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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TAU CROSS『Tau Cross』

TAU CROSS


AMEBIXのロブ“ザ・バロン”ミラー(vo、b)が、
VOIVODのミッシェル“アウェイ”ランジュヴァン(ds)、
MISERYのジョン・ミザリー(g)、
政治色濃いPROFANE EXISTENCEからリリースしているWAR//PLAGUEのアンディ・レフトン(g)と組んだ、
英国、カナダ、米国のミュージシャンによるバンドのデビュー・アルバム。


最近部屋でこればっかり流している。


ほぼすべての曲を一人で書いたぐらいだからバロン主導のバンドと言ってもいいだろうが、
別バンドを組んだぐらいだからAMEBIXの名前ではできないことやるバンドだろうし、
実際そうなっている。

CRASSの「Nagasaki Nightmare」を思わせるオープニングに一気に引き込まれつつ、
音作りにまず驚かされた。
リーダーのバロンだけでなくミネアポリスのパンク/ハードコア・シーンのギタリストの二人も
つぶれた音が基本のクラスト畑出身だからだが、
これがまたえらくナチュラルにハマっている。
洗練と違うとはいえメジャー感と言ってもいいほど音作りだが、
“クリーン”というより
彼らの意識が“クリアー”に見えてくる響きなのである。

復活後のAMEBIXがさらにメロディアスにというか、
キーボード(クレジットは無し)っぽい音も含めて、
KILLING JOKEのアルバム『Night Time』がメタル・クラストになったような曲が主軸だが、
アシッド・フォークとすら言えるほどのアコースティック・チューンも後半で顔を出す。
キャッチーなコーラスが入る曲もなかなか衝撃的だが、
ツー・ビートの一曲をはじめとして胸のすく疾走感の曲と
ゆったりした曲がブレンドされたアルバムである。
LED ZEPPELINを思い出しもする作風だが、
もちろんファンクもブルースもない。
いやこれはTAU CROSS流の“クラスト・ブルース”だ。

ロイ・マヨルガ(後期NAUSEA[ニューヨーク]~THORN~初期SOULFLY~AMEBIX)が
1曲で共作して2曲でアレンジを担当。
BARONESSが1曲にバッキング・ヴォーカルで参加しているのも、
曲によっては土臭い味わいの今回のアルバムにはハマりすぎだ。
フィドルやチェロやディジェリドゥーも入る曲もある。
たが、あくまでもすべてが肉体的だ。

AMEBIXでは禁じていたことを次々と実行したのは曲作りや音作りだけでない。
今で聴いたことがないトーンのバロンの歌声も惜しげもなく披露している。
ジェフ・ウォーカー(CARCASS)の元ネタの一つっぽい一瞬で“バロン!”とわかる喉も震わせつつ、
MOTORHEADのレミー直系の歌声にも磨きをかけ、
たおやかなヴォーカルをはじめとして渋味の効いたメロディアスな歌唱に痺れるしかない。
なにしろ歌心が際立つのである。

ひとりひとりの音もイイ感じで、
特にアウェイのドラムがまた歌心たんまりだ。
バロン以上にMISERYのメンバーがこういう音をやるというのも驚きではあるが、
ここ数年のMISREYの方向性を思えば不思議はないとも思える。

サウンドの方もよく聴けばAMEBIXの初期から根は変わってないが、
歌詞に表われている価値観こそまさに不変だ。
むろん音同様により表現の彫りが深くなっているし、
音と同じく随所に顔を出す明快なテイストのメッセージにも驚かされるが、
ウソのない歌声だからこそグッとくる。

底が見えるノイズっぽいやつに最近ますますゲンナリする。
そういうのこそお勉強して作った小賢しい“優等生”に聞こえてしまう。
だってそんなの形だけだから。
しっかり曲を作ってまっすぐに自分を出す。
この突き抜けた感覚は今の自分が欲しいものだから救いにもなる。

ときおり見せる穏やかな表情のヴォーカルとサウンドに、
個人的にはずっと彼らの音楽を追ってきて良かったと心から思えるし、
信じられる。

全力大スイセン。


★トゥ・クロス『トゥ・クロス』(リラプス・ジャパン RLIP 1351)CD
ジャケット画等のアートワークの色の印刷に最適の紙質で作られた12ページのブックレット封入の
約55分12曲入り。
日本仕様版は歌詞の和訳付だが、
微妙なニュアンスのデリケイトな表現が多いから、
ブックレットに載った歌詞も見て辞書を引きながらでも思いをくみとりたい。
7月15日(水)発売。


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コメント

レコード屋でかかっているのが、間違えなくバロンで、しかも聴いた事がない。
CDを見て、驚いて、帰って聴いてまた驚くっていう感じでした。

1曲目から本当に突き抜けていますね。
ホント、ブルージーです。

Jon Miseryの加入は、過去に何曲もAmebixをカバーしてるとはいえ、これも驚きですが、両バンドのファンとしては嬉しいです。
昔から聴いてるVoivodがさらにドラマーっていう。

いつも本気なメンバーが集まってますね。

ホント、カタチだけで、誤魔化せているつもりでいるような音楽は聴きたくないです。

このバンド、来日しそうで、それも楽しみです。

Re: タイトルなし

LIFEさん、書き込みありがとうございます。
レコード屋さんでかかっている曲で知ったという経緯もいいですね。
アウェイ以外、Spider LegやProfane ExistenceなどのコテコテのDIYアナーキスト系レーベルから音源をリリースしてきた
3人が、RELAPSEからリリースというのも刺激的で好きです。
その3人がアウェイと組んだのも音楽/表現に対する真剣な取り組みという点で必然だと思いますし、だからこそケミストリーが生まれています。
ライヴ観たいですね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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