なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『和食ドリーム』

和食ロゴデータ


女優・榊原るみのダンナとしても知られる監督すずきじゅんいちが
和食をテーマに取り組んだ107分の映画。
料理の“現場”の方々の仕事の様子や語りに留まらず、
米国に和食を広めるのに奮闘した方も登場し、
和食料理の精神性や彩りと共振してつつましやかに鮮やかに描いていく。

和食は語り尽くされているネタかもしれないが、
2013年12月にユネスコの無形文化遺産に登録されたことが象徴するように世界中で広まっているわけで、
掘り下げ方は無限大である。
この映画では
すずきじゅんいちが『二つの祖国で』などで日系米国人の歴史を綴った映画での経験を活かし、
米国における和食を通して生活レベルの文化や“生”に向き合い、
発見ありあり!のドキュメンタリーに仕上げている。

和食メイン

もちろん美食紹介映画ではない。
精神性にまで深くわかりやすく入っていく。
和食特有のダシの話も面白いし、
“うまみ”に焦点を当てた部分はさらに興味深い。
それこそ高級料理だけでなく縁日の露店などの和食も“うまみ”でキマるわけだし、
寿司などで使われるワサビと語感が似ているのも決して偶然ではない“侘び寂び”の感覚にも通じる。

僕は音楽の文章によく“旨み”という言葉を使うが、
米国にはそういう概念があまりないようで英訳できない日本語とも言えそうだ。
もちろん米国もいいところは一杯である。
ただこのブログでもよく書くように、
2000年代以降のメタルコアやスクリーモ以降のメタル/ハードコア系のヴォーカルをはじめとして、
年々米国のロックは単細胞で奥行きや陰影に欠けるブツが目立っている。
アメリカンコーヒー(あれはあれで一つの味わいとしてあり!だが)が象徴するように、
料理に限らず映画なども含めて“米国の大味”はダシの観念が甘いことが大きいように思えるのだ。

そういう米国の食事情に刺激を与えている和食の状況もクローズアップ。
和食が米国文化全体に少なからず影響を与えていることも想像できる。

和食1

自然を征服するパターンが多い欧州の自分のソースで塗りたくる料理とは異なるのも当然と言える。
和食は自然と共生するように素材を活かす発想なのだ。
たとえば煮たりしたら出てくる灰汁(アク)を残した方がパッ!と味わった感覚だと美味しく思えるようだが、
だとしても和食はアクを取り除くのが基本。
素材のピュアなニュアンスを活かしたいからである。
即物的かつ合理的な感覚よりもストイックなアプローチが和食なのだ。

植物にしても生を絶つわけだからアニミズムにまで言及。
米国を含む多くの外国や地域の一神教と違って日本には神がたくさんいる。
精霊に耳を傾けるのである。

食文化に留まらず“生”に対する意識にまでさりげなく入っていく。
ヴィーガンの考え方とも接点を持つ精進料理も和食ならではだが、
動物性蛋白を使う料理も和食は否定してないわけで
殺生に対する考え方にまで話は進む。

生々しい漢字表記に表われているように、
刺身も“生”と向き合っている“料理”だ。
上質の魚を使えば誰がさばいて切って皿に並べても同じなようで味はまったく違う。
命の絶えた“身”に
研ぎ澄まされた包丁を“刺”し入れることで命を再び与え、
食べるために口の中に入ることで命が蘇る。
そんな話の流れがリアルな“食感”のように描かれていくのだ。

和食2

実のところ僕も見る前は、
多くのドキュメンタリーものみたいに“映画館での上映ではなくテレビで十分では?”と先入観を持っていたが、
スクリーンで見せる必然性のある映画だ。
和食はアートでもある。
和食に取り組んでいる方々はアーティストでもある。
特に凝った撮り方や編集をしているわけではないが、
職人のリアルな“パフォーマンス”と“食芸術”をしっかりと映し出しているのだ。
音楽にたとえれば曲作りやライヴのシーンと曲や音そのものを見せるような作りで、
関係者の語りも映画の大切な要素になっているとはいえ、
その方々の精進した姿や料理そのものの映像力でも魅せる。

映画に限らずインテリしか相手にしてない言葉で正義を説くような上から目線の作品とは別次元で、
懐石料理などの高級な和食を素材のメインに扱おうがあくまでも庶民目線である。
小難しい切り口ではないから、
日頃「学がない」と言っているウチの親でもイケそう。
そもそも食べることはお勉強ではない。
独善が多いドキュメンタリーが目立つ中、
敷居が低く示唆いっぱいの“うまみ”たんまりの美味しい映画である。

食べることの喜びと謙虚な姿勢、
そんなことも考えさせられた。


★映画『和食ドリーム』
すずきじゅんいちが総監督を務めた映画『宮古島トライアスロン』と同時公開で、
4月11日(土)より東京・テアトル新宿ほか以降順次全国ロードショー。
http://www.washokudream.jp/


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コメント

ナショジオの日本をテーマにしたドキュメンタリー番組など好きなので、この作品にも興味をそそられました。
予告編を観て蕎麦が登場して来ないなと思ったのですがスルーされたんでしょうかね(^_^*)

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
興味を持っていただいてうれしいです。色々なヒントになる映画でもあります。
蕎麦には焦点が当てられてなかった気がしますが、ダシ全般はテーマに一つになっています。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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