なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Ché-Shizu(シェシズ)『約束はできない』『瞬きの星』

向井千恵(胡弓、vo、p他)が中心になって80年に東京で結成されたバンドの2作が再発されている。
共に音質良好なライヴ・テイク(今回の2枚の中での曲のダブリ無し)のボーナス・トラックも含めて、
収録曲とマスタリングは
今回の発売元の日本のALCHEMY Recordsが以前発売したCDと同じだが、
ディストリビューターが変わった関係でそれぞれ新たなカタログ・ナンバーが振られている。


ARCD233.jpg

『約束はできない』は84年12月25日にZERO Recordsから出たLPがオリジナル盤のデビュー・アルバム。
日本の音楽云々以前に世界的に名盤であり、
今回のCDは当時のライヴの2曲が追加された計55分13曲入りだ。
向井の他のメンバーは、
長きにわたる向井のバンド・パートナーでありここ数年はみみのことなどで活動している西村卓也(b、vo)、
MAHER SHALAL HASH BAZを主宰する元NOISEの工藤冬里(g、p、vo)、
そして高橋朝(ds)である。

VELVET UNDERGROUNDのファーストのニコが歌った曲も思い出すが、
よくいる“ニコのパチモン”みたいなのとは別次元の
“ロックンロール・イメージ”から解き放たれた空間で向井が歌い彷徨う。
二胡奏者として注目されることが多い印象の向井だが、
まだ初々しい歌声でシンガーとして凛然と突き放して引き寄せる磁力に痺れる。
世界的にもっと認知/評価されてしかるべき音楽家だ。

ロシア民謡をアレンジした「カチューシャ」「黒い瞳の」をはじめとして、
欧州圏の民謡の旋律にも彩られている。
立ちはだかるものに構わず悠然と哀愁が屹立してゆっくりと進む音楽である。
計5曲のソングライティング関わっているだけに工藤の色も濃く、
すぎやまこういち作曲で原題はハングル文字で表記されているサーフ・チューン「(プレパダ)」などで
作詞にも関わり、
工藤特有のさりげないポップ感も忍び込んでいる。

もちろん天然のサイケデリックだ。
誤解を恐れずに言えば早すぎた“和のオルタナティヴ・ロック”にも聞こえる。

ボーナス・トラックのライヴ・テイクには小山景子(kbd)も参加している。


ARCD234.jpg

かたや『瞬きの星』は、
もともと99年の10月に自主レーベルのアリューシャン列島RecordsからLPで250枚リリースした実質的な5作目で、
目下の最新オリジナル・アルバムでもある。
こちらは3曲を当時のライヴ・テイクで追加した約63分7曲入りだ。

向井と西村の他、
小間慶太(g、vo)と高橋幾郎(ds、vo)がメンバーである。
小間は79年に数ヶ月間在籍したINUの二代目ギタリスト、
つまり『牛若丸なめとったらどついたるぞ!』と『メシ喰うな!』の間の
INUの“ミッシング・リンク”のギタリストとしても知られる。
高橋幾郎は元HIGH RISE~MAHER SHALAL HASH BA~光束夜で、
この数年前に加入した不失者を数度目のピークに引き上げるなどバンドの骨格を変える歌心溢れるドラマーであり、
エレクトロニクスも操る音楽家であり、
現在は血と雫などで活動している。

リリースまもない頃にライヴを観に行って感動して即その場でこのレコードを買ったことを思い出す。
向井と男性メンバー一人一人のヴォーカルが掛け合う1曲目の「よみがえる」で震えて圧倒されたことも蘇る。

本編は全4曲、
というわけでどの曲も長尺だ。
全曲向井が書いているから向井の色が濃厚で、
曲が長いとはいえ『約束はできない』よりも曲はストレートに聞こえるが、
むろん各メンバーの音のズラしなどでふくらませている。
すきまの多い音作りながらアレンジを変えればドゥーム・ロックに深化すること必至なほど曲調はヘヴィだが、
ゆっくりと突き抜けようとする力が格別なのだ。

阿佐ヶ谷コミュニティ・センターと高井戸コミュニティ・センターという、
東京杉並区のローカルな場所でレコーディングを行なったことも興味深い。
一般的なレコーディング・スタジオの狭いスペースときは違う空間で録ったがゆえの、
音圧で押すサウンドとは真逆の“生演奏”の仕上がり。
いわゆるコンプで音圧を上げて“人工的”に作った昨今多いCDとは違い、
ヴォリュームつまみを上げてリアルな音像を楽しむ作りになっている。
さらに追加されたライヴ・テイクではよりダイナミックなサウンドが味わえる。



向井さんとは住んでいる(いた?)場所が近く、
ステージでの凛とした佇まいとは一味違う生活感が溢れる姿の彼女と街中で出会って
びっくりしたことを思い出す。
90年代はよく電話もいただいたが、
僕の冷たいあしらいで関係が切れてしまった気がするから
久々に聴いて個人的には自省の念に駆られた2枚でもある。

またライヴが観たい。


★シェシズ『約束はできない』(アルケミー ARCD-233)CD
★シェシズ『瞬きの星』(アルケミー ARCD-234)CD
どちらもLPのインナーシートに準じたデザインの四つ折り歌詞カード封入。
『約束はできない』は本編の歌詞のみ掲載し、
『瞬きの星』の方はボーナス・トラック3曲分も載せて全歌詞の英訳付だ。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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