なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Diane Birch ライヴat渋谷クラブクアトロ 2009年12月10日

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ニューヨーク在住シンガーソングライターのダイアン・バーチが、
今年リリースしたファースト・アルバム『Bible Belt』をひっさげて敢行した日本ツアー最終日である。
超満員だったが一緒に観に行った人のパワーでステージ前から数列目のポジションをゲット。
そんな観客の熱気に鼓舞されたかのように彼女のパフォーマンスも期待をはるかに上まわり、
まさに“bible beltが解かれた夜”となった。


オープニング・アクトのマット・カーニーのライヴ終了後にさほど待たせることなく、
ギター、ベース、ドラム、トランペット/タンバリンの4人のバック・バンドのメンバーに続いて、
ダイアン・バーチが登場。
彼女がステージに姿を現した瞬間にあちこちから溜め息にも聞こえる言葉にならない声が漏れ。
「かわいい…」という声もちらほらだったが、
クール!そのものだ。

背が高い。
170センチは優に越えている。
脚が長くスレンダー。
いわゆるモデル体形だ。
美形かどうかはわからないが、
一瞬のうちに引きこむヴィジュアルの大切さも再認識。
目の周りをはじめとして彼女が昔のめりこんでいたゴスのメイクをキープし、
ほぼ黒でビシッ!キメて引き締めて地に足の着いた凛然とした佇まいにいきなりヤられる。
といっても妙に芝居がかったポーズをつけることはなくすべてが等身大の表現。
だからこそ響いてくる。

ライヴはR&Bとゴスペルをブレンドしたように“ハレルヤ~”と歌う「Forgiveness」からスタート。
ステージ前方に出てきて中央に立てられたスタンディング・マイクで歌い始めたが、
その曲の途中からピアノの前に腰掛けて弾きながら歌う展開がしなやかでカッコよくてヤられた。
続いて『Bible Belt』ではレニー・ケイ(Patti Smith GROUP)がギターを弾いていた「Choo Choo」で、
アルバム中いちばん疾走する曲をさらにパワーアップ。
まるでウィルソン・ピケットとルー・リードとNEW YORK DOLLSが、
ピアノとまぐわい歌うダイアン・バーチを介してセッションしたみたいな“ソウル・ロックンロール”だ。
アルバムの中でも突出したカラーの2曲をいきなりヤってこっちも点火させられ、
3曲目の「Nothing But A Miracle」以降の記憶がしばし飛んでしまった。

左側にピアノ、中央にRhodesの白いエレクトリック・ピアノを配置し、
大半の曲はバック・バンドの演奏と共にそれらの鍵盤楽器を弾きながら歌った。
特に様々なポピュラー・ミュージックの伝統や伝説ゆかりのRhodesを弾いたことにこだわりを感じさせる。

まったりした曲も多いから、
キャロル・キングやローナ・ニーロ、アレサ・フランクリンが引き合いに出されるのもうなずけなくもない。
ただ彼女はシンガーソングライターの“優等生”じゃない。
父親の影響でキリスト教の空気を吸って育ってきた品の良さもチャーム・ポイントだが、
そういった宗教的なニュアンスがねじまがったゴス・ロック上がりならではと言えるフットワークの軽さも、
ダイレクトに伝わってきた。
アップテンポの曲でピアノを叩きながら歌う姿はリトル・リチャードも思わせる“ロックンロール”。
激しい曲では弾きながらいつのまにかヘッドバンギング。
お里は隠せない。
場末のバーみたいな雰囲気も漂うニューオリンズのジャズのホンキートンクなピアノも聞こえてきた。
ゴスペルの厳粛な空気にロックンロールの俗っぽく荒っぽいビートがブレンドされた感覚がたまらない。

Diane Birch 4mid

「アリガトウゴザイマス!」と言ったMCの時の声がくだけた調子だったのは、
不慣れな日本語ゆえの偶然ではなく彼女のキャラだろうし、
ゴス&キリスト教の慎み深いイメージとのギャップが面白い。
バック・バンドのメンバーとの付かず離れずのコミュニケーションも絶妙。
ベテラン・ミュージシャンにバックアップされたステージではなく、
同年代と思しき手垢に染まってない面々と一緒だからこそ、
ヴァイブレイションが共振して瑞々しい歌の粒が弾き出されていた。
途中ダイアン・バーチが鍵盤楽器から離れてステージをぐるりと一周し、
手で打っていたタンバリンをトランペット奏者に放り投げて自然体でキャッチされたシーンなど、
おちゃめであると同時にスマートなステージングも鮮やかだ。

ダイアン・バーチの歌唱自体も凄みを増していた。
アルバムのレコーディング以降もライヴを重ねて鍛えたのであろう、
声の出方が明らかにワイルドになっていたのである。
基本的には熱いシンガーではないが、
ビシッ!と歌い切っている。
聴きやすい“一冊のアルバム”としてすっきりまとめられていた『Bible Belt』とは一味違い、
しとやかでありながらライヴではおてんばなところも見え隠れ。
しっかりした発声で、
“セックス、ドラッグ&ロックンロール”ならぬ
“ゴシック、ゴスペル&ロックンロール”のラフな響きがまっすぐに迫ってきた。

トム・ペティのカヴァーもやり、
アンコールの最初にはクリスマスを迎えるべく「Jingle Bells」も披露。
再アンコールを求める声が止まなかったのも当然の微熱が消えぬライヴだった。

お客さんには会社帰りと思しき男性が多く、
年齢的には決して他人のことは言えないがオヤジの姿も目立った。
それはそれでイイことではあるが、
ダイアン・バーチのコスプレをした“ダイアン・バーチ・チルドレン”の女の子が少ないのが意外でもある。
一緒に観た人が終演後の呑みの場で言っていた。
もっとそういったファッションの若い女性にアピールするはずだし、
音楽的にもパイプ・オルガンを弾くようなライヴも観たいと。
無限に可能性が広がっているシンガーソングライター/アーティストであると同時に、
いい意味で大メジャーに成り切らなさそうなアクの強さも魅力だが、
次回の来日公演では手を伸ばしても届かない所でライヴをやるポジションになっていそうな予感もする。


個人的には、
前売りチケットを握りしめてライヴを観に行くという音楽ファンの原点に戻ってリフレッシュ。
忘れ去り置き去りにしていた感覚を呼び戻した。
普段聴いていている系統と違うものに接すると発見がたくさんある。
パンクやハードコアのライヴは昔から楽しんで観ることはほとんどないのだが、
やっぱりこういう楽しむライヴもいいなぁ……と、
当たり前のことを思ったしだい。


画像は2枚共、(C)EMI Music Japan Incです。


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コメント

今年

行川さんがブログにあげなければ多分聴いていなかったアーティストです。ライブは行けませんでしたが、今年のベストに入るアルバムだと思っております。

音楽ってこうやって広がればいいですね!

kogaさま、書き込みありがとうございます。
ブログではあえて振り幅広くやっていますが、うれしいリアクション、ぼくも元気が出ます。
メイン・ストリーム/メジャー・シーンに疎いため、ぼくもプロモーションを受けなければたぶん聴いてなかったシンガーソングライターです。
こういう“偶然”の出会いを大切にしたいとあらためて思っています。
今後ともよろしくお願いします。

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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