なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『でーれーガールズ』

でーれー メイン


岡山の女子高に通う二人の“1980年”と“その30年後”を交錯させながら描く2014年製作の映画。
NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で共演した優希美青と足立梨花のホリプロ勢が高校一年生の二人を、
宝塚時代に共演した白羽ゆりと安蘭けいが大人になってからの二人を演じる。
東京生まれで岡山育ちの原田マハが自身の体験を基に書いた小説『でーれーガールズ』(2011年)を原作とし、
ホリプロ制作ものの王道の切なく甘酸っぱいベタな空気に包まれた佳作である。


原作小説を読めば話の展開がわかるのかもしれないが、
ネタバレを避けるべく大まかなストーリーだけ書いておく。

東京から岡山に引っ越してきたばかりの鮎子(優希美青/白羽ゆり)はお嬢様高校に入学するが、
付属中学上がりの生徒が大半を占めると思しき生徒たちの中で勝手がわからずにからかわれるが、
大人びた武美(足立梨花/安蘭けい)から関心を持たれてまもなく親友になる。
そのきっかけは漫画家を夢見て鮎子が描いている漫画を武美が目にしたこと。
バンドをやっている大学生のヒデホと鮎子がプラトニック・ラヴを繰り広げている漫画だが、
その漫画に夢中になった武美もヒデホに惚れて鮎子に「彼に会いたい」と頼む。
そこから不思議な“三角関係”が始まり、
“四角関係”へと進み、
二人の友情は微妙なものになり、
夢を果たして売れっ子になった鮎子は30年後に武美と再会する。

でーれー サブ

以上のような物語が二人の心理と二つの時代を行き来させながら描かれていくのだが、
まず岡山弁を多用したセリフも含めて脚本の妙味により全体の流れがとてもなめらかだ。
おっとりしたリズムで映画がまったりと走り、
矢野博康(Cymbals)が担当した音楽も奏功し、
さりげなくテンポもいいから引き込まれっぱなしである。
微笑ましい場面は多いが、
中途半端なギャグでお茶を濁すようなシーンはまったくない。
そもそも無駄な場面がひとつもない。
時代が交錯する構成とはいえ、
あくまでもストレート直球勝負。
だからこそスクリーンから目が離せない。
心地よい緊張感に覆われている。

でーれー1

俳優陣もまさに“役者揃い”である。
事務所の先輩・深田恭子に真野恵里菜が高校一年生時代のままブレンドされたかのような
優希美青が“恋に恋する乙女”の頃の鮎子を好演。
早熟に見えながら純情で体に“爆弾”を抱えていて明日が見えないジレンマで行動が加速する武美を、
足立梨花がクールに熱演。
白羽ゆりと安蘭けいは成熟しつつも瑞々しい鮎子と武美の30年後を、
それぞれ宝塚の元トップ娘役と元トップ男役を務めていたことがうなずける凛々しい佇まいで演じ切っている。
大半のシーンは二人がクローズアップされているが、
他の俳優たちもいい味を出している。

映像も素晴らしい。
適宜遠近でとらえるカメラ・アングルも、
光の当たり方をしっかり考慮して淡いトーンをメインに適宜輪郭をはっきりさせた映像の色合いも、
場面ごとに女優陣の情感をほんのりと香らせている。
セーラー服のリボンをはじめとして、さりげなくディテールにこだわり、
舞台になった岡山の風物の数々も息をしているかのようにしっかりと映し出す。
何しろ写真集みたいな映像なのである。

でーれー2

僕はずっと東京だし1978~1979年が高1だから“二人の主役”より二つ年上だが、
原作小説を書いた原田マハが同学年で同じく東京多摩地区生まれというのもあって時代感と空気感がよくわかる。
もちろんそういう環境の生れや育ち以外の方のノスタルジーをくすぐる要素もたっぷりとちりばめている。
優希美青が歌うシーンも含めて当時引退間際だった山口百恵の歌が4曲使われ、
“A(キス)、B(ペッティング)、C(セックス)…”といった“死語”も懐かしい。
というわけでエゲツないシーンはなく、
気持ちイイというより、くすぐったい感覚がたまらない。

でもこれは今でも十二分に響く映画だし、
今だからこそ響く映画だ。
特に女性の間で起こりやすいものなのかもしれないが、
悪気はないのに行き違いで崩れかかる友情は普遍的なものだし、
人間関係全般対しても永遠に言えることだから。
目が覚めるほど淡く鮮やかな脚本と俳優と映像に持って行かれていくうちに何度も琴線がゆるむが、
すがすがしく“次”へとつなげるラストもいい。
つつましやかな感動で胸がいっぱいになる。

ちなみに“でーれー”とは岡山弁で“ものすごい”を意味するという。
まさに“でーれー”な映画である。


★『でーれーガールズ』
日本映画/ビスタサイズ/118分
2015年2月14日 イオンシネマ岡山にて先行ロードショー。
2015年2月21日 ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国ロードショー。
ⓒ2015 原田マハ/祥伝社/「でーれーガールズ」製作委員会
http://deereegirls-movie.jp


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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