なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ALL THAT REMAINS『The Order Of Things』

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SHADOWS FALLの97年のデビュー作時のヴォーカリストだったフィリップ・ラボンテ(vo)率いる
米国東海岸マサチューセッツ州出身のメタル/ハードコア系バンドによる、
『A War You Cannot Win』以来の2年3ヶ月ぶりの7作目。

メタル・ハードコアのメロディアスなアップデート・ヴァージョンであり、
2000年代以降の米国産メタルコアの純度を上げて研ぎ澄ましているが、
いい意味でメロディアスなロックと言ってもいい出来だ。


このブログでもしょっちゅう書いているが、
ただでかい声を出しゃいいと思っているみたいな歌い方をはじめとして、
2000年代以降の米国のメタリックなハードコア(スクリーモやポスト・メタル系も含む)に多い
単細胞な発想にはウンザリさせられる。
それがまた意外と非インテリジェンスなタフガイ系ではなく知的な臭いのバンドにも目立ち、
スタイリッシュな怒号と知的テイストのアンバランス感に違和感を覚えたりもするし、
無機的で人間を感じない。
ハードコアな“型”に自分を縛った表現の不自然さも気になってしまう。
もちろんアメリカで生れたり暮らしたりしている人のすべてがそういうわけではないが、
それこそ音楽も映画も政治もひっくるめて侘び寂びゼロで力まかせの典型的なアメリカンの意識そのものだ。


ALL THAT REMAINSはそういったアメリカンの無神経な伝統をオーガニックに絶とうとしている。
と同時に60~70年代からのアメリカン・ロックの土臭い伝統をメタル・ハードコア流儀で消化もしている。
スラッシーな曲もやっているが、
普遍的なアメリカン・ロックのストロング・スタイルのソングライティングを
ハードコアのエッジの効いたメロディアスな音と歌で展開。
スタイルは違えどポピュラリティへのアプローチはMETALLICAのアルバム『Metallica』に近い。

今回ハードコア・スタイルのヴォーカルがあまり聞こえてこない。
怒号とクリーン・ヴォイスの様式美みたいな使い分けというのとも違う。
すべてがナチュラルだ。
もともとちゃんと歌えるシンガーだし、
内省の感情を込めているのだからナチュラルな方向性とも言える。
アルバムのブックレットでは
女性ベーシストのジーニー・セーガンの担当パートとして“(バッキング・)ヴォーカル”とクレジットされてないから、
もしかしたらすべてフィリップが歌っているのかもしれないが、
ヴォーカルの重ねも絶妙だ。

簡潔なギター・ソロもひっくるめて、
“エモ”だの“エモーショナル”だのといった使い古された“記号”には収まり切らない“歌”である。
切ないサビの曲が目立つ一方でドラムの抜けが良く、
フック十分のソングライティングで際立つ歌心あふれるリリカルな表現だ。
なんにせよ直観が一番正直である。
ちょうど4年前のこの日の夜に東京・渋谷で来日公演を決行したことが象徴するように、
周りがどうであろうと“我は我”というおのれの命を信じ、
おおらかなアメリカン・スピリットで正直に行動。
そういう精神性が本作でもはっきりと息をしている。
他者を責めてばかりで自分を棚に上げて免罪符で塗り固めたウソばかりの言葉に吐き気がする昨今、
物事を突き詰めたハードコア進化形の歌詞もリアルでたいへん素晴らしい。

音は正直。
視界が開ける音像がすべて。
ネクスト・レベルに進んだ良作である。


★オール・ザット・リメインズ『ジ・オーダー・オブ・シングス』(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10071)CD
歌詞掲載の12ページのブックレット封入のデジパック仕様。
日本盤は1曲追加の約53分13曲入りで、
そのボーナス・トラック(歌詞付)を含む歌詞の和訳、
ジャケットのデザインのステッカー付。


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コメント

一般人にとっちゃあ川崎市の事件も3、11も、時が過ぎれば忘れ去られて、さも空の色さえ陽気ですといった感じなんでしょうな。

ゲルマニウムさん、書き込みありがとうございます。
そうてすね、人によって生活状況が異なりますから関心を寄せる対象も人それぞれなのが自然でしょう。あと現在進行形で毎日世界中で様々なことが起こっていて、大きな国の出来事だけでも次々追っていくのも一苦労の状況ですし。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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