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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

GODFLESH at 東京・代官山UNIT 7月17日

GODFLESH_flyer_web.jpg


英国の“エクストリーム重金属ロック・デュオ”GODFLESHによる2度目の日本ツアーの初日。
約3年前の初の東京公演の時はジャスティン・K・ブロードリック(vo、g)の目の前で観たから、
今回はもう少し全体を視界に入れるべくフロアーの真ん中あたりで観る。


ステージ向かって中央やや右にジャスティン、
左手に不変のパートナーのG・C・グリーン(b)、
そして右手には
ラップトップに“モデル・チェンジ”はしてもやはり不変の“メンバー”の“マシーン”が
不動のポジションをキープ。
開演後の一音でJOY DIVISIONとBLACK SABBATHの合金の無慈悲な色に空間を染め上げる。
ステージ後方には粒子が粗めの淡く鮮烈な映像が終始流され、
セットリストには新しい曲はもちろんのこと「Streetcleaner」などの活動停止前の曲も盛り込み、
プレイ中にスマホを眺める観客も目立たずみんながステージに引き込まれていった。

映画にしてもそうだが、
“張子の虎”であることを隠す虚勢のように余計なもので色々“武装”して本質を見えなくするアーティストがいる。
DJミックスみたいに美味しいところをあちこちから持ってきて手の込んだことをやって
エクストリームを演出する小賢しいバンドもいる。
GODFLESHは極めてシンプルなサウンドで無限大の冷厳な創造をする。
たとえ打ち込みのビートでも血の通ってない無機的なサウンドではなく、
“神肉”という名にふさわしい神々しく生きた鋼鉄の輝きを呈す。

復活後の2タイトル『Decline & Fall』『A World Lit Only By Fire』(いずれも2014年)は、
曲によってはヘヴィ・メタリックとも言えるリフが強化された作品だが、
この晩はGODFLESHのリフがクールであることを頭と心と肉体に叩きつけられた。
だが、やはり特にライヴではヘヴィ・メタルのパワー・コードとは別物で、
輪郭不全の神経質な歪みの“リフ”が刻まれる。
にもかかわらずダイナミックに音が広がる。
GODFLESHというバンド名そのものの肉の震えのサウンドだから、
観ている者も心から肉体を振らずにはいられなかった。

確かにGODFLESHはエクストリームなまでに金属質の響きだが、
インダストリアルなんて軽いやつとは百万光年かけ離れた重みを呈している。
だからマシーンのビートの音圧に頼らない。
とにかく、
心臓にシールドをブッ刺したかの如き8弦エレクトリック・ギターでのストイックな音出しに殺られっぱなしだ。
つぶれて引きつってノイズ・コントロールされて痺れた“リフ”は
おのれの内なる軋みを硬く研ぎ澄ました“持続音”であり、
ひとつひとつの音を自分の中の奥深いところから紡ぎ出して一音一音に念を込めている響きだった。

一フレーズ一フレーズを吐き捨てるように叩きつけるヴォーカルにも打たれた。
本気の声とはこういうのを言うのだ。
生々しい響きもさることながら、
短い文節を叩きつける声のアタック感にも射抜かれた。
一般の人と同じく穏やかに話すジャスティンがはらわたから飛ばす声の迫力は
パンクに多いわさとらしい歌い方とは真逆で迷わずまっすぐに解き放たれていた。

政治的背景とかを売りにする一方で音や声の甘さが無残なバンドやアーチストにますますウンザリする昨今、
GODFLESHは裸だった。
GODFLESHが音楽も自分も突き詰め、
おのれの意識が表われたひとつひとつの音がすべてである。
そんな生身のサウンドを全身で浴びて覚醒されていった。

体裁ばかり気にする輩とは無縁のバンドではあるが、
さりげなく佇まいが実にクールなバンドでもある。
存在自体が表現というやつである。
どんなジャンルだろうが
本気で音楽に向き合ってプレイしているミュージシャンはみんなカッコいいのだ。
ジャスティンは後ろ向きになってタオルで汗をぬぐう姿も“絵”になる男である。
ほぼ一曲終わるごとにまっすぐに深々と礼をする姿勢もカッコいい。

無骨なヴィジュアルのG・C・グリーンも名脇役である。
ときおりジャスティンとアイ・コンタクトを取りながら打つように黙々とベースを弾く姿で凄味を効かせる。
G・C・グリーンとのケミストリーを目の当たりにし、
バンド編成だったJESUの初来日公演と一人でステージに立ったJESUの昨年の2度目の東京公演も観て、
ジャスティンは他のミュージシャンと交感した方が“出てくるもの”がたくさんある人だと再認識した。

生で感じてまた思った。
GODFLESH、実に熱いバンドである。
ロックにとって、音楽にとって、表現にとって、
大切なことにまたひとつふたつ気づいた一夜だった。


<セットリスト>
New Dark Ages
Deadend
Shut Me Down
Life Giver Life Taker
Carrion
Towers Of Emptiness
Christbait Rising
Streetcleaner
Spite
Crush My Soul
---------------------
Like Rats


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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