なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BRUTAL TRUTH vs CONVERGE at 渋谷O-EAST 2009年12月15日



シーンの最前線で“エクストリーム・ミュージック”を開拓してきている米国のバンド同士のタイマンである。
といっても活動フィールドは微妙に異なるから、
今回の日本ツアーはCONVERGEの地元のマサチューセッツ州で行なって以来。
12年ぶりの対バンだという。
アーロン・ターナー(ISIS)主宰のHYDRA HEAD Recordsからリリースのシリーズ・スプリット7”EP、
『In These Black Day:A Tribute To BLACK SABBATH』で盤を分け合った頃に一緒にやったようだ。


CONVERGE.jpg

あまり余裕がないから常々ポジティヴ思考を心がけているし、
ネガティヴなことを書くのはエネルギーが要るし疲れるからあまりブログで書きたくはないが、
向き合った結果そうなるのであれば絶賛してきた人間としてはやらなきゃいけない時もある。

新作『Axe To Fall』は腑に落ちないところが多いし、
にもかかわらず不自然な興奮とともに奇妙な持ち上げられ方もされたりして、
個人的には盛り下がる一方の今日この頃。
そんな気持ちの状態で臨んだこの日のCONVERGEだった。

神がかった磁場を生み出した初の東京公演と、
それがマグレではなかったことを示すマジックを再度引き起こしたフェス“ビースト・フィースト2002”での、
2002年に立て続けてやったライヴには及ばずと言わざるを得ない。
まあここ2回の来日公演より持ち直したとは思う。

ジェイク・バノン(vo)は相変わらずステージ上を走りまわり、
カート・バルー(g)はサイド・ヴォーカルでの存在感も際立ち、
ネイト・ニュートン(b)はよく動きバッキング・ヴォーカルもとり、
ベン・コラー(ds)のリアル・パワフルなドラミングはバンド全体の音を回転させていた。
見せ方が上手い。
2001年の『Jane Doe』リリース時のインタヴューでもカートはそういう点を向上させたいと言っていたし、
初来日公演の時からいい意味でのショーマン・シップはあった。

ただ『Axe To Fall』の印象と同じく、
CONVERGE以外での諸活動も含めて一人一人はミュージシャン/アーティストとして充実しているが、
CONVERGEというバンド自体は収斂(converge)ではなく拡散しているとあらためて思った。
要は有機性をあまり感じなかったのだ。
確かにわかりやすい曲は増えたが、
シンプルなハードコア・パンクだって整理不能なカオスを生み出すバンドは内外に新旧いくらでもいる。
観たあと結局また色々考えさせられた。

ちなみにアンコールはスウェーデンのENTOMBEDの「Wolverine Blues」のカヴァーというサプライズ。
ただし歌ったのはジェイクではなく、
ツアー・マネージャーとして来日していたJohn Pettibone(元HIMSA)であった。
ゲスト満載の『Axe To Fall』の流れでコラボレーションづいているのだろうか。


BRUTAL TRUTH

かたやBRUTAL TRUTHも瑞々しい興奮はとっくの昔に消滅しているが、
そもそも93年8月の初来日公演の時から跳んだり跳ねたりのステージングのバンドではない。
何が起ころうとも動じぬ貫禄の横綱相撲を繰り広げ、
まったりしたグラインドの序盤からじわじわと圧倒していったのである。

“オヤジ・グラインド”とも言いたくなる味わいを醸し出していたのが、
メタボ化とオッサン化が進んでいるようにも見えたケヴィン・シャープ(vo)。
もともと凄みを効かすキャラじゃないし愛嬌の一貫と受け止めた。
他のグラインド・コア・バンドやデス・ヴォイスとは一線を画す、
我流のヴォーカリゼイションで押すパフォーマンスはあの顔とあの体形あってこそだろう。

ダン・リルカー(b)によれば、
家庭の事情により今年一杯でエリック・バーク(g)が脱退するらしい
(無名の人ながらも新ギタリストは決定済とのこと)。
再編後のバンドを支えてソングライティングで活躍したエリックが抜けるのは残念だが、
複雑なリズムを絡めまくったリフとコードで一心不乱にギターと格闘していた。

リーダーのダンはケヴィンとは対照的に、
ANTHRAX~S.O.D.~NUCLEAR ASSAULTをやっていた80年代からルックスが一切変わらず。
メタルというより贅肉を削ぎ落としたシャープなロック美学をキープしている。
他のメンバーがわりとルーズなファッションだけに、
長身のダンのヴィジュアルがBRUTAL TRUTHのステージを引き締めていることは間違いない。
ダンは持ち場をあまり離れず例によって頭をぐらぐら揺らしながら“グラインディング・ベース”でリード。
音が複雑で曲がモヤモヤとカオティックになろうがBRUTAL TRUTHをグラインド・コアたらしめるのは、
ダンのあのベースだと再認識した。

グラインド・コアはグラインド・コアだが、
BRUTAL TRUTHはグラインド・コアを日々アップデートしている。
だから簡単にノれる曲はどんどん減っており、
“グラインド・ウェイヴ”とも呼ぶべき音の波に乗って泳ぐように楽しむ曲になってきている。
BRUTAL TRUTHはオールドスクールのグラインド・コアをやっているバンドを認めつつ、
今年リリースした最新作『Evolution Through Revolution』のタイトルのことを、
グラインド・コアで実践している。
だからリラックスした気分で演奏しているライヴも一種の“格闘”にも見える。
ステージでインプロヴィゼイションしながら曲を再創造しているようでもあり、
ほとんどフリー・ジャズにも近い。

その核はリッチ・ホーク(ds)。
ときおり曲間で奇声を上げつつ完全に覚醒し切ってエクスタシーに達しっぱなしの顔で、
ブラスト・ビートを超えた目にも留まらぬ耳にも聞こえぬ“ソニック・ビート”を打ちまくるドラムで飛ぶ。
テクニカルなメタル・ドラマーがリッチのドラムに対して、
“何をやっているのかわからない”という否定的なコメントをしたことがある。
だが目が据わり切ってトリップした形相で繰り出す、
ストレンジなリズムを次々と挿入しつつ加速を止めないアナーキーなドラミングは世界一自由だ。
1度目のアンコールが終わった後、
誰かが止めなきゃ不眠不休永久にドラムを叩いていそうなリッチの勢いに駆られて他のメンバーも再登場し、
予定してなかった2度目のアンコールもBRUTAL TRUTHはやってのけた。

本編終盤にはデス・メタル色の強い初期の曲「Birth Of Ignorance」「Walking Corpse」も披露。
そういう“キャッチーな曲”をもっと増やしてもいいかもしれない……とも思ったが、
わかりやすい曲を作るのはBRUTAL TRUTHの道ではない。
最新作の曲のタイトル「Grind Fidelity」を拡大解釈すれば、
グラインドへの忠誠とグラインドにおける貞節をもつがゆえにグラインドを進化させ続ける。
4人が絡み合いながらオーガニックにやっているからこそ生まれていくヴァイブレイションが、
開場全体にカオスの渦を引き起こす。
まさに解放の轟きであった。


進取の精神に富む者には元気づけられる。


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コメント

マジで最高のライブでした
特にリッチ・ホークのドラミングには(誇張ではなく)開いた口がふさがりませんでした
ちなみに、セットリストって分かりますか?

要するに小野島さんがベタ褒めしてるから気に入らないだけですよね?<CONVERGE

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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