なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

The POP GROUP『Citizen Zombie』

Citizen Zombie packshot_940


ラジカル極まりないサウンドと言葉で77~80年にシーンを掻き回した英国のポスト・パンクの急先鋒バンド、
The POP GROUPの約35年ぶりの新作。
オリジナル・アルバムとしては『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』以来の3作目にあたる。

マーク・スチュワート(vo)、
ガレス・セイガー(g、kbd、ホーン)、
ブルース・スミス(ds)という、
ギタリストの一人だったジョン・ワディトン以外のオリジナル・メンバー3人と、
The POP GROUPが最も苛烈だった時代の“後期”を支えたダン・カトゥシス(b)の
4人でレコーディングされている。


CDをプレイヤーにセットし、
深呼吸をしてから“PLAY”ボタンを押して再生スタート。
思い入れの強いバンドの久々の新作やライヴは、ある意味、重い気持ちになってしまう。
しかも“彼らが存在しなけれ今の自分は存在しないぐらい
僕にとってThe POP GROUPはずっと別格中の別格の破格の“トップ・バンドだ。
一番再編が似合わないバンドでもある。
再結成? やめてくれ!ってな気持で、
事前にネット上でチェックしたライヴ映像が悲惨だったからサマーソニック2011での来日公演もパスした。
今回も期待より不安の方が何倍も大きかった。

でもこれは胸のすく尊いアルバムである。


80年の7”の『We Are All Prostitutes』やLP『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』あたりの、
自爆的なほどテロリスティックに張りつめて濃密に炸裂した“後期”のサウンドと歌詞は、
他のミュージシャンやバンドはもちろんのこと
The POP GROUP自身ですら“再現”も超えることも不可能だろうから期待してなかった。
あそこまで自分たちを追い込んで追いつめる表現はもう無理だろうし、
そのへんの音をなぞるアルバムだけは作ってしてほしくなった。
だってそんなことをやったらウソになるだろ。

The POP GROUPのような前のめりの曲や、
マーク・スチュワートの96年のソロ作『Control Data』のようなスピード感もない。
だが思わせぶりなこともしてない、
ひたすら潔い。
かつてと同じくThe POP GROUPは素顔のままだ
アデルやCOLDPLAYとも仕事をしている大メジャー畑のポール・エプワースのプロデュースも、
ヤられた!ってな仕上がりだ。
わざとらしいノイズで“武装”することのないフリーキーかつ研ぎ澄まされた音作りで、
立体的な音像が素晴らしい。
何しろひとつひとつの響きが生き生きしている。
それはすなわち生きている証拠だ。
表面的な曲のスタイルが違っているとしても、
マーク・スチュワートとギャレス・セイガーとダン・カトシスとブルース・スミスの放つ
個々の声や音の色や律動がまったく変わってないことが大切だ。
そこに正直な意識が表われるからである。

まったりともクールとも言える作風で、
79年のデビュー・シングル「She Is Beyond Good And Evil」やファースト・アルバム『Y』の曲を、
ダン・カトゥシスの極太ベースが支えた“後期”の音でアップデートしたような曲が多い。
80年代からマーク・スチュワートのバンドのギタリストのスキップ・マクドナルドが
バッキング・ヴォーカルで参加していることが象徴するように、
マークのソロ・アルバム、
特に近作の6作目『Edit』(2008年)や7作目『The Politics of Envy』(2012年)から作風が連なってもいる。
むろんダブ・アプローチも随所で見せるし四つ打ちリズムを使った曲もやっているが、
マーク・スチュワートが入れ込んできているテクノ系の要素はほぼ封印し、
電子音楽っぽい曲もジャーマン・エレクトロニック・ミュージックのような趣だ。

