なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

アンナ・マリア・ヨペック カルテット feat. ミノ・シネル etc.(“14th TOKYO JAZZ FESTIVAL~MY MUSIC, YOUR MUSIC”)at 東京国際フォーラム 9月5日

14th TOKYO JAZZ FESTIVAL


日本語表記だと“第14回 東京ジャズ”という名称になるらしいジャズ・フェスティヴァル。
会場の屋外広場でも次々と演奏が行なわれていたが、
“MY MUSIC, YOUR MUSIC”と題された9月5日の昼の部で3組を大ホールで観てきた。

まずは、
“ボブ・ジェームス & 東京フィルハーモニー交響楽団(指揮者 : ケヴィン・ローズ
featuring スティーヴ・ガッド、 カリートス・デル・プエルト special guest 渡辺香津美)”。
ゴージャスな御馳走のような面々のコラボレーションながら結構プログレみたいで、
DREAM THEATERがオーケストラとの合体演奏も収めたライヴDVD『Breaking The Fourth Wall』も思い出し、
なかなか興味深かった。
今年のクリスマスで76歳になる米国の御大ボブ・ジェームスが見られたのも有難いことである。

続いては一昨年結成の“ニュー・センチュリー・ジャズ・クインテット”。
大林武司(p)と中村恭士(コントラバス)を擁する5人組で、
ニューヨーク拠点ならではの洗練された都会的そのもののジャズは
日頃“やさぐれ外道ジャズ”以外に馴染みのない僕にとってはたいへん新鮮である。
人種混交バンドならではの味わいとユーモアも隠し味だった。

Anna Maria Jopek

僕のお目当てはトリの、
“アンナ・マリア・ヨペック カルテット feat. ミノ・シネル”であった。

アンナ・マリア・ヨペック(Anna Maria Jopek)は70年ワルシャワ生まれで、
大統領から今年ポーランド復興勲章が贈られるほどの存在で国民的シンガーと呼んでも差し支えない人だが、
親日家としても知られている音楽家である。
そんな彼女がフロントに立つ4人編成のバンドに、
80年代にはマイルズ・デイヴィスやWEATHER REPORTと活動していたミノ・シネル(per)が加わったステージだ。

ポーランド恐るべし、とあらためて思った。
映画と同じく音楽も、
いわゆる白人圏であろうとアメリカはもとより他のヨーロッパ諸国とも違う、
ポーランドならではの“交わり”の歴史が研ぎ澄まされたポップかつ圧巻のライヴだった。
ナチスに凌辱された第二次世界大戦中は元より80年代まで自由どころじゃなかった国だからこそ、
自由にやることの大切さを身体でわかっている音楽だ。

アンナはクラシック~ジャズを学んできた人で実際そういう色も出ているが、
少なくてもこの日のライヴはいい意味でほとんどジャズじゃない。
ジャンル名を付けられない音楽スタイルの魂のこもったハイブリット(混血)がロックであるならば、
間違いなくロックだ。
曲によって彼女が奏でたシンセサイザーと思しき電子音もそうだし、
何より見とれるほどホット&クールだった。

アンナ以外のミュージシャンの演奏が個性的で自由型というのもナイスな作用していた。
ベーシストこそ一つのベース・ギターのみとはいえあまり見ないタイプの六弦だったし、
ピアノやアコーディオンの他に見たことのない手のひらサイズのユニークな楽器も鍵盤楽器奏者は使い、
もう一人のメンバーはアコースティック・ギターも管楽器もやりつつサイド・ヴォーカルも取っていた。
色々な種類の打楽器でステージを彩ったフランス出身のミノ・シネルの存在も大きい。
ロック畑とも絡んでいて調べたら、
デイヴィッド・アレン不在でアラン・ホールズワース在籍の“GONG別動隊”の『Gazeuse!』(76年)に参加している。
特にパーカッシヴな曲で際立っていた。

育ちの良さを隠せない凛とした品格を醸し出しながらアンナ自身も言葉本来の意味でwildそのものだった。
ポーズつけているやつじゃなくてもっと根源的なパワーが静かに渦巻いていた。
テクニックを学んだシンガーならでの発声だからというだけでなく、、
声を出すことに意識的で日頃から鍛えているからこその伸びやかで張りのある歌声のパワーが格別だった。
たとえシャウト(らしいシャウトはほとんどなかった)でなくても、
わざとらしいヴォーカルとは別次元の針が振り切れた声が持ち得るちからこそが本物だ。
もちろんシンガーとして上手いのだが、
単に巧いのともまったく違うフリー・フォームな喉の震えに殺られた。

1時間弱の間に披露した楽曲すべてのタイプが全部違っていたことも特筆すべきだろう。
フレンチ・ポップからシャンソンやカンツォーネまでもが透けて聞こえてきたし、
もちろんポーランドの民俗音楽っぽいメロディやリズムも溶け込んでいた。
母国などでは有名人のアンナだが、
商業主義のカケラすら感じさせないステージだったことが僕には何より驚きだった。
ポピュラリティ十分ながら米国の大味ポップ・ソングみたいな曲ではない。
前衛的なアレンジが敷居低く施されていてひそかに効いていたのも心憎く、
気取った意味ではなくアート/芸術であり表現として音楽なのである。

アンナと男性メンバーとのデュエットも粋で、
膝上丈スカートのタイトなワンピースでキメた艶っぽく熟な佇まいもカッコよかった。
たくさんの敬意をリスナーに払いつつ、
フェスということで自分のファン以外も多いであろう観客に媚びないステージにも胸がすく。
さりげなさに痺れる。
もっと聴きたい・・・もっと観たい・・・そう思わせるグレイト・ライヴだった。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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