なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ジョニー・サンダースの軌跡』

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NEW YORK DOLLSやHEARTBREAKERSでパンク・ロックの真のルーツにもなった、
ジョニー・サンダース(g、vo)のドキュメンタリー映画。
映画『ザ・ライズ・アンド・フォール・オブ・ザ・クラッシュ』で崩壊時期のCLASHに焦点を絞った
スペインのダニー・ガルシア監督らしく、
ファンによっては伏せておきたい知りたくないような暗部も容赦なくえぐり出した“痛快作”である。

ジョニー・サンダースの映像や写真をちりばめながら生前の本人と関係者の話で軌跡を追う、
音楽ドキュメンタリー映画の王道の作りでまっすぐなヒストリーものだ。
主な登場人物は以下のとおりである。

ジョニー・サンダース、シルヴェイン・シルヴェイン(NEW YORK DOLLS)、アラン・ヴェガ(SUICIDE)、
レニー・ケイ([元]Patti Smith GROUP)、ボブ・グルーエン(写真家)、テリー・チャイムズ(元CLASH)、
ピーター・ペレット(ONLY ONES)、サミ・ヤッファ(HANOI ROCKS~NEW YORK DOLLS)、
ウォルター・ルー(元HEARTBREAKERS)、ビリー・ラス(元HEARTBREAKERS)、
マルコム・マクラーレン(NEW YORK DOLLS~SEX PISTOLSの元マネージャー)。

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<NEW YORK DOLLS>

昔の映像は熱心なファンにとってはお馴染みのものも含まれているが気にならない。
次々と色々な人の話が入れ代わり立ち代わりの作りなのだが、
せわしなさは感じさせずにテンポのいい絶妙の構成で一気に見せる。

生い立ちや少年時代、“自身が築いたはずの家庭”といったプライヴェイトな話は欠かせないわけだが、
音楽ネタも盛りだくさんだ。
全体の3分の1ほどはジョニー・サンダースのというよりNEW YORK DOLLSの話題だが、
HEARTBREAKERSを経てソロになってからの話が特に貴重である。
パンク・ロックンロールのスタイルを作ったギターやソングライティングやの秘密も含めて
マニアも嬉しいネタをちりばめつつ、
初心者にも敷居が低いのは、
ジョニー・サンダースの持ち味の庶民性を制作者が映画自体にも反映させているからだ。

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<HEARTBREAKERS>

お馴染みのミュージシャン等だけでなくジョニー・サンダースの身近だった人たちの話も含めて、
言いたい放題のトークをしっかりまとめた作りもグレイトだ。
発言を取捨選択して編集した制作者のジョニー解釈が表われているわけだが、
過去の様々なネタを総合してもこれがパブリック・イメージでありファンのイメージでもあろうし、
大筋間違ってないと思う。
馬鹿の一つ覚えのホメ言葉で崇めたてるような奴に用はない!とばかりに、
自分自身の言葉でジョニー・サンダースを語っている人しか出てこない。
とにかく本音で勝負する。
ほとんど人たちが見事なまでに遠慮無し。
“ロマンチックなロックンロール神話の横行”に対して話さずにはいられないとばかりの勢いなのだ。
RAMONESの映画/DVD『エンド・オブ・ザ・センチュリー』を思い出すほどの
ハードボイルドなリアリズムがたまらない。

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なぜ日本ではこういうハードコアな姿勢で迫った音楽ドキュメンタリー映画があまり作られないのかも
あらためて考えされられた。
明らかに外せない要素にもかかわらず暗部を隠蔽するのは政治だけの話じゃない。
都合のいい部分だけをピックアップするのはなまぬるくて真剣に向き合ってない証拠だし、
ネガティヴな要素から逃げずにブチ込むのが相手に対する誠実さってもんであり、
そもそもそういう部分を外して馴れ合った作品がエキサイティングなものになるわけがない。
映画に限らずミュージシャンの圧力に屈したりレーベル側の要請で内容が改悪されたりもしている。
映画全般にしても
対象に向き合い切ってなかったり踏込みが甘かったりといった覚悟を決めてない作品が目立ち、
イライラするほど中途半端で物足りない。
日本のミュージシャンのドキュメンタリーの“例外作”としては
親子関係が強調された仕上がりになっていて本人が閉口していた『友川カズキ 花々の過失』が挙げられるが、
あれはフランスの監督による映画だった。

“身内”だろうが、
いや身内のことだからこそ正直に話す。
たとえばDEEP PURPLEの『ライヴ・イン・ジャパン~ドキュメンタリーDVD』
(『ライヴ・イン・ジャパン』【SUPER DELUXE BOX】に付いていたDVDの単体リリース作)も、
よくぞまとめた一枚である。
いわゆる第二期のメンバー全員があれだけ本音を吐いたからこそ、
紆余曲折を経て当時の3人が今も一緒にDEEP PURPLEをやっていることが示されている。

