なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

EXHUMED『Gore Metal:A Necrospective 1998-2015』

EXHUMED『Gore Metal:A Necrospective 1998-2015』
↑本作の表ジャケット


90年代初頭から活動しているカリフォルニア出身の“ゴア・エクストリーム・メタル・バンド”EXHUMEDの“企画盤”。
彼らが血塗られたスプラッター感覚でのデス・メタル深化形の“ゴア・メタル”スタイルを確立した、
ファースト・アルバム『Gore Metal』(98年)の2枚組CDでの変則的な“リイシュー盤”である。
ディスク1(CD盤のデザインが若干凝っている方)は、
現メンバーにドラマー以外の『Gore Metal』時代のメンバーも加わった再録音ヴァージョンを収めた約41分12曲入り
(オリジナル盤では録っていたSODOMのカヴァーはリレコーディングされていない)。
ディスク2(CD盤のデザインがシンプルな方)は、
アルバムのオリジナル・ヴァージョンの約44分13曲入りだ。

あらためて聴いてやはりCARCASSの影響が強く感じられ、
アートワークと歌詞で使う言葉はサード『Necroticism - Descanting The Insalubrious』(91年)までの、
サウンドとコンセプトはデビュー・アルバム『Reek Of Putrefaction』(88年)のCARCASS直系とも言える。
ただし“俺らには守るものは何もない!”とばかりに
CARCASSの初期に目立つナンセンスなほどの残虐ユーモアの血で全編塗りたくり、
アメリカン!ならではの割り切り感で笑っちゃうほどなんもかも振り切れている。


ディスク1の再録音ヴァージョンの方もパンクのラフな感覚をキープしている。
もともと曲自体はメリハリがあって実はリフが明快だからキャッチーとすら言えるし、
楽曲の良さを再認識してもらいたいがゆえに、
最近のライヴで出している現在進行形のサウンドで再録音を試みたとも想像できる。
抜けが良く小気味いいビートで元々の楽曲のしっかりしたテクスチャーが露わになり、
グルーヴ感が引き出されている。
しいて言えばCARCASSのセカンド『Symphonies Of Sickness』(89年)あたりの感触の音質。
いわばジメジメした地下の密室で楽しんでいた人間解体や屍姦を、
今回はカリフォルニアの青空の下で行なっているようなもんだ。

曲数が同じにもかかわらずアルバム全体が3分ぐらい短縮されているのも興味深く、
四肢と首を切り落とすかの如く曲の贅肉を殺ぎ落として加速したのであった。
演奏している状態に近い音でレコーディングできる環境になった影響やメンバーの違いも大きいのだろうが、
17年前よりパワー五割増し。
そしてやっぱり後頭部がクラクラしてくるのであった。

Gore Metal
↑本作のブックレッのト裏表紙になっているオリジナル『Gore Metal』のアルバム基本ジャケット・アートワーク
(実際はもっと色が濃い)

ディスク2の『Gore Metal』のオリジナル・ヴァージョンも、
簡潔なギター・ソロが挿入されるし曲もアレンジもフックのある作りだ。
ゴア云々のイメージも売りのバンドだが、
結局は曲自体がチャーミングだからこそ愛され続けているアルバムなのである。
とはいえ歌詞の世界観をサウンドそのものでも実践しているわけだから、
ある種の潔癖性の方は音が鳴り出したら一瞬にして今まで体験したことのない快楽で堕ち込むであろう。
モコモコボコボコジャリジャリしたこの音を聴いていると
めまいと頭痛と吐き気を禁じ得ない永遠の不快感でしあわせになれる。
お酒を飲まない方々でもアルコールで悪酔いしたようなトリップ感が味わえるのだ。

一般の方々からしたら何の役にも立たず気色悪い気違いでしかないことに人生をかけて創造した、
グレイトなまでの大馬鹿者の熱気にあらためて圧倒される。
そういったことこそがロックの原初的なプリミティヴ・エナジーであることをあらたて知る。
良識にマワされる物わかりのいい“ロック”を窒息死させる死臭が噴き出す文字どおり鼻つまみものの歌と音で、
腐った善意の体液に溺れ死にそうな者たちにとっては救いのアルバムになり続けているのである。


2枚通して聴くとアンダーグラウンドにたまにいる劣悪な音質に頼るバンドとは違うと再認識させられる。
しつこいが曲自体が一曲一曲しっかり作られている。
しいて言えばエクストリーム・メタルだが、
パンクっ気が強い曲でブラスト・ビートを多用するから基本的にはグラインドコア・アルバムで、
短めの曲の中でデス・メタリックなドラマ性も織り込んだ展開をしている。
心がビョーキでも体力は有り余っているとばかりに音はパワフル。
精力絶倫じゃなきゃ屍姦も人間解体もできないってわけである。

曲と音だけでなく歌詞もハードコアなホラー映画からのインスパイアが大きそうで、
うなり声とシャウト声の掛け合いで繰り出す歌詞は死体フェチな内容だが、
CARASSの“隠れ肝”のCRASSの価値観を根こそぎ屠殺!とまでは言い切れない。
すべての物事が関係し合っているがゆえに社会性や政治性のニュアンスを嗅ぎ取ることも可能だ。
ディテールにこだわったオリジナル曲12編の描写は、
一つ一つの屍というより、
一人一人違う人生を重ねながら無念のうちに死んでいった一人一人の人間を大切に愛でているようにも映る。

付和雷同のトレンディーな政治馬鹿騒ぎの中で忘れ去られ、
根が同じの集団暴力に“個”が圧殺される不条理な死が世界中で止まらない。
イジメられ続けて思いつめて電車に飛び込み自殺をした男の子の姿も見えてくる歌詞だし、
ナイジェリアのボコ・ハラムに誘拐されて装置を身体に巻き付けられて遠隔操作の強制自爆テロで死んでいく
女の子たちの姿も見えてくる歌詞である。
屍に対する“ラヴソング”で埋め尽くされているように映る。

今一度“EXHUMED”というバンド名を思い返してみる。
“(死体が)掘り出される”という意味と同時に
“(物・事が)復活させられる”という意味もあるではないか。

音も歌詞も精神衛生上極めてよろしくないからこそグレイトな不朽の名盤である。


★エグジュームド『ゴア・メタル:ネクロスペクティヴ 1998-2015』(リラプス・ジャパン RLIP-1353)2CD
32ページのブックレット封入。
その半分は今回のリイシューのために作られたページで(↑にアップした上の方の画像が表紙)、
反対側からめくるページにはオリジナル・ジャケットを含む『Gore Metal』のCDのものが再現されている。
CD2枚組ながら日本仕様版もCD1枚ものの値段に抑えられて歌詞とライナーの和訳付だ。
“R-15指定”必至の残虐性の歌詞は日常英語が使える人でも辞書が必要と思しき“専門用語”が満載だし、
新旧のメンバーによるバンド・インタヴュー中心のライナーは超長文だから、
和訳はホントありがたい。
7月29日(水)発売。


スポンサーサイト

コメント

日本盤のインタビューに関して

メンバーのインタビュー記事で、彼等のゴアメタルへの否定的なコメントが目立ったことに疑問を感じます。それだけメンバーの関係が悪く、本作の完成度に納得がいかなかったのでしょうか。しかし、本作は今回のような形で再録された…謎です。

Re: 日本盤のインタビューに関して

嘔吐バックスさん、書き込みありがとうございます。
本作のブックレットに載っているインタヴューによれば、昔の曲の再録音をするか否か、メンバー間で意見が分かれていたようですね。再録音に否定的なメンバーは、rawだからこそ昔の曲は活きたという考え方かもしれません。肯定派メンバーは今のライヴの音で再録音したいということかもしれません。昔のrawな音をそのままマネして続けるのは、わざとらしく感じることも、他のバンドであったりもしますし。ともあれ昔のより、今自分たちがやっている現在進行形のゴアメタルの音が好きで自信があるとも解釈できるインタヴュー、そしてCDとも思います。

行川さん、ご返信ありがとうございます。
オリジナルでは前のめりだったサウンドが再録盤では安定感のある仕上がりになってましたし、バンドとしての成長が確認できる良企画盤だと思いました。が、オリジナルの持っていたテンションの高さや焦燥感はやや薄れたかな、という印象です。

ちなみに再録盤の各トラックの長さはオリジナルと比較してやや長くなっており、収録曲は12曲です。失礼しました。

Re: タイトルなし

嘔吐バックスさん、返信ありがとうございます。
やはりどのバンドも初期はそうですが、オリジナル盤をレコーディングした当時の「しでかしてやるぜ!」感が薄れているのは否めないですね。演奏テクニックが上がったこと以上に、やっぱり当時は気持ちも前のめりで、音は正直ですから、そういう意識が表れていたと思います。そういう部分の代わりにメタル的整合感の魅力が増したという感じですね。
収録曲の曲数の御指摘にも感謝します。訂正させていただきます。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1490-f858a2a2

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (237)
JOB/WORK (285)
映画 (234)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (41)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (395)
EXTREME METAL (127)
UNDERGROUND? (83)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (117)
FEMALE SINGER (41)
POPULAR MUSIC (24)
ROCK (76)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん