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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

AT THE GATES、ENGEL at 恵比寿リキッドルーム 2月9日

AT THE GATES チラシ


スウェーデンのエクストリーム・メタル・バンド、
AT THE GATESの“AT WAR WITH REALITY TOUR IN JAPAN”と題されたツアーの初日。
フロアーはほぼ満員と言っていいだろう。


ゲスト・アクトとして同じくスウェーデン出身のENGELが登場。
作曲も含むミュージカル・ディレクターを務めるIN FLAMESのニクラス・エンゲリン(g)のプロジェクトながら、
現在は原則として自身はツアーに不参加という“特異なバンド”である。
今回も彼不在の4人でステージに立ち、
多少“バックトラック”の音を使いながら生演奏を行ない、
サビのしっかりしたメロディアスなエクストリーム・メタルを披露。
スウェーデンのイエテボリ(ゴセンバーグ)のメロディック・デス・メタルの影響を受けた
2000年代以降の米国産メタルコアが、
フィードバックしてきたようでもある。
ライヴ自体は新フロントマンのミカエル・セーリン(vo)のイケイケな“メタル・パフォーマンス”が楽しく、
45分の持ち時間の間にAT THE GATESファンと思しき観客もぐいぐい引き込んでいったライヴだった。


30分ほどのセット・チェンジの後にAT THE GATESがスタート。
トーマス・リンドバーグ(vo)はキャップをかぶって若干スポーティな雰囲気でステージに飛び出してきた。
しかもGAUZEのTシャツを着ている。
AT THE GATESはDISCHARGEやスウェーデンのハードコア・パンク・バンドのNO SECURITYの
カヴァーもしているし、
トーマスとエイドリアン・アーランドソン(ds)は
AT THE GATES活動停止間際ぐらいからクラスト・コア・バンドのSKITSYSTEMに在籍していたこともある。
そういうルーツもほとばしるエネルギッシュ&クールなライヴだった。

何しろトーマスがよく動く。
非デス・ヴォイスのシャウト一筋でよく出ていた声にも表れていたように
元気がありあまって動きたくてしょうがない様相だったのだ。
手足がよく動いていて走りまわっていたわけではないのだが、
時に脚もよく動き、
後ろからドラムセットの上まで駆け上がってシンバルを叩いたりもした。
動きすぎてたびたびステージ袖まで行って姿が見えなくなったりもするほどで、
それは“休憩タイム”ではなく、
歌わない間は自分が引っ込んで演奏陣の見せ場を作るかのようでもあった。

演奏陣4人はひたひたとにじり寄って薄ら笑いを浮かべながら殺すかの如く、
落ち着き払いながら要所要所で“キメの一刺し”みたいな動きをしていた。
ステージ向かって左手のマーティン・ラーソン(g)はほぼ定位置でリズムを刻み、
アンダース・ビョラー(g)はステージ右手の後方でアンプの前あたりを定位置にしてバンドを“監督”し、
ヨナス・ビョラー(b)もステージ右手ながらよく前に出てきて観客を煽ったりもしていたのである。

一心不乱にドラムに向き合っていたエイドリアン(ds)の重要性を再認識もした。
“AT THE GATES節”と言える独特のリズム・パターンのエイドリアンの緻密なビートが
曲をリードしつつ他の4人のメンバーの尻を後ろから叩いているかのようで、
AT THE GATES全体のサウンドがビートと化していたのだ。
そういうパーカッシヴな音を加速させるべく磨き刺すかのようなメロディと攪乱させるような暴虐のシャウトが入る、
AT THE GATESの“生サウンド”を肉体で浴びて圧巻だった。

AT THE GATESは活動停止前の4作目であり代表作の『Slaughter Of The Soul』(95年)、
いやもっと言えばロック史上に残る名曲「Blinded By Fear」のイメージで語られがちだ。
それがAT THE GATESが凝縮されている“型”であることは間違いないが、
他にない独自のメロディック・デス・メタル・スタイルに留まらない他のタイプの楽曲の良さも堪能できた。
スロー・テンポの曲だけでなくどの曲も重く陰鬱なニュアンスがたまらなかったし、
昨秋リリースの最新作『At War With Reality』の曲もツアーで練られてパワー・アップしていたのである。

フロントマンのトーマスは多少サービス精神旺盛に見えるが、
基本的に音楽オンリーで勝負するバンドだから仕掛けじみたステージングはなく、
シリアスとも言える。
一方で砕けたところもあるバンドだ。
たとえばこの日の序盤、
立て続けに畳み掛けるつもりだったにもかかわらず、
いきなり2曲目の出だしで失敗して演奏が中断し
メンバー全員苦笑いしながら仕切り直しで曲の頭から演奏再開するシーンもあった。
あの“失態”でAT THE GATESも観客もいい感じでリラックスしてライヴに臨めたと思うのだ。

約80分、
まさに貫禄の一夜だった。


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コメント

私も東京公演を観てきました。
身体を直撃する音で演奏が終わった後もずっと、
体内温度は高いままでした。

特にエイドリアンのドラムは緻密なうえに硬質で最高でした。SKITSYSTEMにトーマスと一緒に参加していたことまでは知りませんでしたが。トーマスが関わったのはアルバム1枚だと思うのですが、あのアルバムのドラムも(エイドリアンが叩いたかは知りませんが)強烈だったなと思い出しました。

トーマスの声はナチュラルですよね。力んでいる様子はないのに強烈で。一切、ナルシズムを感じさせない姿勢が好きです。

ただ、元気なトーマスを見てDisfearの活動にもまた本腰を入れて欲しいと本当思いました。大味な他のスウェーデン勢のクラストとは一線を画す繊細な"クラスト"は最高ですから。次が聴きたいバンドの1つです。

長文失礼しました。

溝口さん、書き込みありがとうございます。
ただ上手い演奏ではなく彼ら自身のエネルギーや思いもカラダを直撃してきましたね。僕も「体内温度」が上がったままでした。
トーマスがヴォーカルのあのアルバムではエイドリアンは叩いてない感じです、クレジットによれば。それはともかく、エイドリアンのドラミングはハードコア系の集中力を感じました。
トーマスは色々やっていて、やはりステージングでも魅せてれますが、天然なところがいいですね。ヴォーカルもハードコア・パンクとエクストリーム・メタルのミックスみたいで。彼が歌っているバンドの中でもDISFEARは僕もすごく好きなバンドなので、復活させてほしいものです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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