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この映画の関係者たちは
ジョニー・サンダースに対して誠意を込めて向き合っているからこそ裏表無しで語っている。
本音だから「ジョニーは何でも極端な男だった」「ジョニーはとにかく人から愛さたれかった」など、
シンプルな言葉でジョニー・サンダースを的確にとらえた発言が多い。
曲が流れる時にも歌詞の和訳の字幕が適宜付き、
あまり語られない歌詞の世界も堪能できる。
たとえばHEARTBREAKERSの「All By Myself」は
ジェリー・ノーラン(ds)とウォルター・ルー(g、vo)のソングライティングだが、
ジョニー・サンダースについて書いた歌詞のように聞こえる。

「俺のやっていることは誰かの物真似だ」という発言をはじめとして、
ジョニー・サンダースも自分自身のことをよくわかっていた。
臆病で自己愛が強くて極端にわがまま。
それは猥雑なロックンロールの真実である。
ロックンロールは作るものじゃない。
醸し出されるものだ。

絶賛すべき功績がデカい人ほど二律背反でダーク・ゾーンも深いのは世の常ってもんである。
グレイトなところをグレイトなまま描くのと同じく、
ロクデナシなところもロクデナシのまま描く。
マキシマムな愛をこめて、
そんな映画だ。

さんざん悪いことをしてきた罪ほろぼしの如く
絵に描いたような不良のロックンローラーやパンクスに限って年喰ったら善人を気取って正義を語ったりもするが、
ANAL CUNTのセス・プットナムと同じくジョニー・サンダースも最期までそんなことなかった。
そうやって死ぬまでブレずに“Like A Mother Fucker”な方が僕は好きだし、
信用(not信頼)できる。

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おびえているかのように
うつろな目のジョニーの語りはいつでも生々しい。
終盤ではジョニーの死に対する諸説が語られるが、
すべてが正解に思える。
そういう重い話のところもあるが、
まったりしたピード感で突き抜けていく映画全体の作りも特筆したい。


★映画『ジョニー・サンダースの軌跡』
2014年/98分/スペイン/モノクロ・カラー/16:9
4月25日(土)より新宿シネマカリテにてモーニング&レイトショー。
全国順次公開。
http://www.curiouscope.jp/JOHNNY/


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コメント

NEW YORK DOLLSの2nd「悪徳のジャングル」がお気に入りでたまに聴くので、この映画を観たいと思います。
現在そのCDが期間限定の1000円で売られているのですが歌詞対訳が付いてないようなので映画で歌詞の世界を堪能したいと思います。

エンドオブザセンチュリー、映画館で観てショックを受けたのを思い出します。
バンドの内情を少し知ったからといってバンドに対する思いは変わらず今も聴きまくってます。
カッコいいものはカッコいいと。

これも、告知が始まってから待ってる1本です。

ハードボイルド。
エンドオブセンチュリー、まさにそうでしたね。
観た後は、さすがに気分が高揚するわけでもなく、リアルが突き刺さったまんま帰ったのをよく覚えてます。

ますます、行く気満々です。

ありがとうございます。

書き込みありがとうございます。

>余分三兄弟+さん
NEW YORK DOLLSのセカンドは、ジョニー・サンダースがリード・ヴォーカルをとった「Chatterbox」がHEARTBREAKERS~パンク・ロックに直結していて、僕にとっても大切なアルバムです。
こういうロックンロール・バンドの歌詞は取りざたされないことが多いですが、どーってことがない内容にも見える歌詞も頭デッカチではなくプリミティヴだからこそ正直で真理を突いている表現が多いのです。

>LIFEさん
映画『エンド・オブ・ザ・センチュリー』はRAMONESの深さの一因を露わにした傑作ですね。パンクや音楽映画以前にドキュメンタリー映画として歴史的な作品です。ストイックなステージングにも表れていたようにソングライティングをはじめとして真剣勝負だったってことです。そんなRAMONESがアルバム・デビュー時のメンバーすべて既に他界しているというのも、やるせないです。
様々な意味でRAMONESの同志と言えるジョニー・サンダースも。曲はキャッチーでメロディは甘くても、聴いた後は苦かったりもします。そういうところに人間の本質が生きていると思います。

やっと観れました

個人的にジョニーサンダースはどちらかとゆうと好きぐらいだったのですが、観た後は好感度が上がりました。

公開記念Tシャツも売れてるみたいでしたね。(5月5日時点で)

今後はいつロックの殿堂入りするのか楽しみです。

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
やっていたことはベーシックなロックンロールでドラッグ以外にスキャンダル要素は少なかったですから、意外と話題にならない人ですが、やっぱり“ウソ”がないから奥が深いです。ロックの殿堂入りも不思議はないですね。映画も観ていただけて嬉しいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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