なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『白魔女学園 オワリトハジマリ』

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でんぱ組.incがメイン・キャストの映画。
一昨年公開の『白魔女学園』の続編だが、
僕がそうだったようにこの映画から見ても問題なく楽しめる。

『けいおん!!』や『ガールズ&パンツァー』などで知られる吉田玲子が脚本で、
『仮面ライダーフォーゼ』や『獣電戦隊キョウリュウジャー』などで知られる坂本浩一が監督。
アニメっぽいファンタジズムとリアリズムが溶け合って荒唐無稽を越えたストーリーと、
セクシー・アクション・シーンとの交わりで魅せる。
観る前は完全にタカをくくっていた僕だが、
ネガティヴな予想は突き抜けた表現によって見事に裏切られた。
でんぱ組.inc(最上もが、夢眠ねむ、古川未鈴、成瀬瑛美、藤咲彩音、相沢梨紗)の他の主な出演者は、
小池里奈、市道真央、鳥居みゆき、山谷花純、ほのかりん、桜野羽咲、戸松遥、斉藤秀翼である。

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白魔女学園は、傷つき、痛みを抱えた少女たちを迎え入れる秘密の園。
訓練(エチュード)によってその心に最も深い傷を負った少女・もが(最上もが)は、
白魔女となって“世界”を救うために旅立った。
そんな彼女の前にもうひとりの白魔女・りな(小池里奈)が現れる。
彼女たちの周りには白魔女を敵視して魔力で新たな世界を創造せんとする黒魔女たちがいた。
黒魔女によって捕らわれたりなを救うため、もがは黒魔女学園へ潜入。
だが、そんなもがの前に、かつて白魔女学園で共に過ごした少女たちが立ちはだかる。

シンプルに言えば究極の魔女の座を巡る白魔女と黒魔女の戦いの物語で、
白魔術と黒魔術からのインスピレーションもイメーシ的にはありそうだが、
いわゆる白か黒かで善悪を単純に分けることもできない映画だ。
白魔女は他人の痛みが自分の痛みとなって傷になって刻まれて生き、
基本的に人間を信じ、
男を信用してないわけではないが、しいたげられた少女たちを助けたい思いが強い。
黒魔女は欲に溺れた人類から世の中を良くするためには手段を選ばず、
男を信用せず、
血を舐めると莫大な力が出るなど他人の痛みを力とする。

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脚本は吉田だから偶然だろうが、
タイトルは坂本監督の映画『009ノ1 THE END OF THE BEGINNING』(2013年)の流れを感じる。
おわりのはじまりに向かって、
はじまりのおわりに向かって、
ある種の“最期”に向かって、
緩急交えながら映画全体がずっと加速している。
何しろテンポがいい。
無駄なシーンがほとんどないからであり、
そう見えるシーンも一種の“遊び”の要素だから映画全体のリズムがキープされているのだ。
静と動で緩急の波を作り出している三澤康広の音楽も一役買っている。

適宜CGを使いつつ安っぽさに陥ってない。
ギミックでごまかさず、
けっこう真向勝負の映画だ。
ちょいエロチックなアクションといいと鮮烈な映像処理といい、
違う世界に連れて行きつつ実世界ともリンクした作りだから、
でかいスクリーンで味わいたい映画の醍醐味いっぱいなのだ。

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“戦い”もほとんどは女性同士のもので、
ほんのりとレズビアンの香りも漂ってくる。
そういったアクションは坂本監督の映画だと
『009ノ1 THE END OF THE BEGINNING』(2013年)や『赤×ピンク』(2014年)の流れをくむ。
多少スタントの人も使われていると思われるが、
最上もがをはじめとしてアクション・シーンもみんな健闘。
前述の2作のように露骨なシーンはないにしろアイドル・テイストのセクシー・アクションは惜しげもない。
ホラー映画みたいな血と肉のシーンもないが、
観る人のサディズムをくすぐる場面も多く
(その一方でマゾな男性ファンの劣情を刺激するシーンを設けてあるのも心憎い)、
最上もがと小池里奈がいたぶられるシーンはなかなか生々しい。

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特に主演の最上もがの熱演ぶりが光る。
でんぱ組.incはミュージックマガジンの昨年の8月号が出るまで名前すら知らなかったし
今もちゃんと聴いたことがないグループだが、
加虐性と被虐性を併せ持つ最上もがの醒めて冷めたペシミスティックな存在感は、
演技ではなく彼女の“地”に見えてくる。

自分が戦った者たちは砂山が崩れ落ちるような消滅するから、
もががギリシャ神話に登場するメデューサのようにも映る。
みんな“死んで”一人だけ生き残り、
一人で戦ってきた。
でも一人じゃないのかもしれない・・・
そんな臭い言葉がリアルなメッセージにも見えてくるのだ。
もがが終盤につぶやく「作るわ、私の望む世界を」という意志の言葉も、
どうってことないようで妙に惹かれる。

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すぐれた映画かどうかなんて知ったこっちゃない。
とにかく最近の日本映画に目立つダメなパターンを裏切っている。
余計なお世話をせずに観る人の想像力にゆだねるラスト・シーンもいい。
外国映画にも多いエンド・ロールで流れる音楽の歌詞で“付け足しのメッセージ”をしないところもいい。

心地よい目覚めの余韻が残る。


★映画『白魔女学園 オワリトハジマリ』
94分
6月13日より全国ロードショー。
(C)2015「白魔女学園」生徒会
http://www.shiromajo.jp


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コメント

まさか行川さんのブログでこの手の作品が取り上げられると思わなくてかなり驚いてしまいました。
自分もこの手のものにはネガティヴな目を向けがちですが、これは流石に気になるので機会があればチェックしてみようと思います。

EGさん、書き込みありがとうございます。
でんぱ組~への先入観で、試写会のお誘いがなければ僕も見ることはなかったと思いますが、坂本監督の“特撮感”と“エロチック感”が肌に合うようです。『009ノ1~』はチケット買って観ましたし。いわゆるアイドルが主演の映画で悪い意味で考えさせられる映画も多いですが(ほとんど更新しないツイッターでチラリと言及しています)、これは、それこそ仮面ライダーを観る感覚でも楽しめます。
いわゆるアートな映画も好きですが、ただスノッブがありがたがっているだけのものも多いです。一方わかりやすい映画やエキセントリックな映画が注目を集めがちで、グレイトな映画が苦戦を強いられたりして音楽シーンと同じくしょっちゅう不条理を感じたりしますが、色々観る機会をいただいて色々観ると、“見えてくるもの”があります。そういうことをブログで書きたいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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