なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『アルプス 天空の交響曲<シンフォニー>』

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ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、スロベニア、リヒテンシュタイン、スイスという、
ヨーロッパ7ヶ国にまたがるアルプス山脈をテーマにした、
2013年のドキュメンタリー映画。
女優・小林聡美がナレーションを務めている。

アメリカの諜報局が開発した機材でヘリコプターに搭載して使うシネフレックスカメラによる撮影で、
まさに風光明媚な景色の鮮やかな映像美で迫る。
ほんと目が覚めるほどで、
これはやはり映画館のデカいスクリーンでこそ映える映像だ。
動きがほとんどないにもかかわらず息を呑みダイナミズムなのである。
でも単なる“自然賛歌”みたいな作品とは一線を画し、
示唆に富む作品に仕上がっている。

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遠めのカメラで人間も映し出されるが、
動物も含めてすべてがアルプスの“一要素”として描かれる映像だ。
自然界は“人間中心”ではないことをほのめかしているかのようである。

農牧業や観光業などの生活、レジャー、交通など、
アルプスに関わる人間の行ないのほとんどが覚悟を決めないとできない。
その中で文化、文明、“生命”を問い、
支配ではなく自然との共存、いや共生を鮮やかに描く。

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大昔から風や雨もじわじわとアルプスにダメージを与えてきて岩石などに影響が表われているが、
アルプスの脅威はやはり人間である。
水不足の問題をはじめとする水にまつわる話も興味深い。
水車→ダム→水力発電といった具合に、
人間が便利な生活を送ろうとするため山間等の水資源を利用して作った設備でアルプスは改造され、
“水路変更”が行なわれたことで様々な障害が起こっていることも示す。

20世紀頭の第一次世界大戦の際に最前線となり、
進軍等のために崩されて山の形状がおかしくなったままのアルプスも存在する。
これもまた“戦争の傷跡”なのである。

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でも、いわゆる自然の中で生きる原始生活は現実的ではない。
険しい環境の中で人と人とをつなぐために人間はアルプスを“画のキャンバス”にもできる。
景観も大切にしつつ“保存”とも“侵略”とも違うオルタナティヴな“道”も築かれてきた。
遠くからしかわからないにもかかわらず道路を敷くのに、
遠めからの見栄えの良さを重視した“アート”も豊かな道筋で表現されたりもしている。
これもまた自然と人間とのハーモニーに映る。

現実的といえばアルプスで生活するためにもお金や飲食物は必要なわけで、
昔は日本にも存在した“通行税”のその一つ。
雹(ひょう)が降ったらリンゴ園のリンゴが全滅するから人口雨を降らせる話もその一つ。
ある意味自然と戦いながら、
やはり共生しているのである。

もちろん社会的な話だけではない。
クレイジーなドイツ・バイエルンの王が昔アルプスに作らせた城の話も面白い。
スポーツや絶壁登頂など
いわゆる生活に直接関係ないことに命懸けの人々がアルプスに向き合い続けていることも、
その圧倒的な存在に魅せられているからだと納得もさせられる映像だ。

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すべて説明的な構成を取らず滑らかに展開され、
理屈っぽくもなくダイレクトで気持ちいい。
何かを“支配”したがる意識の表れと言える小難しい言葉を使いたがるような敷居の高さはない。
盛りだくさんの内容ながらポイントを押さえてまとめられていて発見多数の映画である。


★映画『アルプス 天空の交響曲<シンフォニー>』
2013年/ドイツ映画/93分/ビスタサイズ/デジタル5.1ch/
原題:A Symphony Of Summits The Alps From Above
4月18日(土)シネスイッチ銀座ほか、全国順次ロードショー。
©VIDICOM 2013
http://alps-tenkuu.com/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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