なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ATHEISTのアルバム・リイシュー3枚+べスト&ライヴ

80年代の半ばにフロリダで結成された異形のデス/スラッシュ・メタル・バンド、
ATHEIST(エイシスト)の3枚のアルバムが日本盤でも再発されている。
むろんリマスタリング済みで多数のボーナス・トラックが加えられた。
いずれも未知なる何かを生み出さんとする気概と息吹が溢れて熱い。


PieceofTime.jpg
ファーストの『Piece Of Time』は、
スタジオがモリサウンドでバンドと共同プロデュースしたのがスコット・バーンズという、
フロリダのデス・メタルの名盤を多数産出したレコーディング体勢での制作である。
しかもOBITUARY(『Slowly We Rot』)や MORBID ANGEL(『Altars Of Madness』)といった、
現在もデス・メタルを代表する同郷バンドたちのオリジナル・デビュー・アルバムと同じ89年にリリース。
レーベル側の問題で『Piece Of Time』の発売が90年初頭に伸びたという説もあるが、
録音は88年の11~12月だから前記のOBITUARYやMORBID ANGELの2枚と同時期だ。
以上の事実で当時のATHEISTのポジションが想像できる。

ヴォーカルは威圧的なデス・ヴォイスというよりは、
DEATHやOBITUARYにCARCASSが混入したような苦悶を搾り出す粘っこいシャウト・タイプ。
緩急つけながらスラッシュ・メタルがつんめったみたいなサウンドで、
いわゆるブラスト・ビートは使ってないと思うが、
REPULSION級のモーレツな突進力を有する。
しかもKING CRIMSONのようなプログレの風の変則的なリズムも織り込んだ罠も仕掛けられ、
その中心となってうねるベースがポイント。
むろんテクニック至上バンドとは完全に一線を画す怒涛のエナジーがたまらないのである。
アルバム未収録の直情ナンバーをはじめとして燃え上がる9曲のデモを含む18曲入り。


UnquestionableRGB.jpg
セカンドの『Unquestionable Presence』(91年)も引き続きスコット・バーンズとの共同プロデュースだ。
曲作りもリードした前ベーシストのロジャー・パターソンがツアー中の交通事故で他界し、
新ベーシストに元CYNICのトニー・チョイが加入。
ジャズの感覚も取り入れたスラップ(チョッパー)プレイも披露するベースの変態音がさらに目立ち、
PRIMUSを思わせるところもある。
“ジャズ・デス・メタル”という言葉も似合わないほど一曲の中での場面転換が激しくなり、
より困惑させる展開を見せながらも妙にもったいつけた部分を設けず、
そうこうしていくうちに滑らかに加速していく前代未聞の“スペクタクル・デス・メタル”となった。

歌詞も一般的なデス・メタルとはちょっと違う。
世の自由や常識を疑ってトリップしていて宇宙も歌い、
音と共振してブッ飛んでいる。
セルフ・ライナーを読んだらやっぱりガンジャ吸いまくりの真っ最中と告白しているのであった。
彼らのジャケット画の色がみんなストレンジなのはそのためなのだろうか。
追加された9曲は前ベーシスト生存中のデモがほとんどでヘヴィ&グルーヴィに迫る。
全17曲入り。


Elements.jpg
そして『Elements』(93年)はスコット・バーンズと初めて離れてレコーディングしたサード。
一時解散状態になったあとオリジナル・メンバーが2人だけが残り、
ギタリストをもう一人加えてトリプル・ギター体制となり、
ドラムも替えてベースは前作同様にトニー・チョイが弾いた。
従来のATHEIST路線をキープした“忙しいメタル”とはいえスラッシュ的なスピードはやや抑え目。
ゲストがピアノを弾くサンバ/ジャズ・ナンバーや叙情性たっぷりの泣きのインストも挿入し、
大気圏外をも目指したトータルな仕上がりになっている。
しかも非オルタナでevilな血が流れ続けていることは隠しようがなく、
“デス・ミクスチャー・メタル”とでも言いたくなるほどカオスとハーモニーが抱擁した名誉ある怪盤だ。

「Green」「Water」「Air」「Animal」「Mineral」「Fire」「Earth」などのベタなタイトルの曲の数々は、
“空気”“水”“火”“地”という元素をテーマにした歌詞で綴られている。
いわゆるエコものとは次元が違うスピリチュアルなものを感じさせ、
メッセージ性も高いのであった。
セカンドの曲中心の92年のラジオ・ライヴが6曲追加されている。


Live.jpg
『Elements』をリリースした1年後にATHEISTは10年以上の眠りに着いたが、
米国でのアルバムの再発の余波を受けて2006年に復活。
同年のライヴの8曲と3枚のアルバムからのベスト・セレクション11曲を収めた、
2枚組CD『Unquestionable Presence: Live At Wacken』も今年日本盤で発売されている。


●エイシスト『ピース・オブ・タイム』(リラプス・ジャパン YSCY-1161)CD
●同『アンクエスチョナブル・プレゼンス』(同 YSCY-1162)CD
●同『エレメンツ』(同 YSCY-1163)CD
●同『アンクエスチョナブル・プレゼンス:ライヴ・アット・ヴァッケン:』(同 YSCY-1152/1153)2CD
3枚のオリジナル・アルバムは、
オールカラーのブックレット(ファーストとセカンドは20ページ、サードは12ページ)と、
フロントマンのケリーが書いたドラマ満載の膨大な量のライナー+本編の歌詞の和訳付。
ベスト&ライヴCDは24ページのオールカラーのブックレットと、
ライヴの裏話満載の膨大な量のライナー+ベスト盤の曲個々の詳細な解説の和訳付だ。


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/136-53e91cc9

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (94)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん