なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

RISE OF THE NORTHSTAR『Welcame』

RISE OF THE NORTH STAR『Welcame』


フランスの“ミクスチャー・メタル・ハードコア系バンド”のファースト・フル・アルバム。
“JAPANESE EDITION”と書き添えられているジャケットをはじめとして、
日本盤は他の国でのリリースの仕様と多少違う形でのリリースだ。

漫画『北斗の拳』にインスパイアされたバンド名からイメージできる爽快なアルバムである。
グルーヴィなメタリック・サウンドと怒号/ラップで押すが、
日本語を多少盛り込みつつ英語で歌われる歌詞も含めて潔いのだ。
SHADOWS FALLHATEBREEDなどのメタルとハードコアのミックスの音をよく手がける、
ゼウスのプロデュースでバランスも抜けも絶妙の音の仕上がりである。


パンク・ロックっ気が薄めながらニュースクールみたいなスロー・テンポ中心とは一味違い、
2000年代以降の米国産メタルコアとも違い、
BIOHAZARDやMADBALLをモダンにアップデートさせたようにも聴こえる。
KORN以降のラップ・メタル/nu metalともニアミスしているグルーヴ感だが、
もっと明快なメタル・リフがリードしていく。
ギター・ソロの入れ方も含めてヘヴィ・メタルが音楽性の根っこにあり、
METALLICAPANTERAの静かなイントロ風のアルバムのオープニングが象徴的だが、
まもなくズズン!ズズン!ズズン!ズズン!とパーカッシヴなサウンドが叩きつけられる。
ミディアム・テンポ中心の中にスラッシーなパートを絡め、
デス・メタルもたっぷり吸ったメタル・リフをはじめとして
SLIPKNOTがわかりやすくなったようなようでもある。
ニューヨーク生まれのラッパーであるファロア・モンチのカヴァーもいいカンジだ。

何しろセンスがいい。
“トレンドが一周してからの完全後追いバンド”ならでのポイントを押さえた曲作りもお見事だ。
ヴォーカルもバッキング・ヴォーカルも押し一辺倒でなく、
飄々と空気の抜きどころを設けているところも心憎い。
曲ごとのアレンジも旨く、
曲の物語を演出する効果音も美味い。
本場米国産に多く見られるいやでもマッチョ満々になってしまうバンドと違い、
この手が輸入文化で気質が根本的に違うフランスのバンドならでは“クールなズレ”が素敵だ。

音作りはしっかりしている。
そんでもって音の響きが適度にスマートなのもフランス産ならではで暑苦しくなく喉ごしスッキリの音である。
でも、どっか素敵に変だ。
音楽的に近い米国のSTUCK MOJOに通じるぐらい笑っちゃうほどなんもかも針が振り切れているのだ。

“オシャレ”って言葉が似合うものは何でも嫌いだ。
だって結局そういう輩は表面的だから。
“オシャレ”はロコアでもハードコアでもなんでも泥臭く見せかせて何もかも如才なくスマートにやり過ごす。

だがRISE OF THE NORTHSTARはオシャレとは言いがたい。
今この時代のこういう音をやっていること自体がオシャレと真逆なわけだか、
来日の際に日本で撮影したと思しきCDのアートワークで映るメンバー写真、かなりハズしている。
そんな勘違いファッションは素晴らしいし、
音楽も勘違いの解釈が創造に至るのが自明の理ってことは80年代の日本のハードコア・パンクが証明する。
RISE OF THE NORTHSTARもそんな調子で、
ファション・センスもあまり情報がない(時代や地域などの環境の)日本のハードコア・パンクスそのものだ。
もっともRISE OF THE NORTHSTARの場合は
日本の現代のオシャレな不良ファッションを意識した格好をしているように見えるが、
ヤンキー・センスまでミクスチャーしているからワケわかんなくなって素晴らしい。
そんな憎めないダシが音に効いている。
巧みなだけのDJミックスみたいに整っているけど張子の虎みたいな優等生サウンドはお呼びじゃないのだ。

歌詞も日本の漫画文化からの触発が大きそうだが、
やはり少なからず勘違いが肝である。
歌詞やアートワークに“furyo”という言葉をよく使っている。
日本の不良文化を基に書いているとはいえ、
音楽の方と同じくオベンキョーしてそれっぽくまとめた“教科書どおりの不良”の歌詞ではない。
どこか、おかしいのだ。
とにかくアートワークに使われている“熱血”とういう言葉が似合う。
彼らのキャラがよくわかるEPのミュージック・ヴィデオ「Demonstrating My Saiya Style」には
渋谷などでの撮影の中に阪神甲子園球場がまぎれこんでいるが、
米沢彰執筆のライナーによれば、
高校球児が甲子園を目指すことはRISE OF THE NORTHSTARにとって大切なことらしい。

週刊少年ジャンプの伝統的な価値観の“勇気、努力、友情、根性、勝利”を
フランス流に炸裂させたような痛快盤である。


★ライズ・オブ・ザ・ノーススター『ウェルケイム』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-16638)CD
16ページのオリジナル・カラー・ブックレットに加え、
日本盤は追加された1曲(“3.11”以降の日本を鼓舞する「Phoenix」)も含めて
オリジナル曲の歌詞の和訳も載った12ページの別ブックレットも封入。


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コメント

ROTN、大好きなんですが、まさか行川さんがここまで熱のこもったレビューをされるとは思いませんでした。
服装がエクストリーム過ぎてネタバンド扱いされてますが、音もカッコいいし日本文化へのリスペクトも真摯で好感が持てます。
ちなみに甲子園のくだりは彼らが大好きな森田まさのりの「Rookies」からの影響です。
サササササ!のコーラスが最高なSamurai Spiritは井上雄彦の「バガボンド」からインスパイアされたリリックですね。

Re: タイトルなし

書き込みありがとうございます。
Korokuさんらしい音楽趣味、僕にも通じる感じです。やっぱり色々どんな意味合いでもエクストリームなものが好きなのでしょう。こういう出会いがあるからたいへんありがたいことですが、レコード会社の方からプロモーションしていただくまで僕はノー・チェックのバンドでした。
ネタ元の解説にも感謝します。実は昔けっこう漫画マニアだったのですが(全然話は違いますが「はだしのゲン」もリアルタイムで週刊少年ジャンプで知りました)、30年ぐらい前からコンスタントに漫画を追うのはほとんど止めてしまっているので、挙げていただいた作品もチェックしたいと思います。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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