なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

NAPALM DEATH『Apex Predator - Easy Meat』

napalm_jk.jpg


パンク/ハードコア/グラインドコア/デス・メタルの混血“エクストリーム・ミュージック”の帝王、
英国出身のNAPALM DEATHのオリジナル・フル・アルバムとしては『Utilitarian』以来の約3年ぶりの15作目。

1月28日発売の日本盤のライナーを書かせていただいたので、
字数制限の関係でカットしたその“アウト・テイク”みたいな部分を含めて
ここでは最低限の情報以外は内容がダブらないように紹介する。


メンバー全員が揃ってなかったから私的年間ベスト・セレクションから外したが、
グレイトだった昨年11月の日本公演そのまんまの出来である。
何しろムチャクチャ元気だ。
リーダーのシェーン・エンバリー(b)もダニー・ヘレッラ(ds)も、
このアルバムで鳴っている音を聴けば元気ってことがわかる。
むろん家族の病気でこの前の日本公演は欠場したミッチ・ハリス(g、vo)も全面参加で、
ギターやスクリームに加えて今回作詞も手掛けていてバリバリだ
ちなみに日本ツアーの助っ人ジョン・クーク(CORRUPT MORAL ALTAR)も1曲でギター・ソロを弾いている。

そんでもって特にバーニー(vo)の勢いが止まらない。
NAPALM DEATHは正直でデリケイトなバンドだから、
その時々のライヴの状態がそのままアルバムに表われる。
たとえばバーニーが一時クビになる直前だった96年の2度目の来日公演
(『Bootlegged In Japan』というタイトルでCDになっている)や、
その数か月後にレコーディングした7作目『Inside The Torn Apart』(97年)には、
不安定だった当時のバンドの状態やバーニーの不安感が記録されている。
あの頃を思えば隔世で、
快活とすら言えるほどのヴォーカルなのだ。


アップデートしたグラインドコア進化形を提示する“NAPALM DEATHミュージック”は不変だが、
今回はフック十分のリフの曲が目立つ。
要は覚えやすい曲が多いということである。
むろんヴァラエティに富んでおり、
以前カヴァーしたGAUZEのアノ曲とアノ曲をアレンジしてNAPALM DEATH解釈したみたいな曲も飛び出す。
“このパートは誰が歌っているんだ?”ってな挑戦的なヴォーカルもまたまた多く、
変わってないが守りにも入らないNAPALM DEATHのアティテュードがブチ込まれている。

曲と同じく今回は歌詞もダイレクトな内容が多い。
NAPALM DEATHの伝統としてターゲットが特定できる歌詞はイメージが限定されるから今回も無しだが、
90年代以降のアルバムの中でも最もストレートではないだろうか。
『Utilitarian』に引き続きデンマークのデザイナーのFrode Syltheが手掛けた
ジャケットをはじめとするアートワークと共振して生々しい。


オリジナル盤は14曲で日本盤は全18曲入りだ。
昨年11月の東京公演などで早々と披露した2曲も含まれているが、
CONVERGEとのスプリット7”EPやMELVEINSとのスプリット12”EPの曲などの
『Utilitarian』以降に発表した曲は入れてない。
ある意味ファン泣かせだし、
NAPALM DEATHの(というかリーダー/ベーシストのシェーンの)“変態趣味”が表われた
後者に収録のCARDIACSの「To Go Off And Things」のカヴァーはボーナス・トラックに…とも思ったが、
頑張って限定盤のレコードを買ったコアなファンのことを気遣って再録しなかったとも想像できる。
曲の使い回しをほとんどしないNAPALM DEATHならではの誠実な制作姿勢が見え隠れしているのだ。

日本盤のボーナス・トラックの4曲も、
当然のことながらどーでもいいリミックスものではないし、
デモ音源でもない。
アルバム本編の曲と同じように、
9作目『Enemy Of The Music Business』(2000年)からずっと手掛けているラス・ラッセルのプロデュースで
レコーディングされた“新曲”オンリーだ。
以前の日本盤でもやっていたように今回も通常の曲目の最後に“ただ付け足すだけ”にはせず、
CD後半の適所に挟み込んでいる。
サービスとして曲を追加するにしても機械的な作業を行なわずに曲の流れを考えて再構成しており、
一つの作品に対するNAPALM DEATHのこだわりが見て取れる。
言うまでもなくボーナス・トラックもすべて捨て曲ではないが、
すべて入れるとアルバムの全体の尺がやや長すぎると判断して外したのかもしれないし、
長く収めると音質が落ちる1枚もののLPを想定して通常盤は14曲にしたのかもしれない。
80年代のオランダのハードコア・パンク・バンドであるGEPOPELの「Paracide」のカヴァーも渋すぎるし、
NAPALM DEATHが世界中のこういう変則的なハードコア・チューンからも触発されてきたことがよくわかる。


結成から5年以上を要したアルバム・デビューの頃には創設メンバーが残ってなかったバンドだが、
『Scum』(87年)と『From Enslavement To Obliteration』(88年)の最初の2作は、
即効性も十分で確かに革命的なアルバムだった。
だが『From Enslavement To Obliteration』から加わった現在最古参メンバーのシェーン、
サードの『Harmony Corruption』(90年)から加わったバーニーとミッチ、
4作目の『Utopia Banished』(92年)から加わったダニーが、
NAPALM DEATHをアルバムごとに更新しているからこそ昔の曲も常に現在進行形なのだ。
毎度『Scum』の曲を連発するコーナーをライヴの終盤で設けているのは
一種のお約束のファン・サービスではあろうが、
現メンバーの誰もがレコーディングに参加してないアルバムの曲をステージで披露することは、
NAPALM DEATHのハードコアな精神性の継承の儀式にも映る。
ファンが気を許したすきにササッ!と済ませて観客を唖然とさせる
“瞬間芸ナンバー”「You Suffer」も含めてである。

残念ながら一朝一夕に世界が変わることはない。
すぐ変わったように見えることより、
じわじわと浸透していくことの方が地に根差す。
ゆっくりと足場を築いていかないとすぐ崩壊する。
だからこそNAPALM DEATHは地に足の着いた活動をずっと続けてきたわけで、
そんな彼らの現時点での集約形が『Apex Predator - Easy Meat』なのである。


発売まで心して待っていただきたい。
期待を裏切らないことを保証する。


★ナパーム・デス / エイペックス・プレデター、イージー・ミート(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10070)CD
1月28日(水)発売。


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コメント

>変わってないが守りにも入らないNAPALM DEATHのアティテュードがブチ込まれている。

この部分が今回も健在みたいでなによりです。今作も間違いなさそうですね。
『Enemy of~』以降の彼らはこの辺がいい意味で安定していて本当に頼もしいです。

11月のライブで聴いた2曲がステキだったので、このアルバムは早く入手したいですね。
ちなみに大阪のライブでは、バーニーが熱演しすぎたせいか短パンのチャックがぶっ壊れて、終盤はずり落ちる短パンと格闘しながら半ケツでシャウトしてました。

書き込みありがとうございます。

>EGさん
『Enemy Of The Music Business』以降の勢いがますます加速しています。と同時にバーニー一時クビ前後のアルバム『Diatribes』と『Inside The Torn Apart』の“エクスリーム・シューゲイザー”な要素も進化形で含まれています・・・その2タイトルの1曲目「Greed Killing」と「Breed To Breathe」を昨年11月の東京公演で披露したのも象徴的です。

>Korokuさん
日本公演で披露した2曲のうち1曲はボーナス・トラック扱いなので日本以外ではライヴであまり披露しないと思われるだけに貴重です。バーニー熱演エピソードもありがとうございます。ヴォーカルの声の違いにも表れていますが、佳作ながらやや内向的な上記の『Diatribes』『Inside The Torn Apart』の頃とはまるで別人のバーニーのハッスルぶりは新作でも堪能できます。

「じわじわと浸透していくことの方が地に根差す」
素晴らしい表現ですね!
昔、ダニー・ヘレッラのインタビューで「グルーヴという言葉が大嫌いだ?(違うかも知れません)」 というような記事を読んだことがあり、ものすごく感動した記憶があります。
アルバム楽しみです。

増田恵一さん、書き込みありがとうございます。
ダニーのインタヴューというのはレアですね。同じく名ドラマーでもある方だけに響いた言葉なのでしょう。コロっと変わったと見えるものほど根づかないものです。人間の考え方もそうですが、簡単に「変わった」と言ってしまうようなものはほとんど付和雷同ですから。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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