なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

井上侑 at 東新宿・真昼の月 夜の太陽 5月31日

井上侑 ずっと好きだった


愛媛県松山市生まれで東京都練馬区育ちの2007年CDデビューのシンガーソングライター、
井上侑のワンマン・ライヴ。
サークルKサンクスとK-mixの共同開発商品“みかんの炭酸水 そうだ!ちゅう”のオリジナル・ソングがタイトル曲の、
2015年 第1弾シングルの3曲入りCD『ずっと好きだった』(↑の画像がジャケット)先行リリース・ライヴで、
“うたう”と題されたコンサートである。


路上も含めて毎年120本以上のライヴ活動を続けている人である。
ワンマン・ライヴは毎回場所を変えてやる人でもあり、
僕も“こんなライヴ・スペースがあったのか……”と毎回フレッシュな気持ちでステージに向かい合える。
どんどんどんどん曲を作って出来立てホヤホヤ新鮮なままライヴで披露していくスタイルというのも相まって、
同じライヴは二度としない人でもあるから毎回驚かされるのだ。

とはいえ僕も2年ぶりのライヴ。
他の人を観るために出向いたライヴ・ハウスでたまたま観てまっすぐなプレイに殺られ、
当時唯一の単独作のデビューCD『さようなら』(2007年)とオムニバスCDを物販で即買った時は子供っぽかったが、
久々に観て巻き髪が目立つ“イイ女モード”になっていてビックリした。

とはいえ変わってない。
根がシャイながら根がオチャメで愛嬌たんまり。
礼儀正しい本質的な意味での“芸人”である。
彼女が意図してなかろうがちょっとしたトークや失敗で失笑させるたくましいステージ運びは、
色々な場での超精力的なライヴ活動で鍛え上げられてきたからに他ならない。

もちろんそういう砕けたところは音楽がビシッ!としているからこそ映える。
彼女みたいにピアノが核のシンガーンソングライターには合わない言葉なのを承知の上で書くと、
気合が入っていた。
確実に、確実に、さらに、パワーアップした喉を震わせてパンチの効いた声をポップにぶつけてきた。


滑らかでリズミカルな演奏の(電子)ピアノを弾きながら歌うことでヴォーカルが活きるミュージシャンだし、
その弾き語り独演でのライヴが中心の人だが、
この晩は弾き語り独演スタイルをほとんど封印したのがポイントだった。
前半と後半は電子ピアノを弾きながら歌ってはいたが、
越智祐介(ds、p、コーラス)と平田崇(g、b、コーラス)がほとんどの曲でサポートし、
スペシャル・ゲストとして終盤では前島風(g、コーラス)も参加した。

井上侑20150531

今回のライヴのキーワードである“うたう”が際立ったのは井上がヴォーカルに専念した中盤で、
特に越智が電子ピアノを弾いて井上侑が“高椅子”に腰かけながら歌うコーナーが新鮮だった。
バンド演奏をバックにして井上がヴォーカルに徹するコーナーはこれまでも何度か観たが、
自分でも弾けるピアノを他のミュージシャンが演奏しているかたわらで井上が歌うだけのシーンはレアだ。

そのコーナーで井上は自作曲だけでなく
槇原敬之の「LOVE LETTER」や子供の頃に合唱団や声楽をやっていた時の曲も披露。
特にその後者では、
か細いようでストロングな井上の発声や作曲に潜むクラシックの要素のという彼女のルーツをさりげなく覗かせ、
歌わせてもらえていることに対する感謝を込めた曲「歌よ ありがとう」のカヴァーでは井上が感涙。
その曲が終わった後すかさずバンド・メンバーの平田が出てきて
涙で目の周りのメイクが崩れかけた井上に“化粧直し”を薦め、
越智は井上の隠れ名曲「ポテト」を電子ピアノで弾き始めて平田が続いて弾くナイス・フォローを行ない、
ステージに再登場してきた井上がその歌詞の“ぼくは おいもに生まれたよ♪”と歌で入る
嬉しいハプニングもあった。


井上侑のライヴを久々に観て、
こんなに歌うのが好きなことが伝わってくる人はいないとあらためて思ったし、
こんなに歌う喜びを全身から発している人はいないとあらためて思った。
なにしろ歌っているときの顔がいい。
思いっきり笑顔なのか目を閉じているか判別不能なのだが、
思いっきり歌の世界に入り込んでいるがゆえにそうなる井上の顔が大好きだ。

歌うだけでなく個性いっぱいの作詞作曲の才覚にも生で感じてあらためてうならされた。
彼女自身はそんなに親しんでなくてそういうアーティストに影響された歌手には触発されてそうだが、
70年代の米国の歌ものポピュラー・ミュージックをポップにアップデートしている。
もちろん時間をかけて作っている曲も多いが、
ちょっとしたモチーフでの速攻ソングライティングも得意。
だからわざとらしい作為の入り込む余地がなく曲が純なのである。
3曲すべてが静岡ゆかりのセレクションの最新シングルのCD『ずっと好きだった』に収録で、
歌詞に出てくるヤブ蚊と格闘するアクションもライヴで見せた曲「高速道路~浜松北のバス停で~」もその一つだ。

ラヴソングも増えてきているが、
“飲食物ネタ”の曲が目立ち、
そういう曲は取りも直さず突き詰めれば生物に関する歌になる。
実際“動物ネタ”の曲も多いのだが、
人間だけでなく生き物(≒食べ物)への感謝を謙虚な姿勢で綴って個人的に惚れ直した
2014年のシングルの名曲「釜揚げしらす」をはじめ、
さりげなく主張を込めた曲の数々も素敵なのだ。
他者を責め立てることなくさりげなく“侠気”を見せる。
さすが獅子座の女である。
ずっとニコニコニコニコしてはいるが、
ずっと気持は凛と立っている。
それが井上侑である。

ただしシリアスなその曲「釜揚げしらす」を披露する際、
その前にやった仮タイトルが「お風呂」という新曲の歌詞が混ざった歌い出しでズッコケてやり直した。
それも井上侑である。

なごみムードながら、
そういう雰囲気のライヴに多い身内ノリみたいなものがMCにも感じられなくて開かれていたのも好きだ。
路上やフリーライヴなどで
自分を知らない人たちの前でライヴをやる機会も非常に多いパフォーマーならではである。
井上侑は“閉じられた空間”で甘えることはない。


新大久保EARTHDOMを北上する感じで新宿駅から北西に徒歩20分弱で100人も入れば満員になりそうな
“真昼の月 夜の太陽”という静かでナイスな場所も相まって、
約2時間、いい時間を過ごせた。


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1468-71bd39af

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (294)
映画 (262)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (420)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (99)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (123)
FEMALE SINGER (43)
POPULAR MUSIC (27)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん