なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『THE PRESENT』

表1_edited-1
よく試写会に招待していただいているにもかかわらず書く機会があまりないので、
ここで新作映画にも触れていくことにする。


一発目はサーフィン映画『The Present』。
トーマス・キャンベル監督が『The Seedling』『Sprout』に続き、
サーファーたちを通してさりげなく壮大なテーマを描く74分のドキュメンタリー映画である。
技自慢などのテクニカルな説明等は無し。
サーフィン愛好家のためだけの映画ではなく開放的な空気感に満ちているから、
サーフィンに疎いぼくのような人間でも十二分に楽しめた。

トーマスは69年にカリフォルニアで生まれてスケートボードやサーフィンで育ち、
13歳頃からいわゆるストリート・カルチャーの中で自分を磨き上げていった“アーティスト”。
画家や写真家、編集者、ライターとしても精力的なクリエイターであり、
そういった経験が活きている映画と言えよう。

サーファーたちの人間ドラマというコテコテのものでもなく、
ひとりひとりに熱い眼差しを向けてクールに人間模様を描く。
老いてなお盛ん!なんて言っていられない還暦近くのグレイトな“シルヴァー・サーファー”から、
ティーンエイジャーまでの15人近くの男性たちが登場。
いや、むろん女性サーファーの華麗なる勇姿も堪能できる。
歳なんか関係ない。
性別も関係ない。
みんな肉体で波と交わる。

芸能人水泳大会のコスプレ競技みたいな“お笑い場面”も含むが、
そこではサーフボード自体について言及するところと同じく、
知らず知らずのうちに“波乗り”の可能性と簡便性に気づかせてくれる。
基本的にはストイックなほどシンプルかつハードボイルドに、サーファーに焦点を当てる。
舞台は西アフリカ、インドネシア、ニュージーランド、ハワイ、オーストラリア、カリフォルニア。
陸で現地の人と楽しむ素朴な光景もチャーミングだ。
サーフィンのシーンとのコントラストで魅せられる。

なにしろ淡い色調の映像が素晴らしい。
スーパー16mmフィルムにこだわったがゆえのものだろう。
彫りが深いのだ。
これだけでもとろける。
映像美もあいまってダイナミックな波のうねりに圧倒される
アグレッシヴだからこそ美しい波と格闘すれば飲まれる。
だからサーファーたちは波とともに加速する。
息を飲むばかりの連続だ。

当然のことながら映画の中で“wave”という言葉が頻発するが、
そのたびにぼくは音の“wave”のことが頭に浮かんだ。
波と人とのハーモニーとヴァイブレイション・・・とても音楽的な映画でもある。

落ち着いた雰囲気の映画だから使われている音楽もイケイケなものはなく、
プリミティヴかつリズミカルであっても覚めたトーンに貫かれている。
トーマスはインディ・レーベルのギャラクシアもやっているだけに、
やはり曲のセレクションも面白い。
特に興味深かったのはボニー・プリンス・ビリーとMICE PARADEの参加。
前者は歌ものではなく8分近くのインスト・ナンバー「New Wedding」、
後者は我流サーフ・ロックみたいな「Open Air Dance Pt. 2」を提供した。
またサーファーとして本作に登場するアレックス・ノスト在籍で、
ギャラクシアからリリースしているJAPANESE MOTORSの曲も流れてくる。
出演はしてないがトミー・ゲレロの渋い喉も聞こえてくる。

どちらかと言えばオルタナティヴ・ロック/ポスト・ロックの香りでありつつ、
微妙にモダンで乾いたサウンドの数々は、
映画の中で薄っすらと漂うソフト・サイケデリックな感覚を高めている。
SLEEPも含むジム・ジャームッシュ監督の映画『ブロークン・フラワーズ』、
あるいは現在日本各地で“ツアー中”の映画『THIS IS ENGLAND』みたいに、
ここでも映画と音楽との交感が味わえる。

押しつけがましいことは何も言っていない。
そこにはひそかにオーガニックなメッセージがある。
そしてじわじわじわじわと元気が出てくる。
世界は広い。空は高い、海は深い。
そう。卑屈になっているヒマはないのだ。


8月22日(土)より、渋谷シアターTSUTAYAにてレイトショー。
www.thomascampbellpresent.com

サントラ盤CD『The Present』はポニーキャニオンから8月19日(水)に発売。
映画のメイキング(22分)と新作トレーラーなどを収録したDVD付とのことだ。


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/15-b2643f32

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (294)
映画 (262)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (420)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (99)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (124)
FEMALE SINGER (43)
POPULAR MUSIC (27)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん