なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

OVERCAST『Only Death Is Smiling 1991 - 1998』

OVERCAST『Only Death Is Smiling 1991 - 1998』


SHADOWS FALLのブライアン・フェアー(vo)や
KILLSWITCH ENGAGEのマイク・ダントニオ(b)が在籍して90年代中心に活動していた、
米国マサチューセッツ州拠点のメタル・ハードコア系バンドのCD3枚組の音源集。
2008年の(一時)再編アルバム『Reborn To Kill Again』以外に発表した全音源や
未発表のデモとライヴで構成した計45曲入りである。


約68分15曲入りのディスク1には、
94年のファースト・アルバム『Expectational Dilution』の曲、
92年のデビュー7”EP『Bleed Into One』の曲、
93年のオムニバス盤『East Coast Assault』に提供した曲、
93年の7”『 Stirring The Killer』の曲のすべてを収録。
いわゆるニュースクール・ハードコアのスロー・テンポを基調にしつつ、
ときおりスラッシュ・パートを挿入したりアルペジオも使ったりしてユニークだ。
ヴォーカルも含めてセカンド以降のCRO-MAGSのようなハードコアとメタルの拮抗も感じられる。

約69分16曲入りのディスク2は、
97年のセカンド・アルバム『Fight Ambition To Kill』や、
ARISEとのスプリット7”の「Seven Ft. Grin」と
7”『Begging For Indifference』といった96年のレコードの曲に加え、
音質良好なデモも4曲入っている。
ドゥーム・メタルとデス・メタルを噛ませたような渋味もブレンドされ、
より楽曲が複雑なドラマ性を帯びて重くなり、
行くところまで行って活動が止まったことも想像できるサウンドだ。

約71分14曲入りのディスク3は、
セットリストから察するにセカンド・アルバム発表前後の録音と思しきライヴ・テイクが8曲
(ラジオ放送用収録と思しきフォーマンスながらパーカッシヴな顔面直撃音の粗削り具合がナイス)、
続いてデモが5曲(生肉みたいな命の匂いが噴き出している純生音質)、
そして締めは
アーロン・ターナー(元ISIS)のHYDRA HEAD Recordsがシリーズでリリースしていた
BLACK SABBATHカヴァー split 7”EPに提供した「National Acrobat」である。


SHADOWS FALLとKILLSWITCH ENGAGEや、
彼ら以降の一般的なメタルコアほどキャッチーではない。
むしろ一種のカオティック・ハードコアと言ってもいいほどのサウンドで、
90年代のメタル/ハードコア/ヘヴィ・ロックならではの型から逸脱した混沌がたまらない。
どう転ぶかわからない危うさ一杯で何かが生まれる瞬間の創造のエナジーで溢れ、
体裁を整えた“優等生”にはない未完ならではの興奮が味わえる。

OVERCASTは曲も音もパンク・ロックとは違うが、
天然で巧く歌えないブライアンのプリミティヴなヴォーカルはパンクと言える。
いい意味で変わってないとはいえ、
やはり今よりも色々な発声を試行錯誤している様子がうかがえて生々しく初々しく、
シャウトにしても苦闘しているような調子で様式美に成り得ないのだ。

ブックレットのライヴのフライヤーの写真で対バンがわかり、
そこに載っているメンバーのTシャツの写真では彼らの多彩な音楽の好みもわかる。
彼らがどういうフィールド/シーンで揉まれ、
どういうバンドを体験してきてこういうサウンドが生まれたかもさりげなく伝わってくるのだ。
CD3枚組ながらお値段抑え目のグレイト・リイシューである。


★OVERCAST『Only Death Is Smiling 1991 - 1998』(BULLET TOOTH BT041)3CD
マイクがデザインを手がけた20ページのブックレットには、
個々の曲を収録したレコード/CD等の詳細な解説も載っている。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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