持つその25億円をめぐり、
不良刑事コンビ、暴力団、“半グレ連合”、中国マフィア、高級クラブのママ(高岡早紀)が割り込み、
しのぎを削っていく。

シンプルにまとめるとそんな物語でストーリーの流れはまっすぐだから基本的にわかりやすいが、
大金を得るためと生き延びるための人間関係の絡みで登場人物の立ち位置や感情が次々と変容していくから、
一筋縄ではいかない。

何しろクリーンを気取った“善人”が一人もいない。
集団的自衛権ならぬ“集団的正義”をかざしたヒステリックな“潔癖症”が蔓延する世の中、
ここの人間たちはヒトという種が背負う“業”や“欲”を受け入れている。
RAMONESのラスト・アルバムでジョー・ラモーンが書いた「Life’s A Gas」の歌詞のように、
終盤に竹中直人が吐いた“捨てゼリフ”の「(自分の人生は)クソ!」というのが“隠しテーマ”なのかもしれない。
だが卑屈というのではなく悪党であればあるほど内省的な面を覗かせている。

何しろみんなウソをついているのに“ウソがない”。
たましあいと、ばかしあいの末に、深い情愛が生れる。
「(自分のせいで)これ以上仲間を殺したくないからな」と裏切ることを撤回した哀川の言葉が象徴するように、
義賊から義憤、そして義侠への行動と意識の流れが炙り出される。

今回の映画に関する哀川のコメントで“悪”ではなく“ワル”といった言葉を使っているが、
真樹日佐夫:原作/影丸穣也:画の70年代初頭の漫画『ワル』もイメージするのであった。

『25 NIJYU-GO』サブ2

EXPLOITEDの初期の名曲「Sex & Violence」じゃないが、
暴力(+マネー)with セックスに支配された映画ながら
あくまでもVシネ美学にのっとっており、
ことごとく派手でありながら日本的とすら言えるほど“おくゆかしい”。
だから風情がある。

セックスのシーンもボカしやモザイクはなく、
ダイナミックな体位をギリギリの露出度の“絡みのエロティシズム”で魅せるVシネ美学にのっとっている。
そもそもエロに頼ってない。
インターネットで露骨な画が簡単に見られるようになってから忘れてしまっていた感覚を呼び起すのは、
暴力場面や残酷シーンに関しても同様だ。
むろん“ドンパチ”も欠かせないわけだが、
どんどん死んでいくにもかかわらず血みどろになるはずのシーンも “モロ”ではなく、
ホラー映画のごとく必要以上にセンセーショナルな場面を強調しないがゆえの想像力喚起がえらく新鮮だ。

荒唐無稽なシーンを含みつつもCG臭い場面はほとんどなく“超人不在”でリアリティ重視だ。
馬鹿馬鹿しく笑える場面も少なくないし“空気”や“炭酸”が抜けているみたいな人物も多いが
はしゃぎすぎず微妙に冷めたトーンがたまらない。
死を扱うにもかかわらず軽々しい仕上がりの映画とは一線を画す。
殺人をギャグ漫画ちっくに扱ってないのだ。
引き締めるべきところはビシッ!と引き締めている。
映画の中に登場する全員と同じく映画自体の作りも生きるか死ぬかの真剣勝負なのである。


Vシネといえばビデオ・レンタル文化の申し子のイメージもあるし、
大半は家のテレビ・モニターで観ることを前提に作られていたと思われるが、
この映画はVシネのエゲツない精神性そのまんまデカいスクリーンにamplifier(増幅→拡大)した作りで、
映像も物語もビッグに展開している。
同じ空間内で息をしている“共犯者たち”とハラハラドキドキしながら観る映画の醍醐味を堪能できる作品なのだ。
ホメ言葉として便所から漂う小便の匂いが目に染みる昔ながらのいわゆる“名画座”にもピタリ!の映画でもある。

あ、そうそう、NAMBA69が主題歌を担当しているところも特筆したい。
Hi-STANDARDのフロントマンとして知られる有名人でありながら微妙にA級からハズれ気味の
難波章浩率いるバンドだからこそ、
Vシネ拡大版の本作にハマっているのであった。


★映画『25 NIJYU-GO』
2014年/日本/カラー/製作:東映ビデオ/配給:東映
11月1日(土)より新宿バルトほか全国ロードショー。
(C)2014東映ビデオ
http://nijyu-go.com/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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