全曲マーク・スチュワートが他のメンバーの誰か1~3人と共作したソングライティング体制だから、
曲ごとに違っていてヴァラエティに富んで楽しい。
それでいて一貫して筋が通っているサウンドだ。
むろん根は超シリアスだが、
いい意味で精神的に余裕がなかった昔のThe POP GROUPとは違って遊び心も感じられる作りで、
音からユーモアも滲み出ている。
根がノリノリで陽気なマーク・スチュワートのキャラも
The POP GROUPはもとより自身のソロ作以上に表に出ているアルバムだ。
The POP GROUPの再編を素直に楽しんでいるがゆえのエナジーが微笑ましい。

若作りしてないしレイドバックもしてない。
マーク・スチュワートをはじめとして新しいタイプの音を常に吸収してきているから自然とそうなる。
そしてやっぱりロックだ。
いわゆるクラブ・シーンの最先鋭の音にいつでも接近しつつ、
マーク・スチュワートはやっぱりロックだ。
自分のDVDではMC5のTシャツを着ていたし、
The POP GROUPのサイトでちょっと前にはAC/DCのTシャツ着用写真をアップしていたしで、
なんだかんだいってもロックが一番好きなんだろ!?って言ってやりたいほどなのである。

The POP GROUPの中で最もキャッチーな後期の曲「Where There’s A Will」のファンク感も目立つ一方、
絞殺されかかったキャプテン・ビーフハートみたいな喉を震わせるピアノ演奏の静かな歌ものも胸に迫る。
同じ人間が叩いているからビート感が近いのは当然だが、
ところによってはブルース・スミスが加わってからの80年代後半以降のPiLをイメージもする。
そして全体的にはThe POP GROUPの“ボップ”な面が際立っている。
ということで思い出したのが昨秋リリースのレア音源集『Cabinet Of Curiosities』。
The POP GROUPとしては当時の未発表音源集である80年リリースの『We Are Time』がサードで、
『Cabinet Of Curiosities』が4作目で、
そこから自然な流れで続いている歌詞とサウンドに思えるだけに本作がその次のアルバムともとらえられる。
気恥ずかしくなるほどのラヴソングも入れていた点も含めて『Cabinet Of Curiosities』のリリースが
本作の“前哨戦”だったようにも思えてくるのだ。


ナイーヴな反体制ソングとは別次元で政治性を突き抜けて示唆に富む、
マーク・スチュワートならではの“超ポリティカル・ソング”にも磨きがかかっている。
『Y』以前の曲やソロの曲に
The POP GROUP末期の曲「Where There’s A Will」の“意志あるところ”の意識をブチ込んだ感じだ。
と同時に
HIGH ON FIREをはじめとする“ストーナー・メタル”に通じる叙事性や神話性を秘めた戦いの詞ともニアミスし、
ラヴソングを暗喩として使っているような内容が多いのも特徴。
2曲目の「Nowhere Girl」というタイトルは『Y』収録曲の「Snow Girl」へのアンサー・ソング・・・
と解釈するのは深読みかもしれないが、
歌詞は代表曲のひとつの「We Are Time」っぽくもある。
解体されたようなシンプルな言葉で無限のことを言っており、
またまた刺激を受けっぱなしだ。

かつてThe POP GROUPは「意識触発のためのロック」みたいな発言をしていた。
それは『Citizen Zombie』でもまったく変わってない。
意識触発は文章でも映画でも大切なことで、
そんな自分の原点をあらためて思い起こさせてくれた。


チケットが早々とソールドアウトになった3月1日の東京公演は心して臨む。


★ザ・ポップ・グループ『シチズン・ゾンビ』(ビクター・エンタテインメント VICP-65288)CD
↑のカタログ・ナンバーの日本盤は、
帯と共に味のある紙質の二つ折り紙ジャケット仕様で、
ほとんど詩と言えるマーク・スチュワートの“セルフライナー”と歌詞(共に和訳付)が載った
16ページのブックレットと、
“サンクス・リスト”が載ったインナーシートと、
ジャケット大の2種類のポストカードが封入され、
本編終了数秒後という配慮が嬉しいボーナス・トラック「Citizen Zombie 2」追加の約45分12曲入り。
2月25日(水)発売。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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